日本のSteamユーザーが“ふたたび”増加傾向。PCゲーム文化の浸透気配つづく
ValveはSteamのハードウェア&ソフトウェア調査2022年8月分を公開した。その中で、興味深い統計データが浮上しているようだ。日本語ユーザー数が、“ふたたび”顕著な増加傾向を見せている。
同レポートは、Valveが毎月公開している、Steamユーザーを分析対象とした調査結果だ。調査に同意したSteamユーザーたちの端末の各種スペックや使用OSのほか、プレイ環境についても広く情報が集められている。
そうした統計データのひとつには「言語」の項目が存在する。ユーザーがSteamをどの言語設定で利用しているかという指標だ。もちろん、言語設定が必ずしもユーザーの国籍や地域と同一とは限らない。しかし、大まかな各地域ユーザーの趨勢を反映しているとは考えられるだろう。そして、日本語は今年に入ってやや目立つ動きを見せている言語のひとつなのだ。
まず、今年前半の調査データにおいて、Steam日本語ユーザー数は大幅増加を見せていた(関連記事)。長らくSteam全体でも1%前後にとどまっていた日本語ユーザー数は、2020年頃からやや増加傾向に。2022年3月には2.34%となり、同年5月には2.73%に到達。日本国内でのSteam浸透さえ感じさせる、大幅な躍進を見せていたわけだ。この際には、全言語中第6位に、日本語が食い込んでいた。
しかしSteam日本語ユーザー割合は、同年6月/7月のデータでは減少に転じ、1.93%と低下していた。ところが、8月のデータではまたふたたび盛り返し、全言語中第8位となる2.45%を記録しているのだ。数字としては些細な変化にも見えるものの、Steamのピーク時同時接続ユーザー数は今年4月には3000万人に迫っている(SteamDB)。また、8月中も毎日ピーク時には約2600万人が接続しており、そのうちの2.45%といえば約52万人だ。全体ユーザーという母数が大きいだけに、些細な割合の増加でも大きな変化と捉えられるわけだ。なお、必ずしも全ユーザーがSteamにデータを提供してるわけではないため、以上は概算となる点は留意されたい。
しかし、なぜ8月に入りSteam日本語ユーザー割合がまた伸びを見せたのだろうか。推測できる理由としてはまず、引き続き日本語対応タイトルが増加していることや、日本国内ユーザーの注目度も高い作品のリリースがあったことが挙げられるだろう。たとえば、東方Project新作『バレットフィリア達の闇市場 〜 100th Black Market.』のリリースや、好調な同時接続プレイヤー数を記録したSteam版『SDガンダム バトルアライアンス』リリースなどは8月の出来事である。
ほかに考えられる理由としては、PS5の入手困難を受けて、PCでのゲームプレイが代わりの選択肢となっている可能性もあるだろう。たとえば、8月25日にはPS5定価引き上げ発表があった(関連記事)。その際には、国内Twitter上で「Steam」などのワードがトレンド入り。PS5の代替プラットフォームとしてPCゲームをあげるユーザーも散見され、Steamが国内ユーザーに意識されていることを示す一幕となっていた。また、最近SIEは、PSプラットフォーム作品のPC向け展開も盛んに実施。8月12日には『Marvel’s Spider-Man Remastered』がSteam含むPC向けにリリースされ人気を博している。
そして8月はじめには、Valve公式携帯型PCゲーム機である、Steam Deckの日本国内予約が開始されている(関連記事)。SNS上などでは、同機についてコンソール機ともPCとも違う、第3の選択肢として期待を託す国内ユーザーの声も散見される。そうしたユーザーが事前にSteamに触れている可能性もあるだろう。あるいはSteam Deckの周知が、国内向けのSteam自体のマーケティングにも繋がっているのかもしれない。
興味深いのは、8月のデータ統計においてはいわゆる“低スペック”の増加傾向が見られる点だ。たとえば、Windows PCに限っても、システムメモリ4GB/8GBのユーザーがそれぞれ約1.2%と顕著に増加。VRAMやストレージ容量などのスペックについても、やや控えめの端末によるSteam利用が増えている傾向だ。最近では、『Vampire Survivors』などの比較的動作が軽量なヒット作品も思い当たる。幅広いスペック層のユーザーも参入しやすくなっているのだろう。また、Linuxユーザーのデータを見てみると、Steam Deckとおぼしスペックのハードウェア利用率が軒並み増加。海外ではSteam Deckユーザー人口が着々と増えている様子が見受けられる。
いずれにせよ、Steamの利用に限らずPCゲームを遊ぶ文化が、引き続き日本のゲーマーに向けて浸透してきているのは間違いないだろう。そして、インディー作品含む海外ゲームの日本語対応や、国内メーカー作品のSteamリリースも増加傾向にある。こうした日本向語需要と供給が拡大していけば、さらに国内ユーザーにとって世界のゲームが遊びやすくなっていくことだろう。今後実施されるSteam Deckの日本国内出荷開始も、その後押しとなりそうだ。
※ The English version of this article is available here