最近のゲーマーは「ゲームを遊ぶよりプレイ動画を見ている時間の方が長い」との調査報告。“ゲームを動画で楽しむ習慣”定着か
市場調査会社MIDiA Researchがおこなった調査において、対象者間で「ゲームのプレイ時間よりも関連動画の視聴時間の方が長い」傾向がみられたという。海外メディアGamesIndustry.bizが報じている。
MIDiA Researchは、英国に拠点を置く市場調査会社だ。今回、同社はレポート「The case for in-game video platforms」を公開。2023年第2四半期および2024年第2四半期におこなわれた消費者調査の結果が報告されている。調査は米国・英国・オーストラリア・カナダ・ドイツ・フランス・スウェーデン・韓国・ブラジルの9か国の消費者が対象となったそうだ。
ゲームを動画で楽しむ習慣
同レポートによると、調査対象者のデータを元にした分析では、ゲームをプレイするのに費やした時間が週に平均7.4時間であったのに対して、ゲーム関連の動画を見ていた時間は週に平均8.5時間だったという。つまり調査対象者間では、ゲームをプレイしている時間よりもゲーム関連動画を見ている時間の方が長い傾向があったようだ。このほか調査においては、回答者のコンソール/PCのゲーマーのうち24%から、ゲーム関連動画を少なくとも月にいちどは視聴しているとの回答を得られたそうだ。
また、今回のMIDiA Researchの調査では、対象者のうちゲーム内コンテンツへの課金に抵抗のないゲーマーの48%からも、少なくとも月にいちどはゲーム関連動画を視聴しているとの回答を得られたとのこと。前述のコンソール/PCゲーマーにおける傾向とあわせて、ゲーム機に投資をしたり、課金をおこなったりする層の中でも一定数のゲーマーが、習慣的にゲーム関連動画を視聴している傾向もうかがえる。
なお昨今では、定期的にアップデートを重ねながら運営されるライブサービスゲームの勢いの強さも見られる。そうした作品では、オンライン対戦・協力プレイ機能が用意され、シーズンなどを節目として定期的な大型アップデートを続ける運営体制がとられることが一般的。新展開に事欠かないこともあってか、ゲームごとに半ば専門的に動画投稿やストリーミング配信をおこなうクリエイターも広くみられる。ゲーマー側も、特に自分のプレイしているライブサービスゲームのクリエイターの動画・配信を習慣的に視聴する傾向はあるのかもしれない。これも「ゲームのプレイ時間よりも関連動画の視聴時間の方が長い」という調査結果の一因としてあるのだろう。
ちなみに国内においては、コロナウイルス禍で大きくゲームのライブ配信の影響力が増したことも報じられていた(日経クロストレンド)。外出自粛期間前の2020年2月と、自粛期間中の同年5月初旬とで比較すると、GikenAccessが集計するゲームのライブ配信の総視聴時間が約2倍になっていたという。この際には自粛期間終了後も、外出自粛期間前の約1.5倍の総視聴時間を記録していたとのこと。コロナ禍で“ゲームをライブ配信で見て楽しむ習慣”が広まった可能性を示すデータかもしれない。
新たな収益源となるか
なおMIDiA Researchのレポートでは今回の調査を受けて、ゲーム関連動画がゲーム市場において大きな収益をもたらしうるのではないかとの見解も綴られている。特に昨今ではコンソール市場では新規ユーザーの獲得が難しくなっているとされ、成長が頭打ちになっている可能性も懸念されている(関連記事)。そうした状況もあり、動画を単なるゲームの広告ではなくゲームメーカーの新たな収益源とすることで、市場成長に繋がる可能性もあるのではないかといった考えが示されているかたちだ。
また現状では、メーカーではない第三者によるゲーム動画配信が多額の収益をあげる傍らで、作り手にその収益が分配されないことが問題視されることもしばしばある(関連記事)。動画配信が一定の宣伝効果を見込める作品もあるものの、アドベンチャーゲームなど動画による宣伝効果と機会損失のバランスの判断が難しいゲームもあるようだ。メーカー公式による動画収益化手法の開拓は、そうした現状に対するひとつの答えとなるかもしれない。
今回のレポートでは、ゲーマーによっては「ゲームのプレイ時間よりも関連動画の視聴時間の方が長くなる」傾向が示された。ゲームの動画配信は業界における存在感を増しているとみられる。作り手も恩恵を受けやすいようなゲーム動画配信の仕組みは、引き続き求められていくことだろう。