謎のニンテンドーDSゲーム、大手レビューサイトMetacriticで突如「ユーザースコア歴代2位」に上り詰める。1位を奪おうとする“高評価爆撃”荒らしか

レビュー収集サイトMetacriticにて、2008年に発売されたとあるゲームが突如としてユーザースコアで高評価を獲得し、話題を集めている。話題の中心にあるのは『Disney Cory in the House』というアメリカのテレビドラマを原作とするニンテンドーDS(以下、DS)向けソフト。本稿執筆時点でユーザースコアで1位に位置する『Clair Obscur: Expedition 33』に迫る勢いをみせ、注目を集めている。

『Disney Cory in the House』は、2007年から2008年にかけてディズニー・チャンネルで放送された子供向け番組「コーリー ホワイトハウスでチョー大変!(Cory in the House)」(以下、コーリー)を原作としたゲームソフト。「コーリー」はコーリー・バクスターという少年を主人公にしたシチュエーション・コメディだ。ホワイトハウスのヘッドシェフの仕事を得た父に付いてきた少年コーリーが、ホワイトハウスを舞台にさまざまな騒動を起こすという物語。ちなみに、同ドラマは2003年から2007年に放送されていた「レイブン 見えちゃってチョー大変!」のスピンオフという立ち位置で製作された。

『Disney Cory in the House』はそんな同番組を原作としたアドベンチャーゲームであり、2008年4月にアメリカなどで発売された。開発元のHandheld Gamesは携帯機を中心に、ライセンスゲームを多く開発してきたデベロッパーだが、同作も含めそのほとんどは日本では展開されていない。本作でプレイヤーはコーリーを操作し、ホワイトハウスや学校、ショッピングモールなどを探索。シークレットサービスといった“敵”から身を隠しながら、アイテムを入手したりNPCと会話することでミッションを進めていく。また、ミニゲームが豊富なこともアピールされていた。

そんな本作に関して、2026年の1月11日頃からMetacriticで高評価のユーザーレビューが大量に投稿され始め、ユーザースコアが急上昇。記事執筆現在で、3224件のユーザーレビューが投稿され、10点満点中9.3点を獲得している。

レビューを見てみると本稿執筆時点で表示されている約1600件のユーザーレビューのほとんどに10点が付けられている様子。文面は「プレイして人生が変わりました」「10点満点では足りない」といったわざとらしい称賛から、「史上最高のゲーム」と連呼するヤケクソ気味の投稿、「プレイした途端、死んだ犬が死から蘇り、私と一緒に遊び始めました」といった現実離れした投稿などが寄せられている。ゲーム内容が真っ当に評価されているわけではなく、一部ユーザー間でジョークとして本作に絶賛レビューを寄せられている様子だ。

ユーザースコア9.3点といえば『メタルギアソリッド』や『ウィッチャー3 ワイルドハント』などといった作品と並ぶ、歴代2位タイに位置する点数である。ちなみに単独1位には、昨年発売された『Clair Obscur: Expedition 33』が9.5点を取得して位置している。

なお、9.2点・9.1点の作品には『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』や『The Last of Us』、『バイオハザード4』といった歴史的な名作が多く並んでいる。これらの作品をしのぎ、突如として『Disney Cory in the House』はユーザースコアだけ名作ゲームと肩を並べているわけだ。

ちなみにMetacritic上では各ゲームのメディア・批評家からの評価がメタスコアとして集計されているものの、本作のメタスコアは批評の数が足りず未決(tbd・To Be Determined)となっている。現時点で閲覧できる2件の批評を見ると、IGNのJack DeVries氏は同作について「このゲームは今までに体験したことがないほどの悪い操作感に加えて、演出は屈辱的なほどに馬鹿げており、ミニゲームはゲームと呼ぶに値せず、そのうえプレイ時間も極めて短い」と厳しく批判し、100点満点中30点と評価。またDa Gameboyzは「もっともハードコアなファンでもなければおすすめできない」として40点を付けている。発売当時少なくともメディアや批評家からはほとんど見向きもされず、プレイされても酷評を受けたゲームといえるだろう。

そのため当然ながら、今回の10点満点のユーザーレビュー殺到現象は、『Disney Cory in the House』が本当に評価されているわけではない様子。また同様の現象は初めてではなく、これまで4chanなど海外フォーラム上で、本作を持ち上げる活動が過去10年以上にわたって繰り返されており、2013年にもAmazonやMetacriticなどいくつかのレビューサイトで“絶賛レビュー爆撃”がおこなわれていたという。その際はMetacriticのユーザースコアが9.7点に達していたとのこと(IGN)。

本来Review bomb(レビュー爆撃)といえばレビュー収集サイトにて無数のユーザーが特定の意図のもと、ゲーム内容に関わらず低評価を一斉に投稿し、レビューの評価を大きく変動させる事例が一般的だ。今回は逆に、評価の良くない過去作にむやみに高評価を投じる流れが生じているといえる。

『Clair Obscur: Expedition 33』

いずれにせよ、作品の内容を考慮しないレビューが溢れかえる点でこうした運動は「荒らし行為」にあたる。しばしば発生するレビュー爆撃については、レビュー収集サイトもさまざまな対策を講じてきた。2023年にSteamはルールとガイドラインを改定し、複数アカウントでレビューを投稿するといった、作為的なユーザーレビューを具体例を上げつつ禁止していることを明記(関連記事)。またMetacriticも2023年に『Horizon Forbidden West』に発生したレビュー爆撃を受け、モデレーションを厳格化する方針を示した(関連記事)。同事例では、同性愛に関わる描写が一部のプレイヤーの不満を引き起こしたとみられている。ユーモアから生じるものもあれば極めて政治的な理由のものまで、レビュー爆撃が発生する原因はタイトルによってさまざまである。

今回の『Disney Cory in the House』の事例においては意図や切っ掛けは不明。ただ記事執筆現在、『Clair Obscur: Expedition 33』の直近のユーザーレビューを覗いてみると、1点や0点といった低評価のレビューが並んでおり、最近まで9.6点であったユーザースコアは9.5点に減少している。『Disney Cory in the House』に10点のレビューが寄せられたのと同タイミングで投じられている点を見ると、『Clair Obscur: Expedition 33』をユーザースコア1位の座から引きずり降ろそうといった目論見があるのかもしれない。Metacriticがレビュー爆撃にどういう対応をとるのか、注目が集まっている。

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

Kousetsu Taguchi
Kousetsu Taguchi
記事本文: 16