『FF14』室内俊夫氏インタビュー。皆が知りたかった(?)プライベートなプレイ事情や吉田Pとの意外な馴れ初めも訊いた

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パッチ5.35が10月13日に公開され、ますます盛り上がりを見せる『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FF14』)。ゲーム外でもさまざまな催しや生放送を行っており、グローバルコミュニティプロデューサーである室内俊夫氏は、プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏と並んで登壇し、MCとしてマイクを握る機会の多い人物だ。


弊誌AUTOMATONでは室内氏へインタビューを行い、ゲームイベントに関わるお話のほか、室内氏の最近の『FF14』プレイ事情についてざっくばらんなお話をいただくことができた。パーソナルな事情もたくさんお伺いできたので、「モルボル」ファンにも楽しんでもらえるようなインタビューとなれば幸いである。

今回のインタビューはZoomを用いて行われた。まず驚いたのが、室内氏の背景がモルディオン監獄で、後ろにGMキャラクターが腕組みをして控えているという凝ったものだったことだ。室内氏いわくZoomにはいつもこの背景を使っているとのことで、社長との定例会議に参加する際もこの映像を写しているそうだ。

後ろのGMキャラクターはモヤ部分もしっかりと動いていた。



――まずは自己紹介をお願いいたします。

スクウェア・エニックスにてコミュニティ&サービス部という部署に所属しております、室内俊夫と申します。『FF14』ではグローバルコミュニティプロデューサーという肩書きをいただいて、主にコミュニティ運営周りを中心に担当しております。

――多岐にわたってご活躍されている室内さんですが、現在メインでなさっているのはどのようなお仕事なのでしょうか。

コミュニティ&サービス部としては、スクウェア・エニックス全体のカスタマーサポートを担当しています。ここでは『FF14』に限らず、基本的にほとんどすべてのタイトルのサポートセンター・コールセンターの役割を担っています。

また、MMORPG関連の運営をいくつか担当しておりまして、主に『FF11』『FF14』のコミュニティ運営を行っています。ここではウェブページを更新したり、SNSの投稿を行ったり、フォーラムの管理をしてプレイヤーの皆さんのフィードバックを頂いて、それを開発チームに届けたりというようなことをしています。また、ゲーム内のGMとしてカスタマーサポートや、不正対策なども行っています。

長年の経験で見えてきた、懲戒対象者に共通する特徴

画像は、第43回プロデューサーレターLIVEより


――GMサポート業務について、いわゆる“監獄案件”で印象に残っていることなどがあれば差し支えない範囲でお聞かせいただけますか?

※ 監獄案件とは
チートツールの使用や他プレイヤーへのハラスメント行為など、『FF14』の利用規約に抵触する行為をしたプレイヤーに対するGMからの呼び出し案件のこと。呼び出された先のエリア名が「モルディオン監獄」であることからプレイヤー間でこう呼ばれることが多い。ちなみにモルディオン監獄というエリア名は『FF11』のGM呼び出しエリアでも使われており、『FF14』ではその名称が引き継がれて実装されている。


印象に残っている案件にはいろいろなものがあります。個別の案件についてのお話は控えさせていただきますが、いわゆる“監獄案件”と呼ばれる、GMが関わるような懲戒処理の大半は人間関係のもつれによるものです。これまで長いこと『FF14』でゲーム内サポートを行ってきましたが、GMから注意を受けたときに改善しようとする人としない人が明確に分かれてくるなあ、と感じております。

現在は「あなたの活動は周りの方を何らかの意味で不快に陥れているので、言動を顧みてほしい」ということで指導を行うことが多いのですが、多くの場合は改善していただける一方で、それを受けて改善しようとしない人は「(GM側のポリシーがどうであろうと)どこまでならOKなのか?」と探るようなリアクションをする傾向があります。「どうしたら周りに迷惑をかけないか?」ではなく「どうすればペナルティを受けないか?」という点にフォーカスしてしまっているので、そういう方は再び同じようなトラブルを起こしやすいです。

また、「言ってくれなきゃわからない」「自分の発言のどこが暴言なんだ」というような発言をする方もいらっしゃいますが、その一連の発言の中に暴言が含まれているパターンもあったりします。

――GMに暴言を吐いてしまう、ということですか?

