GOTY輝いた『Clair Obscur: Expedition 33』は“16億円未満”の開発費で作り上げられていた。「流行りのオープンワールド」は採用せず、がっつりコスト削減
『Clair Obscur: Expedition 33』の開発費は1000万ドル(約15億6000万円)未満であることが明かされた。

パブリッシャーのKepler InteractiveとデベロッパーのSandfall InteractiveによるRPG『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション サーティースリー)』。高い評価と人気を誇る本作について、The New York Times誌のインタビューにより、開発費が1000万ドル(約15億6000万円)未満であることが明かされた。
本作は、アクション要素を取り入れたターン制バトルを特徴とするRPGだ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S。本作の舞台となるのは、ペイントレスと呼ばれる存在が人々を脅かす世界。ペイントレスは年に1度目を覚まして呪いの数字をモノリスに刻み、描かれた年齢の人々は煙となって消えてしまう。ペイントレスの描く呪いの数字は年々ひとつずつ小さくなるため、人類は滅びを待つ状況にあった。「33」の数字が描かれる年、主人公たち第33遠征隊は死のサイクルを止めるため、ペイントレスを倒す旅に向かう。
『Clair Obscur: Expedition 33』は今年の4月24日に発売されるとさっそく人気を博し、4月27日には早くも売上100万本を突破(関連記事)。レビュー集積サイトMetacriticでもメタスコア100点中92点、ユーザースコア10点中9.6点を記録するなど、非常に高い評価を得ている。そして12月12日に開催された「The Game Awards 2025」ではGame of the Year(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)を含む9冠を受賞した(関連記事)。

本作を手がけるSandfall InteractiveのCEO、Guillaume Broche氏は今回、The New York Times誌のインタビューに応じ、制作の裏話などについて話している。その中では制作費が1000万ドル(約15億6000万円)未満で制作されたことが明かされた。他タイトルと比較すると、例えば今年発売された『キングダムカム・デリバランス 2』では開発費が約60億円と見積もられており、『アサシン クリード シャドウズ』では開発費が約170億円以上であると明かされている(関連記事1、関連記事2)。また「AAA級」と称される大規模なタイトルではときに数百億円規模の開発費も多々報告される昨今では(関連記事)、『Clair Obscur: Expedition 33』の「16億円未満」の開発費は破格の安さと言えるだろう。
Guillaume氏によれば、『Clair Obscur: Expedition 33』においては、トレンドである「オープンワールド」を避けることでリソースを節約したという。また本作ではターン制RPGの“お決まり”を借用し、長い回廊型のステージと、戦闘時には専用のフィールドを用いる形式で制作。このことで、オープンワールドのシステムを採用した場合と異なり、デザイナーが細部まで描画せず、その一方でプレイヤーには世界の広大さを感じさせる手法を取っているとのこと。
またGuillaume氏は、こうして小規模チームでJRPGを作る手法は古くから用いられてきたものであり、確立された技術でもあると語っている。Sandfall Interactiveは『Clair Obscur: Expedition 33』開発時点で約30名のメンバーが在籍している(弊誌インタビュー記事)。QAやローカライズなど、開発の一部を外注しているとはいえ、小規模体制での開発にあたっては、リソース節約の観点から、オープンワールドではなく、区切られたエリアで展開されるターン制RPGの形式を採用したのだろう。その結果、1000万ドル未満の開発費に抑えられたものとみられる。

ちなみにGuillaume氏は近年特に顕著なゲーム開発の肥大化については、「青天井のクオリティUP要求についていけるメーカーがそこまで多いと思っていない」として、業界の潮流として開発予算に上限が設けられるのではないかとの予測を立てている(弊誌インタビュー記事)。加えて、『Clair Obscur: Expedition 33』のようにフルプライス級のターンベースRPGを作るのであれば今の規模感でよいとして、スタジオの規模拡大は考えていないとも述べている。今後も“お手頃”な規模感や開発費用でのゲーム開発を手がけていくのだろう。コストを削減しつつ制作され、高い評価を獲得した本作は、今後さまざまなゲーム作品のロールモデルとなっていくのかもしれない。
『Clair Obscur: Expedition 33(クレール・オブスキュール:エクスペディション サーティースリー)』はPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中だ。PC/Xbox Game Pass向けにも提供されている。なお本日より「Thank You Update」が配信。各種アワードなどの受賞を含め、想像以上の成功を収めたことを受け、新ステージや新武器が追加されるアップデートが配信されている(関連記事)。
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