『アノマリス』メインコンポーザー・北村友香氏に訊く。キャラデザMON氏のイラストに一目惚れして参加、異界化した日本を描くために“日常感”のある音色をヒントに制作

北村友香氏に、本作の音楽を手がけることになった経緯や「昭和レトロ×リミナルスペース×異常現象」という世界観を音楽で表現するうえで意識したこと、メインテーマの制作秘話について話を訊いた。

フリューが手がける完全新作『アノマリス / ANOMALITH(以下、アノマリス)』は、2026年10月29日に発売予定のサバイバルTPSゲーム。昭和の日本を思わせる世界を舞台に、異常現象によって生まれた「異界」を探索し、異形の存在と戦いながら生還を目指していく。メインコンポーザーを担当するのは、『DARK SOULS III』『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』『ELDEN RING』など、数々のゲーム音楽を手がけてきた北村友香氏だ。

発売に先駆け、10月8日にはPS5およびNintendo Switch 2向け体験版の配信も開始。今回は体験版の配信に合わせ、『アノマリス』に携わるクリエイター3名へのメールインタビューの様子を公開したい。本稿では北村氏に、本作の音楽を手がけることになった経緯や「昭和レトロ×リミナルスペース×異常現象」という世界観を音楽で表現するうえで意識したこと、メインテーマの制作秘話について話を訊いた。

MON氏のイラストに一目惚れして参加

――本作の音楽を担当されることになった経緯と、オファーを受けた際の印象を教えてください。これまで手がけられてきたダークファンタジー作品とは異なるテイストのタイトルですが、どのような点に魅力を感じられましたか?

北村友香(以下、北村)氏:
最初のきっかけは、MONさんのイラストに一目惚れしたことでした。コンセプトアートが本当に素晴らしく、キャラクターにも強く惹かれました。また日本を舞台にしながら、「異界」という非日常的なものが入り込んでくる世界観も興味深く感じました。自分にとって見覚えのある日本の風景が、少しずつ違うものへと変貌していく、そのビジュアルや世界観を見て、この中にどんな音楽が存在するのだろう、と想像を掻き立てられワクワクしたことを覚えています。

――本作では昭和レトロな日本と、リミナルスペースを思わせる「異界」、そして異常現象による不気味さが描かれます。これらの要素を音楽で表現するうえで、どのようなことを意識されましたか? 本作全体のサウンドデザインにおけるコンセプトも教えてください。

北村氏:
フィールドや戦闘の音楽では、音楽そのものが主張しすぎないことを意識しています。「この先には何が待ち受けているのだろう」という感覚を邪魔せず、プレイヤーを取り巻く空気の一部として存在するような音楽にしたいと思っていました。

また異界化した日本を描くうえでは、私自身も日本で暮らす中で身体に染みついているような、「見覚えのある景色の中の音」を意識しています。例えば、商店街のスピーカーから流れてくる音や、街中で聞こえる時報の音色、団地のどこかで水が滴っているような音。そうした日常の中にある音の記憶をヒントにしながら、音色や響きとして音楽の中に落とし込んでいきました。「この感じをどこかで知っている」と思う一方で、何かがおかしいといった、親しみと違和感が同居する感覚を楽しんでもらえたらという意図で制作していました。

「意味のない言葉や音の響き」から歌詞を作ったメインテーマ

――メインテーマでは作詞・作曲・歌唱をすべてご自身で担当されたとのことですが、制作時のエピソードや、楽曲・歌詞に込めた思いを教えてください。

北村氏:
ディレクターから楽曲のコンセプトは伺っていましたが、歌詞については自由に書かせていただきました。まずはコンセプトアートやシナリオから伝わってくるものを受け取り、そこから感じるままにメロディや楽曲の構成を作っていきました。

歌詞については、最初から意味のある言葉を書くのではなく、「ここではこういう音が響いてほしい」という感覚を頼りに、意味を持たない言葉や音の響きから作り始めてみました。その後、その響きや歌ったときの感触をできるだけ残しながら、少しずつ意味を持つ言葉へ置き換えていきました。

完成した楽曲と歌詞を共有した際、特定のキャラクターを意識して書いたわけではなかったのですが、不思議と作中のある大切なキャラクターとリンクするような仕上がりになっていたようで、喜んでいただけたことが今でも嬉しく、印象に残っています。

――探索・戦闘・拠点など、ゲーム内の各フェーズで音楽にはそれぞれどのような役割を持たせていますか? 特にサバイバルTPSならではの緊張感や、異界を探索する没入感を高めるために工夫されたことがあれば教えてください。

北村氏:
どのフェーズでも共通して大切にしたのは、音楽によってゲーム体験を説明しすぎないことです。探索では、プレイヤー自身が空間の異変に気づいていく感覚を大切にしてほしいと思っています。見慣れたはずの空間が少しずつ歪んだり、捻れたりしていき……その不気味さや「何かがおかしい」という違和感を、音色や響きの面からどう支えられるか、テストプレイで実際のマップを歩きながら試行錯誤をしました。

一方で戦闘、特にボス戦では役割が変わり、プレイヤーが戦う高揚感を引き上げられるように音楽としてもエネルギーを持たせられたら、という意図で作っています。それぞれの場面で音楽が前に出るべきなのか、あるいは一歩引くべきなのかを考えながら作りました。

『アノマリス』の世界だからこそ生まれる音

――『DARK SOULS III』『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』『ELDEN RING』など、これまで手がけられてきた作品と比較して、本作で新たに挑戦されたアプローチはありますか? 一方で、ジャンルや作品の世界観が変わっても、音楽制作において一貫して大切にされていることがあれば教えてください。

北村氏:
もちろん、自分の中で自然とよく使う音楽的な構成や楽器など、これまでの作品と共通している部分もあると思います。一方で作品が変われば、その世界に存在するべき音も変わると考えています。そのため特に音色や音楽的なアプローチについては、お気に入りの手法や癖はありますが、その作品だからこそできる新しい試みを取り入れるようにしています。一貫して大切にしているのは、自分の音楽を作品に当てはめるのではなく、まず世界観や物語を見て、「この世界にはどんな音が存在しているんだろう」と考えることです。今回も『アノマリス』の世界だからこそ、生まれる音を探しながら制作をしていきました。

――最後に、プレイヤーに特に耳を澄ませてほしい楽曲やシーンがあれば教えてください。また、音楽を通じて本作の世界をどのように感じてもらいたいと考えていますか?

北村氏:
特定の一曲というより、ぜひそれぞれのマップやボスごとの音に耳を澄ませてもらえたらと思っています。楽曲を書く際には、メロディや構成だけでなく、音色そのものにも、マップやボスを象徴するような特徴を持たせるよう意識しています。ここはどんな空気感なんだろう、ということを音楽面からも少し意識して聴いていただくと、それぞれに違った表情を感じてもらえるかもしれません。

私自身、最初にこの作品のコンセプトアートを見たとき、その世界に強く惹き込まれました。そのときに感じた魅力を、今度は音楽からも感じてもらえるものになっていると思います。ぜひ音楽と一緒に存分に『アノマリス』の世界観を体験していただけたら嬉しいです。


『アノマリス / ANOMALITH』は、PS5/Nintendo Switch 2/PC(Steam)向けに10月29日発売予定だ。

別記事では『アノマリス』シナリオライター田中ロミオ氏と、キャラクターデザインMON氏へのメールインタビューの様子も公開中。

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Yuuki Inoue
Yuuki Inoue

RPGとADVが好きなフリーのゲームライター。同人ノベルゲームは昔から追っているのでそこそこ詳しい。面白ければジャンル問わずなんでもプレイするのが信条。

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