GMに直接暴言を吐かなかったとしても「GMにこんなことを言われた」とSNSなどで発言される際に、残念ながらその投稿に使われる言葉が乱暴であるケースもあります。また、意外に見落としがちなパターンとしては、古くで言うところの“2ちゃんねる用語”など、ネットスラングのなかで無意識に差別用語を使っていることがある点ですね。

GMからの呼び出しは自分の言動を見直す良い機会になれば、と思っています。ゲーム内での人間関係は対面でないぶん空気を感じにくいので、特に文字のコミュニケーションにおいては「相手は自分と同じ知識を持っていないし、置かれているシチュエーションや環境も違う」ということを念頭に置いてやりとりすることが大切であるとよく感じますね。

――なるほど。ここ半年ほどは新型コロナウイルスの影響もあったかと想いますが、カスタマーサポートの内容や傾向に何か変化はありましたか?

コロナ禍の中でも傾向自体は特に変わりません。しかし、プレイヤー全体のプレイ時間が増加し、新規に『FF14』を始められる方も増えたことで、比例してコミュニケーショントラブルの件数も増加しました。傾向が変わったというよりは、分母が増えただけトラブルの件数も増加した、という感じですね。

――多くのプレイヤーは監獄とは無縁で、GMに注意を受けるプレイヤーはごく僅かだと思いますが、コミュニティが大きい分、なかには大変なケースもあるのですね……。

コロナ禍の中、イベント関係は新しい様式へ

――次はイベント関係についてお話を聞かせてください。以前PLLにて2020年のファンフェスティバルの中止や検討についてお話されていましたが、リアルイベント関係について何か進展はありますか?

現在は開催方式について話し合いを続けている段階です。新型コロナウイルス感染症の影響で、すでに発表されていた巨大な会場に1万人以上の人を集めてイベントを行うようなことはできなくなりました。そのため、当初予定していたファンフェスティバルは中止という判断をさせていただきました(※)。ただ、中止にしてしまうとイベント自体が何もなくなってしまうので、ファンフェスティバルのコンセプトであった「コミュニティの皆さんと開発チームで一丸となって『FF14』を楽しもう」というコンセプトを大事にしながら、このコロナ禍であっても同じように皆さんと楽しめる方式を編み出すために議論を続けております。ご案内まではもう少しお時間をいただきたいところです。

10月9日に放送された第60回PLLでその代替として、2021年2月にオンラインイベント「新情報発表会」の開催が告知された。また、2021年5月にはファンフェスティバルのオンラインデジタル開催を検討中との発表もあり、現在は会場を選定しつつ企画を進めている段階。


――今年は14時間生放送の予定はありますか?

今年はもともと予定はありませんでした。なぜかというと、まず周年のタイミングは8月の下旬~9月の頭という、コロナ禍ではない状況ではイベント関連がとても忙しい時期で、毎回「かなりしんどいね」と言いながらやっている状況でした。加えて、今年はファンフェスティバルの開催予定もありました。そのため、今年はファンフェスティバルに集中して、14時間生放送を飛ばすか、もっと短い生放送イベントを年末あたりにやれたらいいねという話をしておりました。

しかし、今度は新型コロナウイルス感染症の影響で、あるはずだったイベントのほうがなくなってしまいました。とはいえ14時間生放送が即座に復活できるかというと、プレイヤーの皆さんこそリアルには集まりませんが、スタッフは何十人から動かさないといけないという問題があります。

では何もやらないのかというと、14時間生放送をやめてしまうつもりも我々としては毛頭ありません。ファンフェスティバルも中止となってしまったので、いつ、どういう形なら14時間生放送ができるのか、ファンフェスティバルとセットで内部協議をしているところです。遠からず14時間生放送もできるようにみんなで企画をしているところです。

