ヒット中『コントロール レゾナント』開発者がこだわった、「黄色いペイント抜き」の誘導術。迷わせない、でも“自分で見つけた”と思わせたい職人技

『CONTROL Resonant』のディレクターを務めるMikael Kasurinen氏によれば、プレイヤーを誘導するいわゆる「黄色いペイント」は、本作ではあえて採用しなかったという。

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Remedy Entertainmentは9月24日、『CONTROL Resonant(コントロール レゾナント)』を発売した。広大なフィールドを自由に駆け巡るゲームプレイを特徴とする本作だが、ディレクターを務めるMikael Kasurinen氏によれば、プレイヤーを誘導するいわゆる「黄色いペイント」は、あえて採用しなかったという。ゲーム系ポッドキャスト「Dropped Frames」にて、“自然な誘導”に拘った理由とその方法を明かしている。

『CONTROL Resonant』は、『CONTROL』の続編だ。前作は主人公ジェシー・フェイデンが、政府の機密機関であるFBC(連邦操作局)の本部オールデスト・ハウスを乗っ取った異世界の脅威ヒスと、その狂気に飲み込まれた強大な能力者である弟・ディランに立ち向かう作品だった。『Resonant』では、そのディランが主人公に。超常的災害により崩壊したマンハッタンを舞台に、変形する近接武器「Aberrant(アベーラント)」を振るい、正体不明の宇宙的存在へと立ち向かう姿が描かれる。変形銃を使ったシューターとなっていた前作から打って変わって、激しい近接戦闘が繰り広げられる。

“ペンキ”抜きでプレイヤーを誘導するには

そんな『CONTROL Resonant』では、上下左右に建造物が入り組む広大なフィールドを探索するゲームプレイを特徴としながらも、目立つ黄色だけでプレイヤーの誘導をおこなうといったいわゆる「黄色いペイント」のような誘導はおこなわれていない。代わりに、ダクトテープや照明など、その場の環境を活用した自然な誘導方法が採用されている。ゲームに登場する「黄色いペイント」 については、露骨であったり不自然に目立ったりすることなどから不満の声が寄せられることも少なくない。本作でディレクターを務めるKasurinen氏は、そうした表現を避けたのにはすべて意図があると語り、“ペンキ”抜きでプレイヤーを誘導することにこだわった理由を伝えた。

まずKasurinen氏は、ゲームを魅力的なものにする重要な要素のひとつとして、プレイヤーの「自律性(Autonomy)」を挙げた。ゲーム側が与える指示通りに動くのではなく、プレイヤーが自らの意思で行動を選ぶことが重要だと伝えた。指示通りに動いて得た結果と、自分なりの方法を見つけ出してたどり着いた結果とでは、得られる感動が大きく異なるのだという。また同氏は、プレイヤーは単に物事を眺めるだけの傍観者になるのではなく、ゲームの中の体験に主体的に参加し、自分の選択を振り返ったり、疑ったりしてほしいそうだ。それは人生そのものに通じる要素であり、だからこそゲームに引き込まれるのだと同氏は説明している。

一方実用上の問題として、明確なナビゲーションが存在しないゲームでは、プレイ中に「迷子」になってしまう可能性もあるだろう。Kasurinen氏は、そうした問題を避けるうえでは、ゲーム内のあらゆるビジュアルデザインが重要になると解説している。たとえば照明をどこに置くのか、どのような色を用いるのか、特定の色をどの場所で使うのかといった、一つひとつの判断がプレイヤーの行動を導くのだそうだ。

Kasurinen氏によれば、プレイヤーに正しいルートを見つけてもらうには、ゲームメカニクスに頼り切るのではなく、世界を形作るテクスチャや舞台設定・物語、照明やその色使いといった細かな要素を積み重ねることが重要だという。また、同氏はプレイヤーの注意を引くため、地形の崖端などには「目印」を配置することもあるそうだ。ただし、そうした目印を効果的に機能させるには、「何をやらないか」を見極めることが重要になるという。マップの至るところに目印を置いてしまえば、かえってプレイヤーを混乱させかねないからだ。そのため、本当に必要な場所に限って使うべきだとの考えを示している。

