中国テンセントが、ゲームの「顔認証システム」を導入開始。認証しない場合、12歳以下と識別されゲームが「1日1時間」しか遊べなくなる

今月11月28日、中国会社テンセントが自社の人気ゲーム『王者栄耀』(国内では『伝説対決-Arena of Valor-』)に顔認証システムを導入すると発表した。この発表によると、顔認証は身分登録上は成年でありながら、ゲーム内の行為が未成年レベルであると認識されたユーザーに向けて行われるという。その際、顔認証を拒むか、または認証された情報と公安の実名情報が一致しない場合、一律で12歳以下の児童であると認定され、1日に1時間しかゲームがプレイできなくなるようだ。

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年齢認証に顔認証をプラス

この顔認証は、まず『王者栄耀』に導入される。テンセントは、こういったゲーム時間を未成年向けに制限するシステムを「テンセント健康システム」(中国語:腾讯健康系统)と名付けている。このシステムは、ほかのテンセント傘下のゲームにも導入される予定であり、2019年内にテンセントのすべてのゲーム(モバイル+PC)に実装されることになるだろう。

「テンセント健康システム」は、未成年の健康を守るという、社会的な義務を果たすために、テンセントが独自に開発したシステムである。このシステムが実装されたゲームにおいては、すべてのユーザーが身分証明書(一般的には中国の国民カード)を提出することを要求される。提出された個人情報は、自動的に公安のデータシステム(公安权威数据平台)と照合し、ユーザーの年齢が認定される。12歳以下の未成年ユーザーは、上記のように1日1時間しか遊べなくなり、12歳以上18歳以下の未成年は1日2時間しか遊べなくなるという。両方とも21時から翌日8時までの時間帯は遊べない。

このシステムは、ゲームにおいて「史上最も厳格」な認証制度であるとみなしても問題なさそうだ。ゲームをプレイするためだけに、すべてのユーザーに強制的な実名認証を求めるだけではなく、個人情報を中国政府の公安データと照合して、「合格」した人々だけがゲームを遊ぶことが許される。本来、上記の公安データシステムは金融、政治、個人信用などの分野でしか使われず、きわめて重要かつシリアスなものである。意見としては少数ながら、テンセントが自発的にこのようなシステムをゲームに導入することは、ものすごく大げさかつ荒唐無稽な行動であるという声が、中国のインターネット上でも散見される。

中国ゲーム業界の有名人が「国の恥」であるとWeiboに反対の声を上げた。またそのすぐ下にあるコメントでは、「(子供の)親はテンセントを感謝するよ」と記されている。

一方で、多くのユーザーが、今回の顔認証システムの別の側面に注目していた。『王者栄耀』は『LoL』ライクな協力プレイ型のゲームであるがゆえ、チームで負けると他人を罵るというケースがしばしば目撃される。『王者栄耀』では、ゲームが下手なユーザーを「小学生」と揶揄することが定番であり、今回テンセントがシステムを導入することにあたって、「ようやく小学生がゲーム内からいなくなる」という賛成の声も見られる。

また、インターネット上では子供を持つ親からの賛成のコメントもよく見かける。しかし、「テンセントは良いことをした」という顔認証に対する肯定的な意見に対し、「本来親が果たせなければいけない責務をゲーム会社に押し付けるな」という反発の声もある。それ以外にも、個人情報の漏洩を危惧するユーザーも少なくない。

 

留守児童に言及

今回の発表で興味深いのは、「留守児童」に言及したことである。「留守児童」は、親が出稼ぎに出たために実家に残された、主に祖父母と暮らす子供のことである。中国の農村部では、若い人々は北京、上海などの大都市に出稼ぎすることがほとんどである。中国の戸籍制度が原因で、子供は生まれた故郷でしか福祉施設のサービスや義務教育を受けられないため、出稼ぎに出るカップルが結婚し、子供を出産した場合、子供を実家に送ることを余儀なくされる。留守児童は、年に一度しか両親に会えないことがほとんどである。モバイルゲームは、スポーツ、図書館などの施設がほとんどない農村部で暮らす子供達にとっての数少ないエンターテイメント。また祖父母との交流が少ないというのも、ゲームに長時間没頭する原因である。

実際、顔認証が導入される前から、テンセントはすでにゲーム内「健康システム」を導入していた。当時は身分証明書を提出し、公安データと照合するだけであったが、のちに顔認証も加わった。なぜなら、未成年が成人家族の身分証明書を使って認証するからである。しかし、今後は顔認証の導入によって、「留守児童」たちもゲーム時間を制限されるのだろう。そうした経緯もあり、テンセントは「留守児童」に対して3つの特別な措置を施した。「60歳以上」「未成年ユーザーとみなされる行為を行った」かつ「最近1週間に長時間ゲームをしたユーザー」に注意を払っているとのことだ。

 

規制による負担を受ける会社とユーザー

またここで強調したいのは、近年、中国ゲーム業界が高度発展を果たした一方で、中国政府からの規制も強くなってきているという一面があることだ。テンセントが自社のゲーム配信プラットフォームWeGameにて配信予定であった『モンスタハンター:ワールド』の中国版が、直前に配信中止となったことからも、その規制の強さが垣間見えるだろう(関連記事)。政府からの規制が厳しいだけでなく、いつ、どこ、どのように規制がくだされるのか予測できない。この「不安要素」が常に中国のゲーム企業にあり、「規制が厳しい」の本当の意味もここにあるだろう。最近、中国製のゲームは徐々に国外から遊べなくなりつつあることも発覚している(関連記事)。今回の公安部とのデータ連結の件と合わせて、中国ゲーム企業の「自己規制の厳しさ」も感じられるだろう。

実際、中国国内のほぼすべてのゲームを遊ぶには、身分証明書などでの実名認証が義務付けられている。認証しないユーザーは課金できないか、ゲームにログインできなくなる。しかし、本当に本人かどうか、その目的を果たせるかどうか、またはプライバシーの侵害になるかどうか、民間企業がその働きにふさわしいかどうかは、すべて不明瞭である。実名認証ならびに顔認証は、ゲーム会社側にもユーザー側にも莫大な費用、負担とリスクをかけていると言えるだろう。

中国版『FGO』は、実名認証しないと遊ぶことができない。

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