10月9日に放送された第60回PLLで2021年2月に14時間生放送の開催が決定された。詳細は後日公式から告知があるようだ。


――ありがとうございます。ちなみに、吉田Pが吉P散歩のキャラクターでプライベートの時間でプレイヤーと遊んでいらっしゃるのは、先ほどお話されていた「コロナ禍であっても同じように皆さんと楽しめる方式」に近いものなのでしょうか。

吉田がいろんなところで遊んでいるのはそれとは微妙に違って、彼はかなり以前から継続的に皆さんと遊ぶ活動を行っています。どちらかというと昔からの吉P散歩の延長線上の活動というほうが近いですね。生放送となると機材のセッティングやスタッフの配置などの準備が必要ですし、時間など仕事上の制約もあります。その制約をなくして吉田がプライベートの時間で楽しんで行っているというのがご質問の部分です。出現頻度が上がったと感じられるのは、在宅期間が長くなったり連休があったりといった事情で、結果的に多くの皆さんの目に触れる機会が増えたという部分が大きいように思います。

――新しい生放送として「ハイデリン探検隊」が始まりました。放送内ではさまざまなコンテンツ紹介が行われていますが、これからの展望や予定などを教えてください。

ハイデリン探検隊が始まった背景として、我々が持っているいくつかの放送の中で「皆さんと一緒にゲームをする」という部分に特化した放送が日本ではあまりなかったという部分があります。欧米のコミュニティチームは「みんなで一緒にゲームをやろう」というコンセプトのコミュニティ放送を定期的に放送しています。日本にもコミュニティ放送自体はあったのですが、どちらかというと情報番組的な側面が強く、お知らせや情報のおさらいがメインでした。

吉P散歩は皆さんとゲームをする放送ではあるのですが、実施頻度としてはそう高い頻度でやれるものではありません。定常的に、ゲームの中でいろんなコンテンツを紹介しがてら皆さんと一緒に遊ぶ、という生放送がなかったから始めてみようとなったわけです。

画像は、第1回ハイデリン探検隊より


放送内で遊ぶのは必ずしも最新のコンテンツである必要はなく、いろいろな発見につながるようなものを選んでいます。前回は釣りをしましたが、プレイヤーの皆さんの「こんなものもあったんだ」という気づきにつながっていっていただけるようなものをやっていこうと思っています。

釣りのほかには、以前グループポーズの使い方について超入門編の内容を放送しました。次回はライトの配置などをやってみて、どのようなライティングを設定したらきれいなスクリーンショットが撮れるのかという指南などをやってみたいなと思っています。なかなかそういったところにフォーカスしてしっかりと時間をとった生放送というのはできないですからね。

メインジョブは白魔道士。タンクに手を出したのは邪な理由

――ここからは室内さん個人のお話をいろいろお聞かせください。現在の室内さんのメインジョブを教えてください。また、ご自身の得意なジョブやロールについてお聞かせください。

白魔道士をメインにやっておりますが、最近はタンクにも手を出そうと思い、暗黒騎士も始めてみました。

得意なジョブは白魔道士なのかな、と思っています。苦手というか、本当に未経験なのがDPSロールです。どうしたらいいのかわからない、といったレベルですね。

――白魔道士と暗黒騎士、それぞれ手を付けたきっかけなどはありますか?

白魔道士は、私のこれまでのMMO遍歴のなかでヒーラーをまともにやったことがなかったので『FF14』でやってみようと思ったのがきっかけです。ヒーラーの中でも白魔道士を選んだのは、やはり王道感があるからですね。それ以降ずっと白魔道士をやっています。

暗黒騎士に手を付けたきっかけは、タンクとDPSも少し触ってみたいなという気持ちがあったためです。PvPをやっているときにヒーラーよりもドンパチやっているほうが楽しいことに気付いて、タンクとDPSのレベルをPvPのみで上げたんです。それで、PvEには一切出さずにレベルキャップに届いたタンク職が暗黒騎士でした。DPSもPvPではいくつか並行してレベルは上がっている状態ですが、PvE経験はまだまだといった感じです。

いよいよ勇気を出してタンクをPvEにも出してみようかなとなったのがパッチ5.2か5.3、ここ最近ですね。現在は恐る恐るPvEのスキル回しに慣れていっているところです。

――どんなコンテンツで慣らしていますか?

