『Apex Legends』では2024年、Steamプレイヤーが「約70%」減少。人気にかげりも、EAのボスいわく“秘策”もあり
『Apex Legends』Steam版では2024年から本稿執筆時点にかけて、約70%ものプレイヤー数減少がみられるという。SteamDBのデータをもとに、Forbesが報じている。
『Apex Legends』は、Electronic Arts(以下、EA)傘下のRespawn Entertainmentが手がけるオンラインFPSだ。2019年2月5日より基本プレイ無料で運営されている。基本モードとなる3人部隊のバトルロイヤルでは、20部隊総勢60人のプレイヤーがチャンピオンを目指してしのぎを削る。プレイヤーキャラとして、個性豊かで性能の大きく違うレジェンドたちが登場する点が特徴だ。
昨年にはサービス開始5周年の節目を迎えた本作は、Steamの同時接続プレイヤー数に大きな減少が見られる。まず、2024年の同時接続プレイヤー数のピークとなったのは日本時間2月14日のシーズン20「ブレイクアウト」の開幕時で、約47万人を記録。同シーズンでは新システム「レジェンドアップグレード」により、各レジェンドが試合中に成長してさまざまなパークを得る仕組みが導入された。戦略やゲームプレイの大きな変化により、盛り上がりもみられた(関連記事)。
その後のイベントやシーズン21「アップヒーバル」開幕時にも40万人以上が集う盛り上がりを見せていた。しかし2024年を通して、シーズン開幕時の増加はありつつもプレイヤーベースは減少を辿ることになった。
プレイヤー数減少の明確な要因は不明ながら、SteamDBのグラフをもとに2024年の各シーズンのプレイヤー数の減少幅を比較してみると、シーズン22「ショックウェーブ」にてもっとも大きなプレイヤー数の落差があったことがわかる。同シーズン開幕直後には31万4696人を記録していたのに対し、シーズン終了直前には14万7938人となり、16万6756人の減少となっている。
シーズン22では大きな変化として、バトルパスにスプリット制が導入。シーズン半ばにランクマッチのスプリットが変わるタイミングで、新たなバトルパスに切り替わる仕組みとなった。そして同シーズン開幕前には、バトルパスのスプリット制について、ゲーム内通貨であるApexコインでプレミアムバトルパスを購入できなくなる仕様が発表。前シーズンのプレミアムバトルパスの進行で貯めたApexコインでプレミアムバトルパスを“買い継ぎ”することができなくなり、都度リアルマネーでの課金が必要となる仕様とみられた。この点にはプレイヤーからは大きな批判が寄せられ、Steamユーザーレビューは不評レビューが多数投じられる、いわゆるレビュー爆撃のような状況に陥った(関連記事)。
これを受けてRespawn EntertainmentはApexコインで引き続きバトルパスを購入可能とすることを表明。あわせてシーズン22スプリット1のプレミアムバトルパスはゲーム内チャレンジ達成報酬として無償で獲得可能となった。しかし前述の“レビュー爆撃”はプレイヤーがかねてより募らせていた不満を投じる引き金となった様子がみられ、Steamの不評レビューはしばらく寄せられ続けていた。プレミアムバトルパスの購入方法とは別に、不具合やチーターの存在などの課題点を指摘する不評レビューが散見された(関連記事)。
そうした出来事を経て開幕となったシーズン22はプレイヤー数が特に大きく減少するシーズンとなったようだ。プレミアムバトルパスの販売方法自体は変更されなかったものの、バトルパスのスプリット化をきっかけとした騒動が、プレイヤー離れに繋がった可能性は考えられる。ちなみにEAのCEOであるAndrew Wilson氏は、2024年10月におこなわれた2025会計年度第2四半期決算発表にて、バトルパスのスプリット化は、想定していたよりも収益をもたらさなかったことを伝えていた(PC Gamer)。
なおプレイヤーベース減少の要因としては、バトルパスのスプリット化のほかに、新規コンテンツの減少も挙げられるだろう。本作では2023年以降、毎シーズン1体の新レジェンドを実装する方針を撤廃(関連記事1、関連記事2)。初の新レジェンドが実装されないシーズンとなった2023年2月のシーズン16「大狂演」を皮切りに、新レジェンドやマップではなく、既存のレジェンドや武器、マップのリワークなどを目玉とするシーズンもみられた。
特に本作ではレジェンドの開発に向けて人物設定、デザイン、モーションキャプチャーやボイス収録など、数多くの工程が含まれるという。また新要素の実装においては競技シーンを意識し、既存の要素も踏まえたバランス調整も必要になるとみられ、レジェンドをはじめ新要素の実装は従来より慎重におこなわれている状況もあるのだろう。
昨年11月5日に開幕した現行シーズンとなるシーズン23「フロム・ザ・リフト」についても、大きな新要素としては既存レジェンドとなるライフラインのリワークのみ。開幕直後には22万5941人の同時接続プレイヤー数を記録したものの緩やかに減少を続け、直近では連日約5万~14万人を推移している状況だ。海外メディアForbesは2024年のピークであった約47万人から14万人に減少した点から、本作がSteamで70%のプレイヤーを失ったと報じている。
ただ、2月の周年記念を前にプレイヤー数が大きく減ったのは昨年も同じだ。2023年2月にピーク時約62万人を記録したプレイヤーが、2024年2月にかけて約26万人まで減少を見せていた。そしてシーズン20「ブレイクアウト」で大きな新要素となる「レジェンドアップグレード」が実装され、同時接続プレイヤー数が約47万人まで盛り返した格好であった。
そのため来月に開幕するとみられるシーズン24でも大型の新要素が用意される可能性はあり、プレイヤー数は再び盛り返しを見せるかもしれない。ちなみに先述したEAの2025会計年度第2四半期決算発表にて、CEOのAndrew氏は長期運営の中で成長を続けるためにはゲームプレイを根本的に変えるような革新も必要になるとの考えも伝えていた。将来を見据えた変化のために、リソースを投入しつつ開発が進められているとのこと(関連記事)。そうした変化がシーズン24で実装されるかどうかは不明ながら、今後本作にどのような革新がもたらされるかは注目される。
いずれにせよ、今年の本作のプレイヤー数がどのような推移を見せるかも気になるところ。昨年12月には大規模戦FPS『Delta Force』や、チーム対戦TPS『マーベル・ライバルズ』といった基本プレイ無料のシューター作品のサービスも開始された。バトロワFPSである『Apex Legends』とはジャンルこそ違うものの、競合作品も増えるなかで、EA/Respawn Entertainmentがどのように舵を切っていくのか注視していきたい。
『Apex Legends』では現在シーズン23「フロム・ザ・リフト」が開催中だ。