ただし、Kasurinen氏は、こうしたゲームデザインが一部のプレイヤーにとっては難しすぎる可能性があることも認めている。このアプローチは多くのプレイヤーを遠ざけてしまう危険性があるとしながらも、作品が長く評価され続けるためには正しい方向性だと信じていると語った。『CONTROL Resonant』で目的地やアイテムの位置を指し示す明確なマーカーが表示されない背景には、こうしたKasurinen氏のゲームデザイン哲学があるのだろう。前作『CONTROL』もさりげない巧みな誘導が評価を受けた作品であったが、マップの規模を増した新作でもそうした哲学が引き継がれているようだ。

「黄色いペイント」にもワケはある

しかし「黄色いペイント」が一部ユーザーからの批判に晒されながらも、採用され続けているのには切実な理由があるようだ。過去には米IGNの動画にて、UIデザイナーのEdd Coates氏が「黄色いペイント」について解説。同氏によると、開発中のプレイテストでは、開発側が気づいてほしい場所やオブジェクトが、プレイヤーに見過ごされてしまうケースが少なくないという。そうした見落としを防ぎ、プレイヤーを適切な目的地へと導くための手段として、「黄色いペイント」のような目立つ誘導表現が用いられることがあるとのことだ。

特に幅広い層がプレイするAAAタイトルでは、プレイヤーごとの経験や理解度の違いまで想定した設計が求められうる。プレイテスト段階での検討も、昨今の大型ゲームで目立つ誘導表現が採用されやすい理由のひとつなのだろう(関連記事)。

しかしこうした表現が多くのゲームで採用されてきた結果、「黄色いペイント」問題としてたびたび議論に上がるようになった(関連記事)。また直近では『Marvel’s Wolverine』でも、実質的なナビゲーション表示となる「匂いの痕跡」が目立ちすぎるとして一部プレイヤーから批判が寄せられることに。これは主人公であるミュータントのローガンのキャラクター性を反映した、「超感覚(Senses)」にちなんだ誘導であったが、「黄色いペイント」問題になぞらえて議論の対象となった。結果的に、アップデートで匂いの痕跡が目立ちにくくなるように調整。その後のアップデートでは、一部の探索要素において匂いの痕跡などの誘導表示を個別にオフにできる設定項目も追加されていた(関連記事)。そうした状況も見るに、たとえ設定を反映した作りになっていても、目立つ誘導は批判の的になりうることがうかがえる。

『Marvel’s Wolverine』

なお『CONTROL Resonant』のディレクターであるKasurinen氏も「黄色いペイント」に代表される誘導表現そのものを否定しているわけではなく、必要に応じてゲーム内に「目印」を設けることがあると伝えている。実際、『CONTROL Resonant』では照明などのほか、時には黄色いダクトテープなども用いられており、進むべき方向がバリエーション豊かに示されている。高精細なグラフィックや大規模なフィールドが設けられる作品も多い現代の3Dゲームにおいては、プレイヤーを迷わせないためのナビゲーションは重要となる。一方で分かりやすさを優先するか、さりげない誘導を用いるかは想定されるユーザー層やゲームのテンポなどさまざまな要因を踏まえて作品ごとに検討される要素だろう。目立つ誘導が一部で批判を浴びることもある昨今、分かりやすさと没入感のバランスをどうとるかは、開発者にとって悩ましい課題になっているかもしれない。

『CONTROL Resonant』はPC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)/PS5/XBOX Series X|S向けに販売中。

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Kousetsu Taguchi
Kousetsu Taguchi

レトロゲームショップに入ると真っ先にセガサターンのコーナーを確認するタイプです。

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