基本的にコンテンツルーレット一式で慣らしています。DPSではなくタンクを引っ張り出してきたのはとても邪な理由で、ルーレットの不足ロールボーナスはタンクかヒーラーが多かったからです。ルーレットの選択画面を開いて、ボーナスが出ているほうで全部のルーレットを回る、ということが日課になっています。金策にもなりますしね。

なので、タンクでは極や零式のような高難易度コンテンツには行っていません。タンクスイッチは未経験で、次の課題ですね(笑)

パッチ5.2では現行零式に初挑戦

――白魔道士ではどれくらいのコンテンツをプレイされたのですか?

白魔道士はもともと極蛮神くらいまでのコンテンツをやっていました。ですが、パッチ5.2のときに初めて最新の零式をやるということをやりました。それが初零式ですね。


――初めての零式!どのような感想を抱きましたか?

もともとレイドに強い抵抗感があったわけではないのですが、ここまではやらなくてもいいかな、というなんとなくの線引きをしていました。今回挑戦してみたきっかけは、コロナ禍で時間ができたこともあって、普段遊んでいるメンバーで零式に手を付けてみようかとなったことです。

感想としては、とても面白かったです。とはいえ、パッチ日からガッツリやるというほどではなく、ある程度攻略法が見えてきたあたりから入るあたりで私にはちょうどいいかなと思っています。まだレイド初心者でもあるので、そのくらいの温度感で今後も取り組んでいきたいなと思っています。

――ちなみに、共鳴編で特に難しく感じたギミックはなんですか?

辛かったのは2層のガルーダフェーズで、外周に散開してから中央に強制移動させられ、その後に玉が爆発するところですね。あの玉にものすごく巻き込まれるので苦手なギミックでした。「私の画面では絶対に避けていた」ってやつですね。4層をクリアするまでの間に毎週2層も通るわけですが、あそこの事故率だけは半端なく高かったような……。

筆者も「わかります……」と頷いた2層の玉ギミック 画像は、北米コミュニティ放送「DUTY COMMENCED」より



でかい種族が好き

――次は現在の種族について教えてください。以前どこかでルガディン男性を使用されていることをお話されていたかと思いますが、それは現在も変わりませんか?

ずっとルガディン男性の姿でプレイしていましたが、現在はロスガルとの間で心揺れている状態で、行ったり来たりしています。最終的にどちらに落ち着くかはまだわからないですね。


――ルガディンもロスガルもどちらも大柄な種族ですが、そういった大きなキャラクターがお好みなのでしょうか。

そうですね、私が種族を選ぶときの基準はとにかく「でかいかどうか」の1点のみです。理由ははっきりしていて、装備がよく見えるから。MMOの私の楽しみの一つとしては格好いい武器・防具を身に付けて、たとえばレイドの武器であればいちはやくみんなに見せたい、という部分があります。せっかく格好いい装備をつけていても、ララフェルサイズではちょっと小さくないかな?というのが私の中にはあります。どうせいいものを装備しているのだったらでかく見えるものがいいなと思い、どんなMMOでも一番大きく設定できる種族を選んでいます。

真面目にギャザラーに手を付けたのは「釣りたい」と「撃ちたい」があったから

――最近のプレイングについても教えてください。直近のコンテンツで楽しかったものや印象に残ったものはありますか?

