美少女ソウルライク『AI LIMIT 無限機兵』は“美少女系色物ソウルライク”……かと思いきや正統派だった。歯応えはありつつ、ストーリーでも勝負してくる快作

今回弊誌は、本作を先行プレイする機会に恵まれた。レギュレーションにもとづき、中盤以降のゲーム内容について詳細に語れないことは留意してほしい。

パブリッシャーのCE-Asiaは、アクションRPG『AI LIMIT 無限機兵』を3月27日に発売する。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5。今回弊誌は、本作を先行プレイする機会に恵まれた。レギュレーションにもとづき、中盤以降のゲーム内容について詳細に語れないことは留意してほしい。

本作はキャラクターがアニメ調で描かれる高難易度アクションRPGだ。人類文明が崩壊した終末世界を舞台に、人工生命体である「機兵」の少女として数々の強敵と戦っていくこととなる。本作は『ダークソウル』シリーズや『エルデンリング』(以下、本家ソウル)の影響を多大に受けており、キャラクターがアニメ調や美少女になっただけのソウルライクというイメージを抱くかもしれない。たしかにそういった側面があることは否定しない。

しかし本作は、「ソウルライク度」の高い要素と独自要素が高次元で融合し、歯応えがありつつも爽快な戦闘を実現することに成功している。また、数百年にわたる地球規模の壮大なストーリーが断片的に語られ、そのすべてが鮮やかに一点へと収束していくさまは鳥肌が立つほどの興奮を覚えた。少なくとも筆者にとっては、既存のソウルライクとは一線を画す傑作であった。では、どのような内容なのか。システムとストーリーに分けてお伝えしていこう。

Steamストア:
https://store.steampowered.com/app/2407270/AI_LIMIT/?l=japanese

PSストア:
https://www.playstation.com/ja-jp/games/ai-limit/

シンクロ率を要として「パリィ」が最大火力となる爽快な戦闘システム
本作のもっとも魅力的な要素は戦闘であり、筆者はクリアまで中だるみすることなく夢中になって戦い続けることができた。

戦闘において要となるのが、スタミナの代わりとなる「シンクロ率」だ。とはいえ、ほとんどの行動でスタミナを消費する本家ソウルとは異なり、本作は攻撃や回避でシンクロ率を消費しない。これにより、行動の自由度が増し、ストレスを感じることなく純粋に反応速度で戦うことができるのだ。こういった仕様は本作独自のものではないが、筆者好みの調整であった。

では、このシンクロ率を何に使うかというと、各武器に用意された強力な「武器スキル」や、魔法のような「スペル」を発動する際に消費する。また、攻撃を当てればシンクロ率が増加して攻撃力も強化され、逆に攻撃を受ければ減少して0%になると行動不能となる。つまり、敵の攻撃を見切って攻撃するほど攻撃力が上昇して強力な技や魔法を発動でき、加速的にダメージを与えられるようになるのだ。ボスの攻撃を見切れない段階では体力を半分まで減らすのに数分かかっても、倒せる程度に見切った段階では1,2分で決着するほどの爽快感を生み出す画期的なシステムとなっていた。ちなみに、シンクロ率は一定の値までは自動回復する。

シンクロ率が増加するほど有利になる代わりに、0%になると一定時間動けなくなってしまう

シンクロ率を消費するのは武器スキルとスペルだけではない。進行に応じて習得する4つの特殊アクションもシンクロ率を消費する。特殊アクションにはパリィ、ガード、瞬間移動、攻撃バフがあり、戦闘中にリアルタイムで切り替え可能だ。これらの特殊アクションのうち、パリィはシンクロ率とも見事に噛み合い、戦闘の駆け引きを一段階上に引き上げつつ極上の爽快感をもたらしている。

