Steamのあるゲームが“差別的主張”で低評価をつけられ「圧倒的に好評」ステータスを失う。販売担当者は「返金して二度とプレイするな」と怒り心頭
No More Robotsの代表を務めるMike Rose氏は12月8日、ある差別的な不評レビューを強く批判した。

パブリッシャーのNo More Robotsの代表を務めるMike Rose氏は12月8日、同社が販売を手がける『Little Rocket Lab』に投じられたある不評レビューを強く批判し、注目を集めている。同作に関しては、多様性を尊重する作風に対して一部ユーザーから攻撃的な反応やレビューが寄せられていた。
『Little Rocket Lab』はドット絵が特徴の工場自動化RPGだ。主人公のモーガンは、家族の夢であったロケットの完成のために故郷に帰るが、その地はかつての姿を失っていた。モーガンは装置や工場の建設をおこない、町の産業を発展させていき、最終的に宇宙ロケットを建造することを目指す。研究を通して新たな工場設備をアンロックしたり、探索によって町の複数のエリアから独自の資源を回収したりする要素も存在する。

本作は今年10月にPCおよびXbox Series X|S/Xbox One向けにリリース。発売当日には、世界的な大規模障害に見舞われSteamストアがダウンする事態も発生。パブリッシャーのNo More Robotsの代表を務めるMike Rose氏はBlueskyにて苦言を呈していた(関連記事)。
ただ、その後本作は着実に評価を伸ばし、Steamユーザーレビューで「非常に好評」ステータスを維持。12月5日には、過去30日間のレビュースコアを表す「最近のレビュー」にて「圧倒的に好評」を獲得したことを報告している。
しかし12月8日、Rose氏はBlueskyにて2つのユーザーレビューを紹介しつつ、Steamストアにおける「最近のレビュー」の「圧倒的に好評」ステータスが失われたことを報告。投じられたレビューはそれぞれ「Wokeなゲームであり、イスラム教徒も登場する」「政治的な要素が多すぎだし、たった15分でDEIのくだらない話を押し付けられた」といった内容となっている。
Wokeとは、人種や性別に関する差別をはじめとした社会問題に目を向ける言葉として使用されてきた。一方で、本来はポジティブな言葉ではあるが、最近では転じてマイノリティのための活動を揶揄する意味合いで使われることが多い。またDEIとは「Diversity(多様性)」「Equity(公平性)」「Inclusion(包括性)」を表す概念であり、人々の個性を認めて受け入れ、社会としてそれを活かそうとする考え方のことだ。
そして本作においては舞台となる町に性別や人種を含め、さまざまな性質をもった人々が共に暮らしており、上述のレビューはゲームプレイではなくそうした作風を批判しているとみられる。過去にも同様の点を攻撃的に批判するユーザーが一部見られ、本作を楽しむファンとの間で軋轢も生じていた。なかには女性キャラクターがたくさん登場することや、ヒジャブを被ったキャラクターが実装されていることを茶化すユーザーも現れ、この際にもRose氏はBlueskyで共有して苦言を呈していた。
今回は、多様性を尊重する作風自体に不評を述べるユーザーレビューが2件投じられたことに、Rose氏が怒りを示している格好だ。同氏はストアページ内で、前述のレビューに向けて直接返信をおこない、返金することを促すとともに、二度と自分らのゲームをプレイしないでほしいと非難した。また本件を受けてRose氏は、「なぜValveがこれを許しているのか」とSteamにおけるレビューのチェック体制が改善されない状況に対して苦言を呈している。「DEI」というワードにフィルターをかけるべきであるとの言及もみられた。
ゲーム作品のレビューではプラットフォームのルールに反しない限り各ユーザーが抱いた個人的な感想を投稿していいという前提はあるが、ゲーム内容と関係のない的外れなレビューが投稿される例も少なくない。先日には、発売後ずっとSteamユーザーレビューの好評率が100%となっていた作品に、作品の内容とは無関係にあえて不評レビューが投じられる出来事も発生していた(関連記事)。評価ステータスは開発者・販売者にとって作品の宣伝材料になる要素でもあり、真っ当な批判ならともかく、ゲーム内容とは無関係な不評が投じられることは悩みの種となっているようだ。
また今回の『Little Rocket Lab』の例では、特定の宗教を迫害するかのようなレビュー内容も含まれている。今後通報により不適切なレビューと判断される可能性はあるものの、Rose氏は投稿段階でそうしたレビューを弾く仕組みを求めて問題提起しているのだろう。とはいえ、Steamには多種多様なゲームがあり、たとえば「NGワード」を一律に設定することは真っ当なレビューをも制限しかねず難しい状況はあるのかもしれない。いずれにせよ作品内容に無関係な、あるいは不適切なレビューに対して開発者が苦言を呈する例はしばしば見られ、今後さらなる対策が講じられていくかどうかは注目されるところだ。

ちなみに『Little Rocket Lab』は12月5日のアップデートにて、日本語表示にも対応。高く評価する声も多い本作のストーリーをより楽しみやすくなっているだろう。またSteamでは、12月19日まで25%オフの1499円で購入可能なセールを実施中。この機会に手にとってみてはいかがだろうか。
『Little Rocket Lab』はPC(Steam/Microsoft Store)/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売中。Xbox/PC Game Pass向けにも提供されているほか、12月10日には海外Nintendo Switch 2/Nintendo Switch向けにも発売予定だ。
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