先ほどもお話しましたが、印象に残ったのは零式でしたね。私の『FF14』生活のなかでパッチ5.2ではものすごい変化がありました。ひとつは零式を現世代としてやったこと。それから、真面目にギャザラーに手を付けたのもパッチ5.2だったので、それが新しい発見というか、楽しかったことですね。

――とうとうギャザラーに手を出されたと。きっかけはどのようなものでしたか?

パッチ5.2で実装されたオーシャンフィッシングがやりたくて漁師に手を出したんです。そしてそのオーシャンフィッシングにドハマリした結果、漁師がレベル80になりました。また、キタリ族の蛮族クエストもギャザラーだったので釣りで臨みました。

そのうちにイシュガルド復興が出てきて、それにもギャザラーで参加しようと思って漁師で参加したんですが、漁師だとエーテルオーガーが撃てないということに気が付きまして(笑)今度はエーテルオーガーを撃つために、園芸師と採掘師のレベルを上げました。

エーテルオーガー。なぜかギャザラーが巨大バズーカを撃てる


――なるほど、ギャザラーのレベルは順調に上がっていったと。ちなみにクラフターのほうはどのように遊ばれていますか?

クラフターはもともと蛮族クエストをやるためだけにレベルを上げていました。普段はほとんどやらず、蛮族クエストをやって、しばらく塩漬けになり、新たな蛮族クエストがきたら装備更新してレベルが上がり……といったことを繰り返しています。

――ちなみに今後、ギャザラーとクラフターで金策や装備作成など、本格的な運用をする予定はありますか?

クラフターは難しいですね(笑)いろいろなMMOでクラフターにチャレンジはしていて、手前味噌ではありますが、そのなかでも『FF14』のクラフターはよくできていると思うのですが、それが私自身に向いているかというとそれは別の話でして。やれば稼げるんだろうな、とは思うのですが、予定はありません。

ギャザラーもほぼ同じ理由で自分には向いていないと思うのですが、唯一ディアデム諸島の復興ランキング開催期間だけは、島を一周するだけで採取物が飛ぶように売れるということに味をしめまして。復興ランキングに載りたいとまでは思わないのですが、クラフターの皆さんが頑張ってくださるので、その期間だけは島にこもって金策を頑張っています。

――ということは、普段の金策はほぼルーレットということですか?

そうですね、私のギルの収入源はほぼバトルコンテンツ……ルーレットですね。

――生活系コンテンツよりも戦闘コンテンツがお好きなんですね。

圧倒的に戦闘系ですね。自分は消費者側に回ろうと思います。生産者の皆さんにひたすら感謝をしつつ、食事や薬を抱えてバトルコンテンツへ行こうということにしています。

――でもオーシャンフィッシングにはドハマリしたと。

オーシャンフィッシングは、私の中ではバトルコンテンツです(笑)

――なるほど、魚との戦いですね。時間も区切られていて、パーティで行ってみんなで釣りをする、というのは確かにバトルコンテンツに近いのかもしれません。

幻海流のようなお祭りタイムも用意されていますしね。ディアデム諸島も然りですが、程よい短さで区切りがあって、ワーッとやれるものは好みですね。



好きなゲームは『Diablo』系。白地図を埋めるようなゲームも好き

――『FF14』以外のゲームで最近面白かったタイトルや、ずっとプレイしているタイトルはありますか?

一貫して長くやっているものはあまりありませんね。MMOタイトルを渡り歩くのが多かったです。

最近また、MMOでソロプレイすることについての議論をネットで見ることがあるのですが、私は大いにアリだと思うほうです。MMOという言葉はMOと比較するために存在していますが、ここ最近の概念は少し変わってきています。これまでのMOは『FF14』でいうとコンテンツに行くくらいの人数(8~24人程度)で、行って帰ってきて解散、という流れでした。

でも最近では、たとえば『Fall Guys』などは第1ラウンド60人くらいで開始しますよね。MOBAなどの例をとっても、MOの皮をかぶりつつも、下手すると第1ラウンド1000人なんて時代も訪れるかもしれません。そうなったときに、MMOってなんだろう?ということになります。ジャンルとして私がMMOと呼んでいるものは、自分が暮らすもうひとつの自律したバーチャルワールド(※)のようなところに入るという感覚のものです。そういうのを好んでやってきたなと思っています。

