中国では『スーパーマリオ』の「POWブロック」も自主規制を強いられる。中国のゲームコンテンツ、検閲事情まとめ

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昨年12月10日、中国でようやく正規版Nintendo Switchが発売された。ただし、ゲーム機と同時に発売されたNintendo Switch向けソフトは、『New スーパーマリオブラザーズ U デラックス』のみだった(今年の3月16日にようやく2つ目のゲーム『マリオカート8 デラックス』が発売された)。このゲームソフトの内容は、国際版とほとんど同じだったが、少しながらゲーム内アイテムの仕様が違ったようだ。
【UPDATE 2020/4/20 9:00】
記事タイトルを「自主規制される」から「自主規制を強いられる」へと変更

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中国版のPOWブロックは、英字の「POW」ではなく意味不明の模様になっている。その原因については、正式に発表されていないが、筆者が推測するに、おそらく「中国で発売されるすべての正規版のゲームについて、英字などの外国語の使用を禁じる」という政府からの要求が原因だ。

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中国では、ゲームに限らずすべてのコンテンツ(書籍、映画、テレビ番組など)を正式に販売・運営するためには、政府からの審査を受け、ライセンスを獲得しなければならない。この審査は、主に中国放送テレビ総局(中国語:国家广播电视总局)で管理し、執り行われている。また、政府機関からのコンテンツの審査は厳しい上、不安定だ。実際、2018年3月29日から2018年12月19日の間、ゲームを審査しライセンスを発行する政府部門が改編されたことが原因で、事前通知や予告もなく、一年近くの間ゲームライセンスの発行が停止。中国のゲーム産業に莫大な損失をもたらした(関連記事)。多くのゲーム企業は、ライセンス審査が停止して半年がたったところ、ようやく発行の停止に気づいたという。

文化的コンテンツすべてが、中国政府の検閲下に置かれていることが原因で、中国でコンテンツビジネスを展開するには、政治という大きなリスクを負わなければならない。ゲームの場合、たとえば海外のゲームを輸入し、運営もしくは発売するためには、審査に提出し、そして正式な手続きをとる必要がある。このプロセスには、長い時間がかかる。ゆえに中国では、海外ゲームの正式版の多くは、他国より数年遅れて発売されることがほとんどだ。たとえば最近ビリビリを代理店として、ようやく中国での運営が開始された『プリンセスコネクト!Re:Dive』は、日本では2018年にサービス開始されたゲームだ。

中国版『プリンセスコネクト!Re:Dive』が今年の4月17日からようやく運営され始めた。時間がかかった原因はやはり、ゲームライセンス。ちなみに、世界的に大人気の『フォートナイト』『Apex Legends』も、テンセントが代理をしているが、未だにゲームライセンスを獲得していない。

また、政府はゲームに対して内容の審査を行うほか、年間ライセンスの発行数を減らすなど、いろいろと厳しく規定している。そのほか中国企業がゲーム内で「ゲーム中毒防止システム」を導入するケースも見られる(関連記事)。

さて、中国政府によるゲームの審査の基準といえば、繰り返しになるが、極めて曖昧で時々不条理である。基本的には暴力、性的なもの、中国政府を批判するもの、宗教、ギャンブルなどはご法度。それ以外には、ネガティブな内容、青少年の健康に害をもたらしうると判断された場合も、ゲーム会社が内容を変更せざるを得ない。

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上記のような大まかな規定の他に、政府の政策および社会の体制などさまざまな要素が原因で、他にも細かい規定がいくつもある。たとえばこの記事の冒頭に挙げられた「ゲーム内での英字使用を禁ずる」という規定。この規定は、政府から正式に出されたものではなく、ゲーム会社がライセンス獲得に向けて手続きをする際、政府からコメントされたものだ。後日、政府からの正式な発表があり、そちらで「原則として、必要ない英文などは、すべて中国語簡体字にするべき」と定められた。

当時、中国のゲーム会社が、政府からゲーム内英文を変更するように命じられた例がいくつかある。たとえば下記のように、「Level Up!」などを中国語に変更するように命じられていた。

Image Credit : Mobawan

また政府は、ゲームでよく使われる「HP」「SP」「ATK」などの英文字も、改善させようと働きかけた。これをうけ、中国のゲーム会社が慌ててゲームをアップデートし、ゲーム内用語を改善するとした。

当時のニュースを受け、「ポーカーゲームもこういう風にローカライズするべき」と揶揄したユーザーによる画像。 Image Credit : 凤凰网游戏_凤凰网

また、2019年4月22日、長い間止まっていたゲームライセンス審査が再開される際、政府からまた新たな「注文」がだされた。「ゲーム内では、いかなる色の血も出すべきではない、そして死体はできる限りはやく消えるべき」。この規定を受けて、中国で『平和エリート』というタイトルでようやく運営を始めた『PUBG Mobile』は、ゲーム内で倒されたプレイヤーは倒れて死ぬのではなく、その場で座り込んで“手を振る”仕様になっている(関連記事)。

しかし、上記のようなルールも、厳しく守られ続けるわけではない。現に中国版の『PUBG Mobile』(『平和エリート』)では、上記のような可笑しいシステムはすでに変更されている。また、新たに発売されたライセンス獲得済みのゲームの中には、多少英文が残っているものもある。

今年新たに発売されたとあるゲームでは、「SSR」や「Lv」といった英文表記が使われている。

実は多くの場合、政府による審査よりも、ゲーム会社の自己規制のほうが厳しいのだ。なぜなら、政府の審査に落ちると、改正を命じられてから、また審査のプロセスが(最初からではないが)始まるからである。その間の時間と金銭の損失は膨大。ゆえに、ライセンスの審査が長引くことを避けるために、あえて厳しく自己規制するケースも多い(関連記事)。

『マリオカート8 デラックス』では、ゲーム内テキストは多くが中国語であるが「DK」などテクスチャレベルのデザインはそのままだ。

最初の『New スーパーマリオブラザーズ U デラックス』の話に戻ろう。このタイトルは中国市場に向けて正式に発売する予定だった最初のゲームだ。このゲームの内容は極めて家庭的だが、慎重を期したのだろう。それゆえ上記のように、最大限に政府の要求を守った仕様になったと、筆者は推測する。またもう一つの可能性としては、このタイトルが審査に出された当時は、政府から「英字を出すな」という要求が出されてから間もない時期だったのかもしれない。そして、当時の政府のアドバイスを受け入れて、結果的に意味不明な模様になったのではないだろうか。あくまでも推測にすぎず、実際の原因はわからないままだ。

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