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動物園シム『Planet Zoo』プレイヤーは「リアル動物保護に約2倍寄付する」とのオックスフォード大学の研究結果。あとやたら“爬虫類愛”が強い
『Planet Zoo』をプレイした人は、そうでない人に比べ、野生動物への関心や知識が高く、保全にも積極的な姿勢を示していることが研究より明らかになった。

オックスフォード大学の研究チームは10月5日、動物園経営シミュレーションゲーム『Planet Zoo』のプレイヤーと非プレイヤーを対象とし、野生動物に対する認識の違いなどを分析した研究結果を公開した。「市販のビデオゲームによる種に対する知識・認識・行動の改善(Commercial video games improve species-related knowledge, perceptions, and action)」と題するこの論文は、オープンソースのオンライン研究プラットフォームである「OSF(Open Science Framework)」にて無料で公開されている。なお本稿執筆時点では本論文は査読前のプレプリントとなっており、第三者による厳密な検証を経ていない点は留意されたい。
今回の調査では、2019年にFrontier Developmentsがリリースした『Planet Zoo』に焦点があてられた。同作においてプレイヤーは動物園を経営し、最大210種にのぼる動物の中から飼育対象を選び、繫殖させ、最終的には取引なども行うことができる。動物のケージや園内の設備などを自由に配置・設定でき、自分好みの理想の動物園を作れる点が魅力となっている。くわえて、『Planet Zoo』には登場する動物の生息地や保護状況などが分かる「ズーペディア」という辞典も存在。こちらは公式サイトからもその内容を確認できる。

そんな同作について、プレイしたことのある人と、そうでない人の間で野生動物に対する認識や知識、保護活動への寄付などを含む実際の行動において違いが見られるのかを分析する研究が行われた。結果として『Planet Zoo』の直近のプレイ状況やプレイ時間は、動物の名前や保全状況と好感度にくわえ、絶滅の可能性やその影響への危機意識、そして寄付額の増加といった項目で正の相関関係が見られたとのこと。具体的には『Planet Zoo』のプレイヤーは、非プレイヤーと比べて平均寄付額が約2倍に達したほか、論文においては「一般に好まれにくい」とされる爬虫類に対して、特に好意的になる傾向が見られたという。
ゲーム内の“デジタル動物”には懸念も存在していた
本論文ではゲームなどのデジタル上に存在する動物について、現実の動物に対する認知を歪めるのではないか、という懸念が存在することを紹介。例としては、絶滅すれば取り戻せない現実の野生動物と違って、バーチャルな動物は容易に代替が可能、かつ今や広く普及しており、野生動物の価値が低く見積もられたり、種の喪失が軽視されたりする可能性があるという見方が挙げられている。このほか、表現上のバイアスが与える影響なども先行研究を引用して紹介されている。研究チームはこうした懸案事項を念頭に、ゲームである『Planet Zoo』を用いて、デジタルメディアにおける表現が野生動物に関する知識や認識、そして保護活動への意欲にどのような影響をもたらすのかを分析しようと試みた。
調査はオンライン上で実施され、クラウドソーシングサービスや『Planet Zoo』のコミュニティなどを通じて参加者を募集。事前調査や回答の質などに基づく除外、分析上の調整を経て、最終的にプレイヤー272人と非プレイヤー273人の合計545人が分析対象となった。参加者の平均年齢は18歳から64歳までの約31歳。男性が40.18%で、女性は54.5%だった。また、居住国に関してはイギリスが31.74%、アメリカが22.2%となっており、二か国で半分以上を占めているほか、ヨーロッパ各国やカナダなどが続いている。
動物保護への寄付習慣についての事前質問では、「一度もしたことがない」という回答が約53%である一方、「年に一回程度」と答えた割合が約30%で、一年に何回か、あるいは毎月と答えた参加者は合計15%ほどとなっている。『Planet Zoo』プレイヤーについては、その平均プレイ時間は約304時間で、中には8000時間を超える猛者も存在。中央値は約113時間となっている。プレイしていた時期については、過去一週間以内と答えた割合が約30%だったほかは、直近6か月以内とそれ以上、あるいは一月前のグループでそれぞれ20%ほどとなっていた。
本調査では、実際の動物の写真と『Planet Zoo』上の動物のスクリーンショットがそれぞれ使用された。今回の研究にピックアップされた動物は、哺乳類5種と爬虫類5種の計10種。参加者はいくつかのテストを受けるにあたり、『Planet Zoo』のプレイヤーと非プレイヤーで分けられたほか、リアルな動物写真を使うグループと、ゲーム内の画像を使うグループにもランダムに割り当てられた。