※ 室内氏の話すこの「自律したバーチャルワールド」という表現は、イギリスのゲーム研究者であるリチャード・バートル氏が提唱した「Persistent State World」という概念にあてはまる。MMORPGに関して言及されることが多く、仮想世界を開発・維持する形式を取ることでその世界が永続的に存在し、ゲームをプレイしていない間も独立して仮想世界は活動し続けるというものだ。

――これまでプレイしてきた中で一番好きなタイトルはなんですか?

それは、『FF14』を除いてですか?

――もちろん、『FF14』が一番!ということであれば『FF14』を挙げてください。

『FF14』はもう10年もやっているので、好きとか嫌いとかいう次元は超えてしまっています。ひとつの生活のようなものになってしまっているので除外させていただきますね(笑)

『FF14』を除くと『Torchlight』シリーズですね。オリジナルの『Diablo』の開発者が作っているシリーズなので……というか、『Diablo』が好きなんでしょうね。『Diablo』っぽいゲームは好んでやる傾向があります。

――ハクスラ系がお好きなのでしょうか?

そうかもしれないですね。でも最近のアクション性が高いものがやりたいわけでもなくて、『Diablo』くらいがちょうどいいんです。

あとは最近面白いなと思うのが、『テクテクライフ』という、リアルで歩いて、歩いた場所の白地図に色を塗っていくスマホゲームです。私はもともと白地図を埋める行為とか、自分の移動の軌跡が地図上で線を引かれて残っていくとか、そういうのがめっぽう好きなもので。何かをするための移動ではなく、移動すること自体を楽しいと思うほうなので、リアルと絡んだゲームとしてはすごく面白いですね。

――その系統でいくと、『ドラゴンクエストウォーク』などもプレイされていましたね。

はい。『ドラゴンクエストウォーク』の場合はどちらかというと、歩いて育てること自体よりも、「日本各地にちりばめられたおみやげをどうやって集めてやろうか」という方向に燃えています。

最近、家族が増えました

――そういえばご家族が増えられたのだとか。

はい、フクロモモンガが増えました。

――何か飼い始めるきっかけなどがあったのでしょうか。

もともとハリネズミが飼いたくて、今回フクロモモンガを飼いはじめる数日前まではハリネズミをお迎えする予定でした。しかし、たまたまテレビでフクロモモンガの特集を見てしまった結果、完全に一目惚れしてしまいまして。残念ながらハリネズミの優先順位が下がってしまい、フクロモモンガを飼うことになりました。

――室内さんといえばペットのヤマダちゃんをTwitterでよく拝見します。とてもかわいいなと思い眺めているのですが、例えば『FF14』内でミニオンとして登場……というようなことはあるのでしょうか。

実装があるかどうかは開発チームのみぞ知るというところではありますが(笑)似たようなミニオン、たとえばブルドッグなどはいますから、犬の種類を増やすくらいなら、もっと別の動物を増やしたほうがいいのではないかと、個人的には思いますね。



最近は歩く量がわかりやすく減った

――新型コロナウイルスの影響でリモートワークへの移行があったかと思いますが、生活の変化などはありましたか?

生活全般という意味では、歩く量がわかりやすく減ったことを実感しています。以前は通勤しているだけで1日平均6,000~8,000歩くらい歩いていたのですが、ここ最近は1,000~2,000歩程度になりました。500歩に満たない日もあって、驚くこともあったほどです(笑)。 仕事面では、私自身の仕事は実にリモートワークに向いているということがこの環境を強制されて改めてよくわかりました。

――吉田さんは最近鍛えているというお話を吉P散歩でされていましたが、室内さんはジムなどに通われるなどはしていらっしゃるのでしょうか?

