『ハースストーン』カードアート規制において「中国の影響」が騒がれる。中国規制による複数カードゲームの絵柄変更が背景にあり

Blizzard Entertainmentが開発する人気対戦カードゲーム『ハースストーン』にて、新たな拡張「突撃!探検同盟」が8月7日にリリースされる。『ハースストーン』は、2014年春にリリースされて以来、そのゲーム性の明快さ、戦術の豊かさ、そして同社の人気シリーズ『ウォークラフト』の世界観を引き継いている点で人気を獲得。eスポーツ展開もされており、世界中でプレイされている。そんな『ハースストーン』であるが、今回おこなわれたアップデートがファンの間で話題となっている。

話題の中心となっているのは、8つのカードアートの更新だ。アート更新につれて、2つのカードのタイトルも変更されている。ファンの間で、今回の変更は不評となっているようだ。

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変更されたカードアート。詳しくはこちらで確認できる。

RedditのこちらのThreadにて、変更されたアートの変更前とその後の比較が確認できる。よく見ればわかるが、変更後のアートの多くは、暴力や血の表現、露出度がマイルドになっている。たとえば「サキュバス」というカードは、サディスティックなお姉さんからモンスターに変更され、タイトルも「フェルストーカー」に改名された。「腹裂き」の絵は、もともとあった血の表現が消されている。「噛み付き」も、噛み付き血が流れているアートから、噛みつき前のアートになっている。

アップデート内容が発表された7月1日には、Blizzardはカードアート変更の原因について言及しなかった。この変更内容に納得できないファンが「中国による検閲の影響ではないか」と憶測し始めたのだ。要は、中国版の検閲された内容がグローバルに影響が及び、今回の変更があったと解釈し始めた。実際のところ、中国国内で正規版として発売されたゲームのほとんどが、審査に通るために何らかの変更を施されるよう命じられている。『ハースストーン』の中国版もそのひとつである。しかし、中国版にあった内容が、グローバルバージョンに必ずしも影響を及ぼすとは限らない。また『ハースストーン』のカードアートの変更も、過去に何回もあったことだ。“それらしい”理由として、中国からの影響が指摘されているのだろう。

今年2月ごろ変更があったヒーローの一人のアート(画像左:変更前、画像右:変更後)。谷間の部分にサラシが巻かれている。当時もこの変更は、中国の影響ではないかと話題になった。
中国版の『ハースストーン』は、暴力、性的、血の表現が一切見受けられない仕様になっている。
2016年には、中国正規版が発売された『ファイナルファンタジー15』も、画像左→右のように表現変更

この議論を受け、Blizzard本社に属する、『ハースストーン』のリード・ミッション・デザイナーDave Kosak氏が、海外メディアPC Gamerのインタビューを受け、上記の憶測について明確に否定した。氏は、今回のカードアートの変更は、すべてのカードを今のスタンダードに合わせた結果であり、ゲームのレーティング、規制などが原因ではないとしている。

開発スタッフは否定しているものの、今回の変更にファンは納得がいかないようだ。不満がインターネットSNSに溢れ出し、カードのアートを中国では“タブー”とされている、くまのプーさんに変更するコラージュが流行し始めた。中国の習近平国家主席は、2013年にオバマ大統領と共に歩いていた画像が「くまのプーさんとティガーが歩いているようだ」と比喩されたことから、国内では侮辱ともとれるこの「くまのプーさん」が禁句となっている。タブーのくまのプーさんをアートに登場させることで、規制を皮肉っているわけだ。

Redditユーザーfemapu氏は「簡単なことだ。子供に血を見せるのは不適切だ。グミを使ったらどうか?」と『ハースストーン』のアートを揶揄した。
Redditより

デザイナーが否定したことも含め、中国の影響があったという説はまだ論拠を欠いている。Blizzardが開発したゲームの中国国内正規版のすべて(『ウォークラフト』シリーズ、『ディアブロ』シリーズ、『スタークラフト』シリーズ、『オーバーウォッチ』など)は、中国の大手会社ネットイースがパブリッシング、運営、ローカライゼーションをしている。中国版のBattle.netも、国際バージョンと共通しておらず、中国国内のユーザーとしか対戦できない。中国向けにゲームを発売するにあたっては、法律などの規定により中国仕様にならざるを得ないが、この変更が米国会社であるBlizzardに影響を及ぼし、そして国際バージョンにも反映されるとは考えにくい。中国政府も、名目上では中国以外で流通しているコンテンツをコントロールできるわけではない。昨今ではゲーム内の表現についてはセンシティブにならざるを得ず、そうした点を踏まえてグローバル版に変更が加えたと考えるのが自然だろう。

重ねて強調するが、中国国内においてはゲームの規制は日常茶飯事である。この規制は、中国国内のゲームとて例外ではない。中国のゲーム市場では法律などの原因で、ほとんどの海外ゲームは中国正規版を発売する場合、中国会社とコラボして中国会社の名義でゲームをリリースせざるを得ない。そして、ほとんどの場合、リリースされるゲームが何らかの規制を受ける。対戦カードゲームの場合、例えばCygamesの『シャドウバース』の中国版『影之詩』も、以下のようにさまざまなところに変更があった。

上の方は中国版仕様。下は国際版仕様。ドクロのエフェクトが消えている
上の方は中国版仕様。下は国際版仕様。こちらもドクロが消えている

『ウィッチャー3』から独立したカードゲーム『グウェント』も影響を受けている。

右側が中国版。ロマンス要素が消えており、アートが全く異なっている
去年から規制が一気に厳しくなった。タトゥーも規制対象
牛の死体も規制対象なのだ
おまけ。画像は人気ゲーム『Fate/Grand Order(FGO)』の人気キャラクター源頼光の中国版アート。このゲームも、何回もカードアートの変更を容儀なくされた

また、中国政府のゲーム規制要求は、具体的な基準がないことも特徴。ざっくりと暴力、性的、国家安全を害する内容を禁ずると規定するのみで、実際「裁決」する場合も極めて任意的である。似たような内容が時には可であるが、のちに不可になる場合もある。よって、審査を通りゲームを早めにリリースするためにも、必要以上に修正(自主規制)されるのもよくあることだ。

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