人気を博した空登りアクション『Only Up!』販売打ち切り。“ゲームが存在していた痕跡”ごと抹消する完全削除

SCKR Gamesは9月8日、『Only Up!』を配信終了した。PC(Steam)向けに配信されていた本作は販売終了となっている。

SCKR Gamesは9月8日、『Only Up!』を配信終了した。PC(Steam)向けに配信されていた本作は販売終了となっている。あわせてSteamストアページ上のタイトル表記や開発者名表記も変更されており、『Only Up!』が販売されていた痕跡さえも消し去られている。


『Only Up!』は、空へと伸びる構造物を上へ上へと登る3Dアクションゲームだ。主人公のジャッキーは、貧困から抜け出し、世界と自分自身を知る旅に出ようと、スラム街の上空にそびえる構造物を登る。構造物には、さまざまなオブジェクトや施設などが雑然と存在し、それらが組み合わさるようにして空に浮かんでおり、不思議な光景となっている。プレイヤーは、足を踏み外して落下しないよう慎重に歩みを進めていくこととなる。

本作は今年5月25日にSteamにて配信開始。その後6月に入ってから、本作をプレイする実況配信者が急増し、Twitchなどでの人気配信タイトルのひとつとなった(関連記事)。そうした配信人気もあってか、6月中旬以降には本作のプレイヤー数も右肩上がりに増加。同時接続プレイヤー数は、これまでのピーク時には9000人を超えている(SteamDB)。“壺おじ”こと『Getting Over It with Bennett Foddy』を彷彿とさせる、シンプルながらつい熱中してしまうイライラ系アクションとして人気を見せていた。


昨日9月7日、SCKR GamesはSteamの本作公式ニュースに声明を投稿。本作をまもなく(soon)配信停止にすることを表明していた。そして本日9月8日、本作の配信は停止されており、Steamストアから購入できなくなっている。なお弊誌で確認したところ、少なくとも本稿執筆時点では、すでにゲームを購入していたユーザーは変わらず本作をダウンロードして遊ぶことができるようだ。

販売終了とあわせて、本作のSteamストアページ上のタイトルは「not available」に変更され、公式スクリーンショットなどはすべて抹消。あわせて以前はSCKR Gamesとなっていた開発元/パブリッシャー名表記もIndiesolodev(インディー個人開発者)へと変更されている。ほか、本作の公式YouTubeチャンネルも削除。作品が配信停止となるだけでなく、SCKR Gamesとして『Only Up!』を配信していた痕跡を消すかのような対応がとられている。

昨日投稿された声明においては、本作は開発者が初めて手がけた個人開発タイトルであり、数多くの失敗があったとされていた。開発者はこの数か月間ずっとストレスに苛まれてきたといい、ゲームを過去のものにしたい(I want to put the game behind me)と決断。心を平穏と癒しを得るため、本作を配信終了にすることを選択したそうだ。

本作は人気を博す傍らで、バグの多さなどからユーザーレビューの評価がいまひとつ伸び悩んでいる状況にあった。また作中の3Dモデルや音声などには、権利関係に懸念がありそうなさまざまな素材が存在していると、一部ユーザーより指摘されていた。実際に3Dモデルの作者から指摘を受け、SCKR Gamesが対応したと見られる一幕もあった(関連記事)。


SCKR Gamesはアップデートによりバグ修正などの対処をおこなってきたものの、このたび本作は配信終了となり、サポートも終了されると見られる。また声明を見るに、クリエイターとして開発者自身が本作の出来や本作を取り巻く環境に不満を抱いていた様子。そうした背景もあり、作品そのものの痕跡を消すような対応がとられたのかもしれない。

開発者は今後一旦休息をとり、ゲームデザインの勉強を続けると述べている。現在『Kith』という新作を手がけており、今後はこちらに注力するそうだ。同作はリアリズムや映画的表現に重きが置かれており、『Only Up!』とはまったく異なるジャンルや設定、コンセプトで作られているとのこと。開発も個人ではなく、少人数のチームで制作したいと明かされている。




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Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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