していないですね。ジムは耐えられないと思います。クラフターができないのと同じくらい無理です(笑)

吉田Pとの馴れ初めは『FF14』の新生以前にさかのぼる

――『FF14』のプロデューサー兼ディレクターである吉田さんとの馴れ初めを聞かせてください。『FF14』以前から関わりはあったのでしょうか。

吉田とは特にこれまで親交があったわけではありませんでした。実際に会って話をして、というのは、『FF14』の新生にともなう体制変更があったときに、スタッフみんなが集められて吉田の挨拶が行われたときです。そのときはそれが初めてだと思っていました。

話は2003年が2004年くらいにさかのぼります。私はそのとき主に『FF11』とPlayOnline内の『テトラマスター』と『雀鳳楼』というゲームの運営を行っていました。PlayOnline内のゲームは基本的な開発は終わっていて、サービスは基本的に運営チームが毎月・毎週イベントを発生させることで回していく時期でした。当時の私の悩みはイベントを運営するためのツールや機能がほとんど用意されておらず、イベントをやること自体が大変だったことでした。

いずれも現在サービスは終了している


そんな折にPlayOnline対応の新しいゲームを作るために社内のプロデューサーと運営についての話をする機会があったので、ツール周りの悩みについて伝えました。そうしたら、今度そのゲームの担当を連れてくるから話をしてみてくれということになり……そこで連れてこられたディレクターというのが、実は吉田だったんですね。当時はまったく意識していませんでしたが……。

そのときの吉田が若かりし私のところに持ってきてくれたのが、プリセットの設定を組み合わせることで、いろいろなバリエーションのイベントを実施できるという、運営チーム向けツールについての提案でした。当時、それがすごく画期的だった印象が残っています。そのゲーム自体は現時点まで世に出ることはなかったのですが、今でもそのイメージがすごく強烈に残っています。

時系列は『FF14』の体制変更の頃に戻りまして、そのときに吉田の挨拶を見て「この既視感はいったいどこからくるんだろう?」と考え、少ししてから思い立ってメールをしてみました。「あなたはあのときの吉田さんという人と同じ人ですか?」と。そうしたら「そうですよ」という話になって。そのときに「なるほど!」となったのが……馴れ初めといえば馴れ初めですね。

もともと吉田のことを知っていたわけではないのですが、まだ運営者歴が浅かった私の悩みを完璧に解決してくれるようなツールをもたらしてくれた人、という印象が私の中に刷り込まれていました。それが「このひとはきっと面白いことをやるんだろうな」という安心感につながったというエピソードとして残っています。

――なんだか運命的ですね。

運命的かどうかはわからないですけど(笑)。ですが、私が吉田に対して安心感を持つのは、それがあったおかげでかなり早くなったんだろうと思います。

画像は、第60回プロデューサーレターLIVEでの吉田氏と室内氏の一幕


――ちなみに現在は吉田さんとプライベートな交流などはあるのですか?

特にプライベートでの交流といえるようなものはないですね。ですが、私からするとご飯に誘いやすい人であることは確かです。前にどこかで吉田も話していましたが、会社組織のなかで部門長のような立場になってしまうと、「ご飯に行こうよ」となかなか同じ部門のスタッフに言いづらいんですよ。自分が言ってもらうのであればどこへでも付いていくんですけど、「飲みにでも行く?」と誘って「行かなきゃいけないの?」みたいな空気が出ても嫌だし……、ということを考えること自体も嫌ですし……。

その点、吉田はそういう対象ではないですし、そもそも偉い人でもあるから、声かけをしやすいという意味で、私からご飯に誘いやすい貴重な存在の1人ですね。

また、『FF14』が関わる国内外のイベント等で吉田に同行する機会が多いので、合宿状態、あるいはサバイバル状態で、会社の外で一緒に食事をする……どころか、一緒に過ごす機会が関係者の中ではダントツに多いですね。出張も微妙にプライベートとは異なりますが、滞在中のオフの時間も一緒にいることが多いですし、特に海外出張では、過酷な短時間の飛行機乗り継ぎで空港を走ったり、メキシコで虫を食べたりと、なかなかできないようなことも経験しているとは思います(笑)長いときには2週間に渡って寝食をともにしますから、ある意味「プライベートでも交流がある」というレベルより、よっぽど会話量も食事量も多いかもしれません。

――吉田さんに限らず、プライベートで仲の良いスタッフの方などはいらっしゃいますか?

