バンダイナムコエンターテインメントがPC（Steam）/PS5/Xbox Series X|S 向けに1月26日に発売した『鉄拳8』。本作の機能「AIゴースト」に関して、弟を亡くしたプレイヤーからある質問が海外掲示板Redditに投稿された。その投稿は話題になり、本作のディレクターを務める池田幸平氏と、プロデューサーを務める原田勝弘氏が反応し、その想いは残されることとなった。
『鉄拳8』は対戦3D格闘ゲームだ。対応プラットフォームはPC（Steam）およびPS5/Xbox Series X|S。本作の舞台は前作『鉄拳7』より半年後の世界。三島一八は作中に登場する架空の企業G社の代表として世界掌握を進める。彼の息子である風間仁は、G社の侵攻を阻止し、そして自らに流れるデビルの血の因縁に決着をつけるため、一八との決着をつけようとする。それは再び世界を巻き込んだ闘争へ発展していくこととなる。
参戦キャラは、吉光、レオ、シャヒーン、クマなど発売日時点で総勢32体が用意されている。キャラクタービジュアルは高解像度モデリングに一新されており、揺れる髪や筋肉の動きといった高精細な表現もアピールされている。
そして本作には「スーパーゴーストバトル」なるモードが存在。本作ではAIゴーストが「Qラーニング」と呼ばれる強化学習の手法により、プレイヤーの動きを素早く学習。立ち回りや動作の特徴を的確に再現するとされている。たとえば攻撃的な立ち回りであればアグレッシブにゴーストが動く。さらに使用する技や動きの癖まで学習。文字通り自分の分身となる。AIゴーストは各プレイヤーの使用するキャラごとに生成され、他のプレイヤーのゴーストをダウンロードすることも可能。「スーパーゴーストバトル」ではそうしたゴーストたちと対戦することができるのだ。
そんな「AIゴースト」について、とあるユーザーMelodic_Insect1356氏が、海外掲示板Redditに想いを綴った。同氏は、『鉄拳』シリーズの大ファンである弟のNobleYato氏とともに『鉄拳8』を楽しんでいたとのこと。ランクアップを目指しつつ、最終的に二人の地元であるアメリカ・テキサス州でのローカル大会に参加しようと考えていたようだ。
しかしながら、NobleYato氏は2月22日、26歳の若さで突如夭逝。Melodic_Insect1356氏は、NobleYato氏の部屋で弟が亡くなっているのを見つけたという。そうした事情の中、Melodic_Insect1356氏は海外掲示板Redditに、「弟のAIゴーストをずっとセーブしておくことはできるのか」という質問を投稿した。AIゴーストは本人ではないものの、その人の特徴や癖などを模倣する。Melodic_Insect1356氏はときどき、弟とまた対戦したいと思っているといい、模倣とはいえAIゴーストを介して弟を思い出したい、と考えたようだ。
AIゴーストのデータはサーバーにアップロードされる。プレイデータが更新されないことによって、いずれサーバーから弟のゴーストが消えてしまうことを懸念したのだろう。この投稿はすぐさま多くの反応を集めた。さらに他のユーザーによってX上でも拡散され、『鉄拳8』のプロデューサーを務める原田勝弘氏やディレクターを務める池田幸平氏などに対してリプライを送る人も現れた。Melodic_Insect1356氏本人も、Redditの投稿を見たユーザーに勧められ、リプライを送った。
その投稿群は原田氏・池田氏両名の目に留まった。両氏は亡くなったNobleYato氏に対し哀悼の意を表明。そしてAIゴーストのデータは、ローカルにダウンロードすることで、サーバーからデータが消去されても残り続けると回答。ゴーストをダウンロードさえしておけば、いつでも対戦が可能なようだ。この問い合わせと回答によって「亡くなった弟と『鉄拳8』で対戦したい」というMelodic_Insect1356氏の望みが果たされると判明したかたちだ。
Melodic_Insect1356氏は開発者による回答を受け、Redditにて、反応をくれたコミュニティと『鉄拳』開発チームに対し感謝の言葉を綴った。また同氏は、原田氏たちにリプライやダイレクトメッセージを送ったものの、今回の件について、改めて感謝の手紙をバンダイナムコエンターテインメントに送ることも考えてみると述べた。
『鉄拳8』を取り巻くコミュニティの協力と本作の機能により、Melodic_Insect1356氏のもとにNobleYato氏のAIゴーストが保存できるということが判明した。ゴーストによって残された弟のプレイは、思い出とともに残り続けることだろう。
『鉄拳8』は、PC（Steam）/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中だ。
