Fandomは、レビュー集積サイト「Metacritic」にて今後数か月間でモデレーションの厳格化が予定されていることを明かした。Metacriticでの、『Horizon Forbidden West』のDLC「焦熱の海辺」における同性愛に関わる描写を巡るいわゆる“レビュー爆撃”を受けての対応だという。海外メディアEurogamerが伝えている。
Metacriticでは、世界中のメディアレビューを作品ごとに集積し、それぞれの評価とメディアの影響力を鑑みてメタスコアと呼ばれる数値を、満点を100点として算出している。同時に、ユーザーからのレビューおよびスコアの投稿も受け付けており、こちらは10点満点としてスコア化。シンプルなユーザーレビューシステムではあるが、業界への影響力がある著名サイトということもあり、非常に多くのユーザーを抱えている。なおMetacriticは、米国の大手WikiサイトホスティングサービスFandomにより2022年10月に買収された(関連記事)。
今回、Eurogamerの取材に対してFandomが声明を発表。今後数か月間でMetacriticのモデレーションを厳格化する予定であり、現在プロセスやツールを開発中であると明かしたとのこと。今回の声明の背景には、『Horizon Forbidden West』のDLC「焦熱の海辺」における同性愛に関わる描写があるという。
『Horizon Forbidden West』はオープンワールド・アクションRPGだ。主人公アーロイによる、人類の文明が崩壊した1000年後の地球での冒険が描かれる。4月19日に発売されたDLC「焦熱の海辺」では、かつてロサンゼルスであった群島を舞台に新たな物語が展開される。
同DLCのMetacriticでのメタスコアは82点を獲得。本編を拡張する堅実な内容の数々が各メディアから評価を受けている。一方でユーザーレビューには本稿執筆時点で1555件中921件の不評が投じられており、ユーザースコアは4.1点とかなり低い。Eurogamerによれば一時ユーザースコアは2.7まで落ち込んでいたという。
そうした過剰に低いユーザースコアの原因となったのが、いわゆるレビュー爆撃だ。レビュー爆撃とは、特定のタイトルのスコア・評価を下げることを目的に、多数のユーザーが短期間に大量のレビューを投稿すること。『Horizon Forbidden West』DLC「焦熱の海辺」では、メインストーリー上で同性愛に関わる描写が存在する。Metacriticの本DLCのユーザーレビューにおいては、一部ユーザーがそうした描写が存在することへの不満を述べ、スコア0点とするレビューを寄せている状態にある。
Fandomは声明において、同社の擁するサイトはすべてのユーザーたちのための場所であり、Metacriticを含むすべてのサイトにおける信頼性・安全性を重視していると述べている。またMetacritic運営元は、『Horizon Forbidden West』DLC「焦熱の海辺」に対する罵倒的・侮辱的なレビューを認識しているとのこと。運営元は人種差別・性差別・同性愛嫌悪・ほかのユーザーへの侮辱などを含む不適切な行為の報告を確認しており、違反が認められた場合はレビューを削除していると伝えている。また先述のとおり今後数か月間でMetacriticのモデレーションを厳格化するために、利用規約違反を見つけ出すプロセスやツールの改良をおこなっているそうだ。
レビュー爆撃が発生する原因はタイトルによってさまざまで、ゲーム内の何らかの要素への批判がきっかけになることもあれば、開発元や販売元のスタッフの個人的な言動が引き金になることもある。いずれにせよ、レビュー爆撃の際にはゲーム内容への正当な評価が含まれない多数の投稿によって、不当に作品のスコア・評価が下げられてしまうといえる。Metacriticは以前にもレビュー爆撃への対策として「発売から36時間経たないと投稿できない」仕組みを導入していた(関連記事)。今回は不適切なレビューへの新たな対抗策として、モデレーションの厳格化を予定していることが発表されたかたちとなる。