調査は主に画面上に表示された動物の画像を用いて行われ、野生動物に関する知識や認識、好みにくわえ、実際に参加者がどれだけのお金を寄付し得るのかを測るテストも行われた。この内「知識」を問う項目では、表示された動物の正しい名前を選ぶものや、その動物がどのような保全状況にあるのかを答えるものが存在。また「認識や好み」を測るテストでは、単純に好きか嫌いかなども尋ねられたほか、参加者本人が自覚していない好悪を測るため、連想ゲーム的な手法が採用された。表示された動物の画像や「かわいい」、「醜い」といった単語について、できるだけ速くイメージ通りの分類に仕分けるテストが行われたのだ。これは反応時間の差などから動物に対する潜在的な感情を調べる手法(IAT:Implicit Association Test)となっている。
ちなみに、対象となった哺乳類と爬虫類の減少や絶滅に関する危機意識についても、心理学における「保護動機理論(PMT:Protection Motivation Theory)」という考え方に基づき複数の質問が設定。参加者は、「あなたの行動が実際の動物保護にどれだけの効果をもつと考えるか」などといった問いに5段階評価で回答している。
このほか実際の寄付行動を調査するテストでは、参加者全員に1トークン=1ペニー(約2.1円)の仮想トークンが2000枚(約4200円分)与えられ、画面に表示された動物10種への寄付トークンの配分が調べられた。なお、このテストでは寄付トークンを「自分へ配分する」という行動も可能。全参加者の中から抽選で選ばれた10人の寄付は実際に支払われるとされ、もし選ばれれば、自分に配分していた寄付トークン分の金額が通常の謝礼に上乗せされるかたちとなっていた。
“あまり好まれない種(less desirable taxa)”に好感度ブースト効果
結果として『Planet Zoo』のプレイ時間が長かったり、最近プレイしていたりする人ほど、動物の名前やその保全状況に関して、正しい回答をする傾向が統計的に有意となっていた。以下は生物名称の正答確率とプレイ状況の関連を表したグラフであり、右にいくほど最近プレイした人を表し、その予測正答確率は段々と高くなっている。

『Planet Zoo』の直近のプレイ傾向と動物の名前に関する予測正答確率のグラフ。縦軸が予測正答確率、横軸はプレイ時期を示す。
なお保全状況に関しては、プレイヤーと非プレイヤーで全体的な正答率は低めだったという。研究チームは、ゲーム中で絶滅に瀕した種を繁殖させることで利益を得ることができるものの、その種が「どれだけ危機に瀕しているか」ということまでは意識が及びにくいのではないかと考察している。とはいえ以下の表では、『Planet Zoo』のプレイ時間や最後にプレイした時期は、動物の保全状況に対する認識と統計的に有意な関連を持つことが示されている。

プレイ経験のない人を基準とし、プレイヤー層の「動物の保全状況への理解」について関係をまとめた表。「6か月以内/Within past 6 months」、「一か月以内/Within the last month」、「一週間以内/Within the last week」にて統計的に有意となっているほか、「プレイ時間/PZ hours」についても有意な値が得られている。
動物への好感度についても、直近一か月以内や一週間以内のプレイヤーで全体的に好意的になる傾向が統計上有意だったほか、興味深いのは同様のプレイヤー層において、爬虫類がより好まれるようになっていたという点だ。以下の表はゲーム経験の有無として非プレイヤーを基準とし、動物への明示的態度(好感度)と各要素の関係をまとめたものだ。

基準を「非プレイヤー」「爬虫類」「実際の動物写真」とし、プレイヤー層の「動物への好感度」と各要素の関係をまとめた表。
上の表では一か月以内や一週間以内でより好意的な傾向が見られるほか、「哺乳類(Mammal)」は全体的に好まれていることが分かる。しかし「最後にプレイした時期と哺乳類/PZ recency × Mammal」の交互作用が直近のプレイヤー層において負となっており、これは『Planet Zoo』のプレイ経験が最近の人ほど、爬虫類への好感度が高い一方、哺乳類は変化しにくいことを表している。
こうした結果について研究チームは、参加者全体として哺乳類に関する知識が豊富だった一方、『Planet Zoo』のプレイ時間が長くなるほど爬虫類の特定精度が向上するという顕著な傾向が見られたことに言及。デジタルメディアに長時間触れることが、爬虫類といった「あんまり人気のない種(less popular taxa)」について特に有益に働く可能性を示唆している。ちなみに潜在的な好悪を測るテスト(IAT)においては、特筆すべき有意な関連は見られていない。
沢山プレイした人ほど寄付するし、直近にプレイしたひとは爬虫類にも寄付する
動物保護の観点では、種の絶滅の可能性とその影響の大きさを測る指標(PMTに基づく質問の一部)に対し、『Planet Zoo』を一か月以内、または一週間以内に遊んだプレイヤー層において統計的に有意な関連が存在した。しかしながらこの傾向は、「最近プレイした人ほど単調に強まる」というものではなく、6か月以内にプレイした人では一旦弱まる傾向も見られた。研究チームは、ゲームがプレイヤーの生態系に関わる脅威認識に影響を与えうるという知見を支持する結果となったものの、その影響は短期的なものに留まるのではないかと解釈している。
寄付行動に関しては、『Planet Zoo』のプレイ時間と寄付トークンの配分との間に統計的に有意な関連が見られた。これは哺乳類と爬虫類の双方で確認され、特に爬虫類に対しては一週間以内にプレイした人と寄付配分の間に有意な関係が存在している。また、爬虫類の名前を正しく言い当てられることと、寄付配分の間にも相関関係がみられている。具体的には、哺乳類への寄付額と爬虫類への寄付額を平均すると、プレイヤーが平均7.16ポンド(約1600円)で、非プレイヤーの4.68ポンド(約986円)を上回った。また、与えられた20ポンド(約4200円)のトークンをすべて動物に配分した参加者の割合もプレイヤーでは非プレイヤーの約3倍となっている。

