国内ゲーム会社カイロソフト、中国パブリッシャーLeiting Games と提携。契約問題から一転、新販売元と再出発

『まんが一本道〆』
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国内デベロッパーのカイロソフトは10月22日、中国の深圳雷霆消息技術有限公司(雷霆游戏/Leiting Games)との提携を発表した。カイロソフトは先ごろ、別の中国パブリッシャーとの問題により中国展開に支障をきたす状態にあった。今回の新たな提携により、同スタジオは中国にて“再出発”する運びだ。
 

 
カイロソフトは1996年創業の国内ゲームデベロッパーだ。同スタジオはかつてWindows向けゲーム会社運営シム『ゲーム発展途上国ⅡDX』などで好評を博し、現在はモバイルおよびコンソール向けにシミュレーションゲームを多数展開している。代表作として売れっ子漫画家を目指す『まんが一本道〆』やゲーム開発会社経営シム『ゲーム発展国++』などがあり、堅実なゲームづくりで長きに渡りファンに愛されているスタジオだ。

カイロソフトは国内のみならず、英語版など海外向けにも自社タイトルを展開している。グローバル展開の一環として、同スタジオは2017年に中国のゲーム企業である北京识君互娱网络科技有限公司(北京識君娯楽ネットワーク会社、以下識君)と契約を結び、中国国内展開にも乗り出していた。しかし、識君との提携に問題が発生し、中国向けの新作リリースは停滞。既存作品についても同国でのダウンロードが不可能な状態となっていた。そして10月16日には、カイロソフトが識君の契約違反を訴える公開状を中国国内ユーザーに向けて発表している(関連記事)。

上述の公開状にてカイロソフトは、別の信頼に足る中国国内パブリッシャーとの提携の上で、同国展開を再スタートする意向を示していた。そして今回、新たにLeiting Gamesと提携しての中国展開再出発が発表されたのだ。
 

『ゲーム発展国++』

 
提携先となるLeiting Gamesは、アモイ吉比特網絡技術股份有限公司(G-Bits)を親会社に持つ中国の大手パブリッシャーだ。同社はモバイルおよびPCゲームを手がけており、『ハードコア・メカ』や『HAAK』などSteamにて堅実な評価を得るゲームを「ライトニングゲームス」レーベルのもとで送り出している。また、Leiting Gamesは日本の国産人気RPG『Elona』のモバイル版である『Elona Mobile』の運営も担当している。2019年には同社CEOのJames Zhai氏が同作について日本国内メディアのインタビューに答え、日本のゲームを中国ユーザーに届けたい意向を伝えていた(4Gamer.net)。

なお、Leiting Gamesの日本支社については、2020年末に解散してしまっている。しかし、日本国産ゲーム輸入への意思は途絶えていなかったようだ。Leiting Games公式サイト内には、カイロソフトの特設ページが開設されるとともに、今回の提携についての詳細が投稿されている。同投稿では、今回の提携を決めた理由として、カイロソフトとLeiting Gamesの「ユーザー第一」の姿勢が呼応し、カイロソフトとしても良い印象を受けたためだとしている。また、カイロソフト代表取締役である臼井和之氏による、中国ユーザー向けの声明動画も公開された。動画では同氏がマスコットキャラ「カイロくん」の陰に隠れつつ、今回の提携は何度も中国に渡ってLeiting Gamesと話し合いをもった上での決断だと説明。中国国内ユーザーへの感謝の意を述べている。
 

 
カイロソフトが現地パブリッシャーとの問題に直面しながらも、別のパブリッシャーとの契約を目指した背景には、中国ゲーム市場の特殊な状況があると見られる。現在同国では、有料ゲームの配信にあたっては政府からゲームライセンスこと「版号」を受ける必要がある。 版号を持たないタイトルは厳しい取り締まりの対象となるのだ(関連記事)。つまり、版号取得という困難なプロセスを通過して中国国内展開するためには、現地パブリッシャーの力を借りざるを得ないという事情がある。

それでもカイロソフトが再出発のために邁進した背景には、中国ゲーム市場の大きさもさることながら、同国カイロソフトファンからの強い支持もあったのだろう。前述の識君との契約問題においては、中国ゲームプラットフォームTapTapなどで、多数の現地ファンがカイロソフトへのサポートの意思と識君への批難を投稿していた。また、次回作を待望する声もあり、現地ファンの根強さを示していた。新たなパブリッシャーと提携し、中国市場再出発を決めたカイロソフト。中国でも愛される同スタジオのゲームが、今後は安定して現地ファンの手に届くことを期待したい。


【UPDATE 2021/10/27 15:53】記事冒頭の日付を修正。




※ The English version of this article is available here

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