どこかに遊びに行くようなことはあまりないですね。もともと運営チーム自体にそういう雰囲気があって、特に少し前までは労働時間帯が後ろの方だったこともあって、通常だと業務終了が20時や21時でした。世間の人は1次会がとっくに終わっているような時間なんですよね。新しい人が入ってきて歓迎会をするなど予定が決まっていれば頑張って早めに切り上げて食事に行くといったことはできるんですが、毎週飲みに行こうという空気にはなりにくいんです。逆に、飲みに行こうというときはかなり前もって予定を立てて、スケジュールを合わせ、仕事の区切りも調整し……と計画的になりますね(笑)

それから、一斉に休みが取りづらいというのもありますね。社内に運営チームが0人になる瞬間はあってはいけないので、休みは分散させて互い違いに取っています。そういう意味でもプライベートで遊ぼう、といったことにはなりにくいのかなと思っています。特にそれが不満だとかいうことでもなくて、そういうものだという感覚になっていますね。

――プライベートで開発スタッフとゲームをプレイすることはありますか?

『FF14』を一緒にプレイするスタッフはいます。肩書や本名などをお互い知っていても、ゲームのなかではみんな自然とキャラクターネームで呼び合っていますね。ここが混ざると危なくて、ついつい他の人がいるところで「室内さん」なんて呼ばれかねない。そこを意識してか、どなたもキャラクターネーム呼びなので、それが身についているのは面白いなと思います。

画像は、「第6回FFXIV14時間生放送」より



最後に

――ありがとうございます。たくさん個人的なことをお訊きできて、満足しました。最後にコミュニティにコメントをお願いします。

今回のお話を頂いたときに私が強く感じたことがありまして、ゲームのことでインタビューをしようとなったときには、ゲームの内容や今後の予定を話せるプロデューサーやディレクターに対して行うのが普通でしょうし、そうでなければコンテンツやシナリオ、音楽を作った開発者に対して行うものだろうと思うんです。そんな中、運営者にリクエストをいただけるというのがつくづく面白いなと思いました。果たしてプレイヤーの皆さんにはここまで知りたい需要があるのか、と(笑)

ですが、それだけ『FF14』が長く深く皆さんに愛していただいているということですし、面白いタイトルに関わらせていただいているんだなということを、今回の話を頂いて改めて思いました。

『FF14』はこのコロナ禍の状況で、やっとパッチのサイクルがもとに戻ろうとしているところです。一方で、イベント周りを中心に今までとは違うことをしなければならない部分もたくさんあります。抱えている課題も多いのですが、今後も今までと変わらず、皆さんとの対話を重視しながら、いろいろな面白いことをやってやろうという気概はあります。どうぞご期待いただければと思います。

――ありがとうございました。

画像は、『FF14』オフィシャルブログより



スクウェア・エニックスのコミュニティ&サービス部の部門長として、『FF14』のグローバルコミュニティプロデューサーとして、そして各種生放送のMCとして、幅広い活躍を見せる室内氏。PLLやイベントなどでの穏やかな語り口とは裏腹に、その実はバトルコンテンツが大好きであったり、フクロモモンガに心奪われたりと意外な側面も垣間見ることができた。

『FF14』は10月13日にパッチ5.35がリリースされたばかり。12月上旬にはパッチ5.4「もうひとつの未来」が公開と忙しい時期を迎えている。新型コロナウイルスの影響で中止を重ねていたリアルイベントについて続報の告知もあった。今後も運営とプレイヤーが一丸となって、コロナ禍の難しい局面を乗り超えてきた『FF14』を楽しんでいこう。


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