哺乳類と爬虫類への寄付トークンの配分について、各要素との関係をまとめた表。表上部が「哺乳類への寄付/Donations: mammals」、表下部が「爬虫類への寄付/Donations: reptiles」となっている。「プレイ時間/ PZ hours」は両方で有意。爬虫類側の「一週間以内/Within the last week」と、「名称知識/Knowledge: names」にも有意な関連が見られる。
上の表においては「種への好感度(Explicit attitude)」と、保護行動へのためらいを示す「障壁の認知(Perceived barriers)」項目も有意となっている。つまり、動物への好感度が高いほど、また手間や費用の負担を大きく感じない(Perceived barriers が低い)ほど、その動物への寄付配分の割合が高い傾向があるということになる。
研究チームは、「脅威評価(Threat appraisal)」と「対処評価(coping appraisal)」、そして全体としての「行動意欲(Willingness to act)」が寄付配分と有意な関連を示さなかった点について、本論文では次のような可能性を示唆している。『Planet Zoo』が現実の野生動物の減少や絶滅に対する認識を強めたとしても、プレイヤーが自ら効果的な対処行動をとれる、と感じさせる仕組みや機会、知識を十分に提供できていないのではないかという可能性だ。また、ゲームが施設経営という組織単位の保全活動を描いているため、種の喪失に対処できるのは大きな組織だけだというメッセージを意図せず伝えている可能性にも言及している。とはいえ、これらは検証された結果ではなく、あくまで著者らの考察であるという点は留意されたい。
本論文では結論として、『Planet Zoo』のようなゲームは特定の生物種に関する知識・認識を深め、寄付行動を促進し得ると述べている。また、こうしたゲームは必ずしも現実における野生生物保護への呼びかけや人々の関与を妨げるものではなく、むしろ関心を得にくい動物たちに対して特に有益であると指摘。生物多様性が急速に失われていく昨今、ゲームで描かれる動物や、その保護の試みに対し、研究者とゲームスタジオの双方が手を取り合っていくべきであるとも主張している。
本論文では、動物園経営シミュレーションゲーム『Planet Zoo』のプレイヤーと非プレイヤーの間で、野生動物に対する知識・認識・保護活動や寄付への意識について違いが見られるかどうかが詳しく分析された。一方で研究者チームは、本研究においていくつかの課題も存在すると認めている。第一に、今回の調査は『Planet Zoo』という特定のゲームについて扱っているため、一般化には限界があるという指摘だ。さらに、対象となった動物も同作に登場する種のみである点や、知識や保全状況に関する質問では正誤ではなく、種への親しみや絶滅の危機に対してどの程度認識しているかも考慮すべきだと述べている。また、哺乳類と爬虫類という括りではなく、種単位で効果を精査すれば、よりよい推論が可能だろうとも語っている。

今回の調査では『Planet Zoo』をより長く、直近でプレイしているほど、動物への知識やその保全状況に関してより詳しいという有意な相関関係が示された。また動物たちに対する好感度や、種の喪失への危機意識とも関連が示され、寄付配分については2倍近い差も生まれ得るようだ。
さらに論文中にて「あまり人気がない」と何度も言及された爬虫類については、最近ゲームをプレイしているほど好意的になり、プレイ時間が長いほど寄付配分も多い傾向が見られたというのは興味深い結果だ。あまり知る機会のない動物については、ゲームが貴重な情報源となることもあるのだろう。
著者らは商業的なゲームが自然保護活動を促進する可能性について論文中、度々言及している。ゲームは世界的に大きな影響力を持っているとして、デジタルな空間と現実の溝を埋めるような取り組みも含め、ゲームの可能性に期待を寄せているようだ。
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