本作のパリィは「Cフィールド」と呼ばれる。タイミングよくCフィールドを展開すると、ほとんどの攻撃を防ぎつつ敵がウィーク状態となり、ファタルストライクにより大ダメージを与えることができる。本家ソウルにおける致命の一撃であり、「ソウルライク度」の高いシステムだ。さらに本作では、ファタルストライクによりシンクロ率も大幅に増加する。逆に、タイミングが合わなければシンクロ率を消費するばかりか、攻撃を受けてHPとシンクロ率も減ってしまう諸刃の剣だ。つまり本作のパリィは、HPだけでなくリソースと攻撃力であるシンクロ率のやり取りでもある。たとえ見切った攻撃でHPに余裕があっても、シンクロ率が低い状況ではパリィによる一発逆転を狙うのか安全策で回避するのか、高次元の駆け引きを楽しむことができるのだ。

序盤のボスはパリィさえ決まれば大ダメージを与えることができるのでサクサクと倒すことができた

そして本作のパリィは、攻撃に対してわずかに早めに発動する必要があり、安定して成功させるのは非常に難しい。それでも筆者は最後までパリィをメイン使っていた。リスクを負う以上の最大火力を叩きこめるためだ。パリィ後のファタルストライクだけでも十分強いのだが、本作ではダウン中の敵への追い打ち攻撃も可能となっている。つまり、ファタルストライクによりダウンした敵へ武器スキルというコンボにより、通常攻撃とは比べ物にならない大ダメージを与えられるのだ。筆者はこのコンボがあまりにも爽快で虜になってしまい、最後まで使い続けたわけだ。ちなみに、Cフィールドは投射物やエネルギー光線も跳ね返せるので、離れた位置から攻撃してくる敵を倒す際にも大いに活躍した。

もしパリィが苦手でも安心してほしい。そのほかの特殊アクションであるガードと瞬間移動は、ディレイ攻撃などでタイミングをずらされても被害を最小限に抑えることができる。筆者は初見のボス戦ではモーションを覚えるためにガードと瞬間移動を使うことがあったが、終盤でもそのまま撃破できたボスがいるほど安定して立ち回れた。慣れれば苦手な攻撃はガード、見切った攻撃はパリィのように状況に応じて切り替えて戦うことも可能で、イメージ通りに対応できると戦闘を支配しているかのような快感を味わえる。

「ソウルライク度」の高い成長システムながらも自由度の高いカスタマイズ

本作の成長システムは、本家ソウルのプレイヤーに馴染みやすいものとなっている。敵を倒すと入手する「クリスタル」は、経験値であり売買するための通貨でもある。本作の休息ポイントである「晶枝」では、クリスタルを消費してステータスを一つずつ上げ、合計値がレベルとなるといった具合だ。とあるアイテムを入手することでステータスのリセットも無制限に可能となる。また、武器は素材とクリスタルを消費して強化でき、「ソウルライク度」が高い成長システムと言えるだろう。ちなみに、本作には「晶」の付く用語が多数登場し、クリスタルを意味している。

前述したように、攻撃や回避でスタミナ消費しないこともあり、振り分けるステータスは5つと少な目だ。おそらく大抵は脳筋割り振りになりそうなほどビルドの幅は狭いが、元々筆者は近接攻撃が好きなこともあり、むしろあまり悩まずに済むベストな調整であると感じた。また、防具には頭と体の2部位あり、防御力や状態異常への抵抗力がそれぞれ異なるものの、重量のようなステータスはない。これにより、純粋に防御力で選んだり、ビジュアル重視で選んだり装備の自由度が向上しているのだ。筆者はポニーテールがお気に入りで大抵の場面で装備していた。

装備品にはゴツゴツとした重装備やかわいらしいメイド服なども用意されている

防具の部位が少ない代わりに、独自のカスタマイズ要素として「晶核」と「刻印」が存在する。本作では力尽きると経験値が75%になるというペナルティがある。晶核はこの残量だけでなく経験値入手量やシンクロ率の上昇量も変わる。一部でも経験値が残るのはぬるいと思われそうだがそんなことはない。本家ソウルでは失った経験値を回収できるのに対して、本作では失った分は二度と回収できないので覚悟を試される場面が増えるのだ。筆者は大抵の場面で経験値入手量が増える代わりにペナルティも増える晶核を装備していたので、常に行くか退くかの決断を迫られる緊張感のあるダンジョン攻略を堪能できた。

