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AI推進中のUnreal Engine開発元ボス、「ゲームの新たな黄金時代が訪れる」と豪語して論争に。“作ったら赤字”を覆すAI活用ゲーム開発への、期待と不安
Epic GamesのCEOを務めるTim Sweeney氏は10月18日、AIの活用によって、「ゲームの新たな黄金時代」が訪れるとの考えを示した。

Epic GamesのCEOを務めるTim Sweeney氏は10月18日、AIの活用によって、これまでコストやリソースの問題から実現がかなわなかったゲームが制作できるようになり、「ゲームの新たな黄金時代」が訪れるとの考えを示した。意見が割れるゲーム業界でのAI利用に関する同氏の発言を巡り、さっそく議論も生じている。
Epic GamesはUnreal Engine 5を開発する企業であり、『フォートナイト』などのタイトルの開発・運営を手がけていることでも知られる。同社は以前よりAI技術の活用に積極的な姿勢を見せており、昨年11月にはSweeney氏が、Steamストアにおいて導入されているAI使用開示欄が不要だという持論を述べて議論を呼んだ(関連記事)。また、2027年に同社が早期アクセスとして提供予定の「Unreal Engine 6」では従来のブループリントを用いた開発を将来的に非推奨とする計画のもと、AIを活用した開発支援ツールがより中心的な役割を果たすように設計が進められている(関連記事)。

また同社は先日、AIによる効率化を最大化するために、開発者の再配置をおこなう方針を発表。それと同タイミングで、Epic Gamesがディズニーとの提携で開発を進めているゲームでは、開発スタッフに対してAIツールの積極的な活用を求めているとBloombergが報道していた(関連記事)。さらには、バイブコーディングで作ったというプレビュー版のEpic Games Launcherの提供を開始するなど、AI推進による成果はユーザーの見えるところにも表れ始めている(関連記事)。
そうしたなかで、Sweeney氏はXの投稿で、長年要望されていたにもかかわらず、収益の何倍ものコストがかかるために実現が叶わなかったようなゲームが、もうじき実現可能になるとの持論を述べた。開発者が作りたかったものの、利用できるリソースでは作れなかったようなゲームについても同様だとしており、同氏はこれを「ゲームの新たな黄金時代(a new golden age of gaming)」と表現している。
そしてSweeney氏は続く別のポストで、初代Unreal Engineのコードを書いていたときの経験を例に挙げて、具体的に説明している。当時同氏は、時間の30%を難しい問題に対するコーディングに、残りの70%を大量のコードのタイピングやリファクタリング(ソースコードの整理や改善)に費やしていたと説明した。このうち後者は難しい作業ではなく、それに取り組んでいる間も主に前者のことを考えていたとして、今日のバイブコーディングとさほど変わらない部分であるとしている。
そのため、AIが人間のプログラマーと同等の品質基準で作業をこなせるようになれば、その70%の部分をAIに頼るのは理にかなっており、AIによってプログラマーが時間をより価値のあるタスクのために使えるようになったことには驚かなかったそうだ。それよりも同氏にとって意外だったのは、AIが難しい技術的な問題を賢くクリーンに解決する、いうなれば「insta-Carmack」と呼べる存在になったことだったという。前述した30%の部分にあたるような難しい技術的問題への対応能力を、id Software創業者であり伝説的なプログラマーとして知られるJohn Carmack氏になぞらえた表現だろう。
Sweeney氏はゲームであれゲームエンジンであれ、重要なのは最終的に出される製品であるとしている。開発者がより多くのアイデアを試し、より良いソフトウェアやゲームをより速く作れるようになることは、“皆にとっての勝利である”との考えを示した。
同氏の発言を巡って、コミュニティでは早くもさまざまな意見が飛び交っている。効率化や参入障壁の低下について賛同するユーザーもいる一方で、制作効率とクオリティは別問題であるとする声は多くみられる。今回Sweeney氏は、コーディングや3Dモデルの頂点の調整といった技術的な作業に関する例を挙げていたが、実際のゲーム開発はアートや楽曲をはじめとするさまざまな要素によって構成される。特にアートについては、AIを利用して制作した際に低品質な出力が批判を招いてきた状況もあり、また学習データの権利関係に対する懸念からもユーザーの反発を受けやすいという現状はあるだろう。AI活用をゲーム開発のどのレイヤーにまで広げるのかという問題もあるわけだ。
ところで、先日あるXユーザーが『スター・ウォーズ:ギャラクティック・レーサー』の開発初期のゲームプレイ映像を紹介。テクスチャが貼りつけられていないチープな見た目で、「スター・ウォーズ」の要素が入っていない状態にもかかわらず、すでに楽しそうだったと述べた。この投稿をChatGPTで知られるOpenAIにてAIコーディング支援ツールCodexの開発者体験向上に携わるEric Provencher氏が引用し、AIを用いてゲーム開発に参入するユーザーに向けて、派手なアートがなくともゲームが本当に楽しいかを見極める必要があるとコメント。大規模言語モデルでは、ビジュアルがリッチでも実際のゲームプレイが伴っていないものを簡単に作れてしまうとして、それでは本末転倒だという見解を示す一幕もあった。OpenAIにてCodexに関わるスタッフも、ゲーム開発におけるAIの使い方には注意を促しているといえる。
先述したSweeney氏の発言も、あくまで人間による監修やディレクションを前提とした主張という可能性はあるだろう。とはいえ昨今のEpic Gamesの方針も踏まえてか、ゲーム開発におけるAIの可能性を大々的にアピールする同氏の投稿は賛否を分けているようだ。
なおEpic GamesストアではAIを用いていることを開示する義務は設けられていない。対してSteamにおいてはアートや音声、文章などプレイヤーが利用する生成AIコンテンツについては審査やストアページ上で開示が必要ながら、開発作業の効率向上のために使用されるAIツールに関しては、情報開示や審査におけるアンケートでの報告が不要であることが明示された(関連記事)。Sweeney氏が例示したようなコーディングなどの技術的な側面では、AIの活用を後押しする環境が整いつつあるといえるだろう。Epic GamesはUnreal Engineの開発元としても、かつPCゲームストアの運営元としても業界のリーディングカンパニーの一角といえる。同社が積極的に推し進めるゲーム開発へのAI活用が、ユーザーや業界人にどのように受け止められていくのかは引き続き注目される。
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