ハクスラARPG『Wolcen: Lords of Mayhem』改善計画により「第二の夜明け」を目指す。問題山積みの正式リリースを受けて、テスト工程やサーバーの強化へ


フランスのゲームスタジオWolcen Studioは3月13日、Steamで販売中のアクションRPG『Wolcen: Lords of Mayhem』(以下、Wolcen)について、今後の計画「Second Dawn」を発表した。2016年からの早期アクセス販売を経て2020年2月に正式リリースを迎えた同作は、売り上げ100万本を超えるヒット作に。インフルエンサーを使った宣伝活動も奏功し、数字上は好調なスタートを切った。

しかしながらローンチ時の同作には重大な不具合が多く、ゲームバランスも崩壊気味。ゲームの品質としては課題山積みの状態であった。Wolcen Studioは3月上旬、物語の続きとなるACT4の開発を遅らせ、まずはバグ修正と品質改善に注力すると発表(関連記事)。そしてこのたび、ゲームが「第二の夜明けを」を迎えるために必要な改善項目が示された形となる。続く4か月の間は、そうしたゲームの改善のほか、スタッフ増員やインフラ強化に力が注がれる。

まず開発元は、同作の正式リリース時に発生した長期的なサーバートラブルに言及。『Wolcen』にはマルチプレイ対応のオンラインモードと、ソロプレイ限定のオフラインモードがあり、前者は発売当初、アクセス過多が原因で数日間プレイ不可となっていた。問題を解消するにあたっては、サーバーやデータベースへの負荷軽減のため、ゲームコードを大幅に書き直す必要があったという。そしてまだやるべきことが残っているとのこと。サーバーのレスポンス、カバー範囲、キャパシティ、効率の向上方法についても、調査が進められている。

また4年近い早期アクセス期間を設けながら、問題だらけの状態でリリースを迎えたことを受け、テストプロセスの強化を図るという。現在Wolcen Studioは、より早く問題を探知してゲームの新バージョンが配信される前に修正できるよう、外部のQAチームと連携しながら動いているとのこと。次のアップデート1.0.10には早速、大規模なテストを必要とする変更が含まれることから、配信日を遅らせることにしたと説明している。

またWolcen Studioは小規模のスタジオであり、アルファ/ベータ期間中のコミュニティサポート担当者は1人だけであった。だが売り上げ100万本を記録したことからもわかるように、コミュニティ人口は、たった1人で担当できる規模を超えている。それがコミュニケーション停滞を生む要因のひとつだったようだ。コミュニティと緊密な関係性を築けるよう、現在は担当者の増員に向けて動いている最中だという。開発陣の言葉がコミュニティ全体に行き渡るよう、Discord上でのコミュニケーションをやめて、Redditや公式フォーラムに注力することも検討しているとのこと。近年ではDiscord上でコミュニティを形成しようと試みるデベロッパーも多い中、規模拡大に伴い、より広くリーチすべく情報発信の場をDiscord外へと移そうと考えているというのは、興味深い事例だろう。

ゲーム内容の改善としては、ACT3のイベントをより魅力的にすべく、多様性やペースの向上を目指しているという。ACT3は現時点での物語のクライマックスに該当しながら、やや盛り上がりに欠ける。そうした点が改善されるのだろう。単調気味なマップに多様性をもたらすため、ビジュアル面での対応を予定。新しい敵種・同系異種の追加も目指されている。

キャラクターのバランス調整の方針としては、強スキルの弱体化は控えめに抑えつつ、人気のないスキルを強化していくという。次回のアップデート1.0.10から、調整の一部が適用されていくとのことだ。とはいえ、2月に弱体化した「Bleeding Edge」のように、あまりにも強力すぎるスキルやアイテム、パッシブスキルの効果には干渉していくと述べている。Bleeding Edgeは手軽に高火力を出せるスキル/ビルドとして、ローンチ当初話題となっていた。

またゲームプレイに関わる部分では、左クリックの割り当て変更オプションを検討しているとう。同作ではキャラクターの「移動/攻撃」が左クリックに割り当てられており、移動しようと思ったら攻撃してしまった、あるいは攻撃しようと思ったら移動してしまったといった誤操作が起きやすい。移動/攻撃とは別項目として「移動」「攻撃」機能を個別キーに割り振ることは可能だが、マウスの左クリックだけは移動/攻撃から変更できない。左クリックの割り当て変更(リバインド)はプレイヤーからの要望が多かったようで、今回の発表文でも強調されている。

そのほか「Gate of Fates」(本作のパッシブ・スキルツリー)の検索機能、敵にかけた状態異常のスタック数表示、新しいクエスト報酬受け取りシステム(現状、戦闘中であっても画面中央に報酬受け取り用のポップアップが表示されるため、邪魔になる場合がある)などが、ゲーム体験の改善予定点として挙げられている。

多くの問題に直面した『Wolcen』であるが、今回の発表文によると、プレイヤーからはゲームに関するポジティブな意見もたくさん寄せられたという(公式サイト)。開発陣は、多くのプレイヤーに楽しんでもらえるゲームにできたことを誇りに思うと述べ、そうしたゲームの成功がスタジオの成長、そして何より、コミュニティ全体の幸福度を上げるために必要な決断を下すことを可能にしてくれると伝えた。第二の夜明けによる再発進に向けて、開発陣の地道な取り組みが続く。夜明けを迎えたあとも、リーグ制の運用、定期的なコンテンツの無料追加を含む長期サポートが予定されている。

ゲームの発売時に完成されていない、もしくはプレイヤーが求めている内容からずれていても、後から仕上げ直したり、軌道修正したりできるというのは、オンラインでのアップデート配信が浸透した現代ゲームの長所でもある。製品である以上は当然、正式リリース時点で完成品であることが求められるが、現実問題としてゲームの「2.0」「オーバーホール」「再ローンチ」といった仕切り直しを耳にする機会は近年増えている。

現在大規模改修中の『Anthem』、「ウェイストランダーズ」アップデートによりプレイヤーからの要望が多かった人間NPCを導入する『Fallout 76』、先日ゲームシステムを大幅刷新した『ディビジョン2』や今月刷新予定の『ゴーストリコン ブレイクポイント』。長期の沈黙期間を経て再ローンチを果たした非対称マルチプレイゲームの『Deathgarden』や『Last Year』など、ゲームの仕切り直し事例は枚挙にいとまがない。なおYouTubeチャンネルのCleanprincegamingは、こうした現象をゲームの「2.0 問題」として取り上げている(Cleanprincegaming動画)。

開発規模の大きいゲーム、とくに長期運営を想定したライブサービス型のゲームにおいては、そうした傾向が得に顕著。かといって仕切り直しが必ずしもうまくいくとは限らない。売り上げ100万本突破によりヒット作の仲間入りを果たした『Wolcen』は、第二の夜明けをプレイヤーの喜びの声とともに迎えることができるだろうか。