また、刻印には「主印」と「従印」があり、晶枝で付け替えできる。主印によりシンクロ率のゲージ構成が変わったり、特殊な戦闘ステータスが付与される。さらに、従印は5つまでセットでき、ステータス上昇や特殊アクションを強化するものなどがある。レベルアップによるビルドが狭い代わりに、刻印では物理・耐久・魔法だけでなくパリィ・回避などさまざまな特化ビルドを構築できるのだ。何度も瞬殺されるようなボスでも、刻印を見直すだけで善戦できるようになるなど試行錯誤が楽しいシステムであった。

刻印は戦闘スタイルに大きく影響する

意地悪くも理不尽を感じないダンジョンとその先に待ち受ける魅力的なボス
戦闘の舞台となるダンジョンについても紹介しよう。本作のダンジョンはいずれも巨大で、中盤以降は意地悪なギミックも増えていく。死角に配置された敵、狭い足場で落下死を誘う敵、届かない場所から攻撃する敵、倒せば復活しない強敵が複数の雑魚と一緒に配置されていることもある。探索中に何度も死を経験したが、理不尽と感じることはなかった。本作はプレイヤー性能が高く、遠距離攻撃による一体ずつの釣りだしも可能であるため、シンクロ率の自動回復やパリィを活用すれば多くの状況で優位に立ち回れるはずだ。

いわゆる毒沼ダンジョンも用意されている

また、ダンジョン構造も本家ソウルに劣らず緻密に設計されている。休息ポイントが要所に配置され、ショートカットや隠しルートも存在するため、未知のルートを自力で切り開く楽しさを味わえるのだ。各ダンジョン間の移動ではロードを挟むものの、「ここに繋がるのか」という驚きは何度もあったので安心してほしい。そのほか、毒沼の存在や、足場中央にスイッチのあるエレベーターなど「ソウルライク度」の高さを感じることができるだろう。なお、本作ではダッシュ中にスティック押し込みで幅跳びジャンプでき、ジャンプを活用するルートもある。しかし、押し込む瞬間に方向軸がずれて落下死してしまうので、筆者は早い段階でジャンプを含むほとんどのボタンをキーコンフィグで変更することとなった。

ジャンプしないと進めないルートも存在

ダンジョンの奥では魅力的なボスが待ち受けている。本家ソウルでは筆者にとって理不尽を感じるボスがいたことは否めないが、本作のボス戦はすべて楽しかったと言える。さまざまなシチュエーションや攻撃手段に対応することとなるが、一例として体験版でも戦える「機兵の狩人」を紹介しよう。筆者は今回が初挑戦であり、初見ではなすすべもなく力尽きるほど圧倒的な強さであった。また、このボスは主人公と同じくシンクロ率があり、一度のパリィではウィーク状態にならないうえにボスもパリィを使ってくる。しかし、何度も挑むうちにモーションやタイミングを掴み、ほとんどの攻撃を連続でパリィできるようになっていく。約1時間の死闘の末に撃破できたときは、この上ない全能感と達成感を味わうことができたのだ。ちなみに、倒すのに1時間以上かかったボスが複数いることは伝えておきたい。

中盤の壁として立ちはだかる「機兵の狩人」戦はパリィの応酬を味わえる


張り巡らされた伏線が一点に収束する壮大なストーリー

ここまで主に戦闘面をお伝えしてきたが、クリア直前までは本作のもっとも魅力的な要素としてストーリーを紹介するつもりであった。理由は後述させていただくが、まずは本作の世界観や情勢を紹介しよう。

