『エルデンリング ナイトレイン』は、やはり難しかった。その中で見える、3人協力プレイという「足りなさ」がもたらすギリギリのバランス感

『エルデンリング ナイトレイン』の全体像と魅力をお伝えしていく。

『エルデンリング』の3人協力マルチプレイ・スピンオフ作品として注目を集める『エルデンリング ナイトレイン』。5月30日の発売が目前に迫るなか、リリースに先駆けて本作をプレイする機会を得た。本稿では全体像を捉えづらい本作の魅力を、いちプレイヤーとしてのリアルな視点から伝えたい。まだ購入を迷っている、もしくは発売が待ちきれない読者各位の一助となれば幸いだ。ゲームの概要を伝えていこう。


『ELDEN RING NIGHTREIGN』とは

『エルデンリング ナイトレイン』はフロム・ソフトウェアが開発する協力型サバイバルアクションゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox Oneで、発売日は5月30日。壮大にお手製で作られた世界を旅するアクションRPGであった『エルデンリング』とは打って変わって、ランダム性のあるゲームに繰り返し挑む“ローグライト”のような手触りとなっている。とはいえ、本作は3人プレイを前提とした設計となっており、その難易度は折り紙付き。「協力プレイ専用のソウルゲーム」と言っても差し支えないだろう。

本作におけるプレイヤーの目的は、夜の脅威にさらされる大地リムベルドにて、「夜渡り」として3日間を生き延びること。厳密には「2日間+ボス戦」となっており、日中のフィールド探索と夜間の厳しい戦闘を2日間乗り越え、最終日に非常に強力なボス「夜の王」との戦いに挑む。無事に夜の王を撃破することができればクリアだ。1プレイに要する時間は約40分程度。

討伐目標となる夜の王を設定し、3人のプレイヤーがキャラクターを選択したら出撃。夜の戦いに備える探索パートでは、「夜の雨」により徐々に狭まるフィールドを自由に駆け巡り、キャラクターのレベル上げやアイテム集めをしていくことになる。マップの基本的な地形や祝福の位置は同じだが、拠点や敵の場所、入手できるアイテムなどが毎回変化する。どのように行動するかはプレイヤー次第だ。フィールドの各地には複数の強敵が待ち受けているほか、1日目と2日目の夜にもボスを退けなくてはならない。

クリアまたは敗北時、フィールドで手に入れた装備や能力はすべてリセットされてしまう。その代わりに、報酬として各キャラクターに装備する「遺物」が手に入る。それぞれの遺物には最大3つまでのランダムな能力が付与されており、キャラクターのビルドに合う遺物を探し求めるといった収集要素も存在する。集めた遺物とともに、これまでの出撃で得た知識や経験を活用し、繰り返しリムベルドでの3日間に身を投じていくのだ。


探索はマイルド、ボス戦はしっかり“死にゲー”

まず、誤解を恐れずに唱えたい。本作は極めて高難度である。フロム・ソフトウェアの“死にゲー”よろしく、敵はフェイントなども織り交ぜた複雑なモーションで襲いかかってくるため見極めが困難。かつ数発受けるだけで体力をごっそりと持っていかれるシビアなパラメータとなっている。今回レビューするにあたり、フロム・ソフトウェアのゲームシリーズ経験者を含む布陣で自信をもって臨んだのだが、はじめは1日目を突破するだけでも苦戦し見事に敗走を重ねた。本作は『エルデンリング』のスピンオフ作品としての位置づけであるものの、本編に負けず劣らずの鬼畜仕様。ゲーム序盤から遠慮なく難しいため、歴戦のゲーマーにも安心してもらいたい。

ようやく最終日に辿りついても、そこでまみえる夜の王の強さはまた格別。多くのソウルライクゲームではボスの直前の地点からリトライできるわけだが、本作ではまず2日間を乗り切らないとボスへの挑戦権を得ることができない。ボスだけをみっちり練習することができず、攻撃パターンなどはその場で覚える必要があるという点も難しさに拍車をかけているのだろう。数十回にわたる挑戦の末、3人で力を合わせて夜の王を初撃破した際には、喜びのあまり叫んでしまった。

一方、張り詰めたボス戦とは対照的に、日中の探索パートはかなり爽快だ。敵を倒すにつれてキャラクターはぐんぐんと育ち、好みの武器を携えて戦闘にふけることができる。ときには複数の敵を蹴散らしたり、3人で敵を取り囲んで蹂躙したりといった無双感が得られることだろう。また、活動可能なエリアがどこに縮小していくか最後まで判明しないという、バトルロイヤルゲームに多いシステムが採用されていることにより、今ここで戦闘を仕掛けるべきかどうかといった戦略も常に付きまとう。いわば人気ジャンルの良いとこ取りだ。そういう意味で、本作は幅広いユーザーの口に合うようマイルドな味付けがされつつ、肝心のハードコアアクションゲームとしての側面には抜かりがない。


3人だからこその焦燥感

本作ではHPが0になってもすぐに死亡するわけではない。プレイヤーは瀕死状態となり、他のプレイヤーに攻撃してもらうことで復活できるというユニークな特徴がある。さらに、救出が間に合わず死亡してしまった場合にも、レベルダウンなどのペナルティ付きで何度でもリスポーン可能だ。ただし、これはあくまでも探索パートの話。円が完全に縮小しきった夜間の戦闘では時間経過によるリスポーンがなくなり、プレイヤーが全滅した時点で敗北。また1日目からやり直しとなる。敵の怒涛の連撃を掻いくぐり、3人でお互いを救出し合いながらなんとか命を繋いでいく必要があるのだ。

