『Civilization VI』のクリア率は“びっくりして落ち込むほど低かった”と開発者が明かす。『Civilization VII』に向けた反省・改善をいろいろ語る

海外メディアGame Developerが『Civilization』シリーズのクリエイティブディレクターにインタビューを実施。『Civilization VI』のクリア率が低かったとして、新作への改善点などを語っている。

シドマイヤーズ シヴィライゼーション(Sid Meier’s Civilization)』シリーズのクリエイティブディレクターが、ドイツ・ケルンで開催されているゲームイベント「gamescom」にて、海外メディアGame Developerのインタビューに回答。『Civilization VI』ではクリア率が極端に低かったとして、最新作『Sid Meier’s Civilization VII』(以下、Civilization VII)の開発にあたり反省や改善した点などが語られている。

『Civilization』シリーズは文明をテーマに、帝国の戦いと勃興を描くストラテジーゲーム。プレイヤーは指導者として帝国を治め、石器時代から近代まで文明を導くのだ。いわゆる4Xジャンルのターンベースストラテジーゲームとして、高い評価を受けるシリーズでもある。なお2025年には、シリーズ新作『Civilization VII』が発売される予定だ(関連記事)。


『Civilization VI』は成功したけど、完璧ではない

そんな本シリーズの今後について、『Civilization』フランチャイズのクリエイティブディレクターを務めるEd Beach氏が明かした。海外メディアGame Developerに向けて、同氏がリードデザイナーとして携わった『Civilization VI』での経験を含めて振り返り。『Civilization VII』の展望や、過去作からどう改善するか、などといった内容を語っている。

Beach氏によると、『Civilization VI』はゲームとして大成功を収めたとしつつも、新作制作に活かすため、同作の良くなかった点も振り返っているという。そこで、「プレイヤーが最後までゲームをプレイしてくれていない」問題が発覚したようだ。Beach氏いわく『Civilization VI』をクリアまで遊んだプレイヤーの割合は50%を下回っており、びっくりして落ち込むくらい(surprisingly, depressingly)だったとのこと。

しかし、「全プレイヤーの50%」との数字は、ゲームのクリア率としては悪くないように思える。たとえば「最後までプレイされない傾向がある」とされた『ホグワーツ・レガシー』では約25%、『ウィッチャー3 ワイルドハント』や『エルデンリング』などもおおよそ25%前後と、Steam実績データから推定されていた(関連記事)。一方でPS版『ゴースト オブ ツシマ』はトロフィーデータから推定約50%のクリア率を記録し、「オープンワールドゲームにしては高い数値」と評されている(関連記事)。


ここで『Civilization VI』のSteamの実績データを確認してみると、通常のゲームに勝利した実績である「時の試練」や「新天地の開拓」などの取得率は約37%(PS4版では30%ほど)。前々作『Civilization V』も、ゲーム勝利にかかわる実績から推計すれば、クリア率は30%ほどであることがうかがえる。「50%以下」という言及の仕方を鑑みると、開発元のFiraxis Gamesはさまざまなプラットフォームを含めた独自のデータで集計しているのかもしれない。

なお『Civilization』シリーズといえば20年以上続くストラテジーの老舗シリーズであり、根強いファンが多い作品でもある。熱心なファンが買い支えるシリーズでは、相応にクリア率が高まりやすい、という側面もあるのかもしれない。いずれにせよ、制作側からは、50%以下というクリア率は驚嘆に値する低さであったようだ。

そして“びっくりするくらいクリア率が低い”理由については、同作の「ペース配分」に課題があったとBeach氏は分析している。1プレイで15時間から20時間ほど費やす同作では、国家が成長していくにつれ特に内政面でやるべきことが膨大になる傾向にある。それが「テンポの悪さ」に繋がり、結果的にプレイヤーの途中離脱に繋がっていた、という見方だろう。


シリーズ新作『Civilization VII』でのさらなる体験向上に向けて

問題を調査する過程ではFiraxis Gamesは、ゲーム内の各システムについて分析。「プレイヤーが5分や10分のスパンでしたくないと思うような重大な戦略的決定」「大量のクリックを要求する決断」など、プレイヤーに嫌われる挙動をおこなってしまったタイミングを洗い出した。そして『Civilization VII』では「年代(ages)」と呼ばれる章ごとに大まかに分け、ゲームのルールを年代で変更できるようにしたという。

またBeach氏は、探検要素もプレイヤーをゲームクリアまで運ぶ強力な導線であるとの見解を示しており、年代や開拓度合いによって探検できる場所がどんどん増えていくように調整しているようだ。具体的には、ゲーム序盤の「古代(Antiquity Age)」においては、スタート地点の国土のみが探検できるようになっているという。

加えて『Civilization VI』などでは、序盤から斥候に遠くまで探索させることも可能であったため、中盤から終盤ではすでに世界の全貌が明らかになってしまうこともある。『Civilization VII』では、序盤に偏りがちであった探索の楽しみを、ゲーム全体にかけて享受できるような調整がなされるようだ。


高い評価を受ける『Civilization VI』ながら、プレイヤーのクリア率が半分を切るほど伸び悩むなど課題も抱えていたことが明かされたかたち。Firaxis Gamesは新作の開発にあたってこうした問題を解消すべく、システムを一部変更するなどさまざまな工夫を凝らし、“テンポの良い”ゲームとしてシリーズをさらに前進させるつもりなのだろう。20年以上続く長寿シリーズの最新作として、『Civilization VII』がどのように進化しているのかという点も期待されるところだ。

シリーズ最新作となる『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII(Sid Meier’s Civilization VII)』はPC(Steam)およびPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch向けに、2025年発売予定だ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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