本作は、数百年前に人類文明が崩壊した世界だ。生き残った人類は最後の都市「ヘブンズウェル」に身を寄せている。しかし、ヘブンズウェルは人を襲う怪物「ネクロ」の襲撃にさらされており、都市の支配者である「教会」が人類を守っている状況だ。主人公は何度も復活できる人工生命体「機兵」であり、開始直後はすべての記憶を失った状態で目覚めることとなる。機兵には晶枝を修復する力があり、最初に出会うアステリアから晶枝を修復することで記憶を取り戻せること、さらに人と触れ合うことが世界を救う方法であることが伝えられる。そうして、ヘブンズウェル各地を冒険することになるのだ。

最初に出会うアステリアは疑問に答える権限がないという

ダンジョンでは多くの人がいる集落もあり交流も可能だ。序盤に出会う少女シェリーや植物学者のデルファなど名前付きNPCからは、さまざまな情報を得られるとともにストーリーにも大きく関わってくる。主人公と同じ機兵と出会って重要な情報を得ることもあれば、ダンジョン内では過去の出来事が記されたテキストを見つけることもある。しかし、序盤に得られるのは断片情報ばかりで、独自用語が多いこともあり理解することは難しい。また、会話したNPCは晶枝に触れるといなくなるなど、「ソウルライク度」の高いストーリーテリングと言えるだろう。とはいえ、本家ソウルにも通じる要望として、NPCとの一度の会話で名前や内容を覚えられないので、メニュー画面に人物事典や、見つけたテキストを読み返せる機能を用意してほしいところだ。

主人公のアリサという名前は少女シェリーがつけてくれる

かく言う筆者も途中までは情勢やストーリーを理解できず、戦闘を楽しみながら進めていた。しかし、中盤にとあるテキストからいくつかの謎が解明される瞬間が訪れた。明かされた真実に鳥肌が立つほどの衝撃を受け、そこからは一転して世界の真実を追い求めることが最大の原動力となったのだ。NPCのセリフだけでなく、ダンジョン内の各種テキストからも壮大な世界の真実が判明して一点に収束していくので、是非とも隅々まで注意深く探索してほしい。ちなみに、すべてのアイテムにはフレーバーテキストがあり、機兵の能力により、アイテムに「残された記憶」も読み取ることができるので世界の理解が深まるだろう。

そうして、いくつもの世界の真実が判明した末に最後の戦いに挑むこととなる。しかし、本作はマルチエンディングが採用されており、筆者なりに最善を尽くしたつもりでもおそらくバッドエンドとなってしまった。世界の謎はほとんど判明しつつ、重要NPCとのイベントが未完となり、アイテムや敵が見えるのに到達できないルートも複数確認しており、未だ見ぬボスもいるはずだ。バッドエンドでも満足度は非常に高かったのだが、すべての真実を解き明かすことができなかったためストーリーを魅力的な要素として紹介できなかったわけだ。そのほかのエンディングを見ることも含めて、筆者は2周目をプレイして序盤からストーリーを理解していく予定だ。なお、筆者は迷ったりしたもののクリアまでに35時間以上費やしていた。本作はいわゆるミドルプライス価格でありながら、引継ぎ周回要素などボリュームもしっかりあるので期待してほしい。

総評

プレイするまでは美少女が魅力の、色物の高難易度アクションRPGをイメージしていたが、いい意味で裏切られることとなった。本作は戦闘、成長システム、ダンジョン、ストーリーテリングに至るまで「ソウルライク度」の高い作品でありながら、単なるコピーではない独自要素が高次元で融合し、新たな体験を生み出している。パリィによる爽快な戦闘やダンジョン攻略を楽しみつつ、壮大なストーリーの結末を是非見届けて欲しい。筆者としては、数多くのソウルライクが溢れる中で強烈に記憶に残る一作となった。

『AI LIMIT 無限機兵』はPC(Steam)/PS5向けに、3月27日に配信予定。ダウンロード版の価格は税込4730円だ。

Steamストア:
https://store.steampowered.com/app/2407270/AI_LIMIT/?l=japanese

PSストア:
https://www.playstation.com/ja-jp/games/ai-limit/

Haruki Maeda
Haruki Maeda

3DアクションRPGと犬をこよなく愛するPCゲーマー。『フォールガイズ』のようなわちゃわちゃ系も大好きです。

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