ところで、この3人という人数設定は本作のゲームシステムとかなりマッチしている。1人欠けた途端に雲行きが怪しくなるため、「自分が最初に倒れるわけにはいかない」という緊張感が自然とパーティーの中で共有される。そして残された2人はアーツを切って立て直すのか、はたまた一人が囮を引き受けるのか、最適な答えを導かなくてはならない。つまり、3人では絶妙にリソースが足りず、それがプレイヤーに適度な緊張感を与えてくれるのだ。

もし仮に本作が4人専用だったならば、死を免れようとする意識はかなり薄れてしまうだろう。逆に2人だとすれば、幅広いプレイスタイルを楽しむ余裕もなく、戦闘がずっと窮屈なものになっていたはずだ。仲間が最初に欠けた瞬間のあの焦燥感は、3人でなくては得られない。3人協力プレイを基本とする思い切った決断を評価したい。


プレイするたびに更新される定石

本作は何度も繰り返しプレイするローグライト型の作品ということもあり、プレイするまではすぐに定石が見つかってマンネリ化してしまうのではないかという可能性も懸念していた。しかし、ランダム性のあるプレイはかなりバリエーション豊かで、数十時間プレイしてからも毎回新鮮な気持ちで挑むことができた。さらに、本作ではゲームの進行度に合わせて、リムベルドに大きな変化を引き起こす「地変」と呼ばれる要素が加わる。地変の発生状況は出撃時に確認することができるが、このときマップの地形までもが変容することになる。地変を攻略すれば特別な報酬を得ることができるため、難易度は高いが積極的に挑みたい。

プレイを重ねれば重ねるほど、改善点や次に試したいプランがどんどんと浮かんでくる。渾身のアイデアを思いつくも、次にプレイする際にはまた別のプランが見つかっているといった具合だ。“お決まりのパターン”がいつまで経っても更新され続けていく楽しさがある。ランダムな要素に満ちた本作だが、その分プレイヤーに委ねられている要素も多いのだ。

探索ルートの選び方はパーティーの個性がもっとも光る部分だろう。たとえば筆者なら、聖杯瓶の所持数を増やすことができる「教会」は可能な限りたくさん巡りたいところ。回復リソースの量は継戦能力の高さに直結する。また、夜の王の弱点属性の武器も回収しに行きたい。フィールドに点在する各拠点では敵の使用する属性がそれぞれ決まっており、強敵を倒すことでドロップする選択式の報酬「潜在する力」からは、その属性の装備が手に入りやすい傾向があるようだ。ほかにも、報酬として多くのルーンを獲得できることの多い「封牢」も、時間対効果に優れるため重視しても良さそうだ。他のユーザーはどのような戦略を立てるのか想像するだけでワクワクさせられる。

パーティー編成を練る面白さも協力ゲームならでは。本作に登場するプレイアブルキャラクターは全8体。初めから使用できるのは6体で、特定の条件を満たすことでそこに2体の夜渡りが加わる。複数のプレイヤーが同じキャラクターを選択することもできるため、単純計算で500以上の構成があるわけだ。

ちなみに筆者らが最初に夜の王を撃破した際の編成は、獣に変化するアーツや弾きによりコンスタントにダメージを稼ぐ「執行者」、平均能力値が高く火力の要となる「追跡者」、そしてパーティーの生存力を大幅に高める「レディ」の3体であった。このうち「レディ」はかなり強力で、一定時間味方とともに姿を消すことのできるアーツをもち、ほかのメンバーを安全に戦闘へ復帰させることができる。また連続で回避をおこなえるというアビリティにより自身の生存力も高い。

ただし、彼女を複数採用する編成ではどうしても火力がもの足りないというのが難点であった。長期戦になればその分リソース切れになってしまう可能性も高まるため、ダメージを稼いで早期決着を目指すことも重要なのだ。まだ強みを見いだせていないキャラクターもいるため、秘めたポテンシャルを探るべくさらに試行錯誤してみたい。

“理不尽”にむしろ燃える

1本の大作アクションRPGを約40分のプレイの中に凝縮したかのような本作。フロム・ソフトウェアが築いてきた“理不尽を肯定するゲームデザイン”が、マルチプレイ専用作品においても遺憾なく発揮されていた。成長の喜びを感じた次の瞬間にはまた絶望の淵に立たされているという、まさに“上げて落とす”のオンパレードが『エルデンリング ナイトレイン』の正体だ。筆者はそんな中毒性の高い本作にすっかり取り憑かれてしまった。

やはり本作が人数設定を3人とした功績は大きく、かなり手ごたえのある難易度なのにも関わらず、どうにかクリアできなくもないというギリギリを攻めたバランスに仕上がっている。遺物などの収集要素が一部あるものの、基本的にはどれだけやっても“ニューゲーム”。ゆえに、やりこみによる自分の知識の蓄積やプレイスキルの上達が実感しやすいという部分もあるのだろう。さらに最適化していける点が次々と見つかり、そのたびにまた挑戦したくなるのだ。

何度も失敗することで学び、仲間とともに作戦を練って目的達成を目指していくゲーム体験は、まさに求めていたものだった。友人と遊ぶという点でシリーズ特有の緊張感・疲労感も心地よさになり得る。これまでフロム・ソフトウェア作品にあまり触れたことのないユーザーを同ジャンルにいざなう入口となることにも期待できそうだ。簡単な協力プレイ作品では満足できないというゲーマーにぜひプレイしてみていただきたい。


『エルデンリング ナイトレイン』はPC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに、5月30日発売だ。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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