「Steamサマーセール2021」でオススメしづらいが、遊んでほしいゲーム10選
Steamサマーセールも後半戦、お買い求め忘れの品物はないだろうか。押しも押されもせぬビッグタイトル、隠れた珠玉の作品を読者の皆様にお届けするのも、我々メディアの大事な務めだ。一方、なかには大手を振っては“オススメしづらい”ゲームも存在する。操作が難解、ビジュアルが奇抜、とにかく意味がわからない。しかしながら、なぜか心をつかまれてやまないゲームを、本稿では10本ラインナップしている。あくまでオススメしているわけではないが、ビビッとくるタイトルがあれば遊んでみてほしい。ちなみに弊誌では別途、「割引価格75%以上」のオススメゲームも特集している。併せてチェックし、今年のサマーセールを最後まで満喫してみてほしい。
Say No! More
1326円(1980円、33%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
『Say No! More』は、「NO」と言える人になれるアドベンチャーゲームだ。舞台となるのは、上司や同僚の要求にはどんなことであれ「YES」と答えることしか許されない会社。ここに実習生として入社した主人公は、嫌な要求には拒否したい気持ちはあるけれど、「NO」とは言い出せず、かといって「YES」とも言えずにいる。しかし、偶然入手した自己啓発テープを聴いたことで自信がみなぎり、ついには「NO」を発することとなる。
社内を歩く主人公には、社員らが偉そうに雑用を次々に押し付けてくるため、「NO」の一声で吹っ飛ばしてやるのだ。アツく拒否したり、冷めた口調であったりといった使い分けや、「んんん〜」と溜めてからの強力な「NO」も可能。また笑い飛ばしたり、手を叩いて挑発したり、ちょっと話を聞いてみるフリをしたりと、相手に合わせた対応をすることでさまざまな反応を楽しむことができる。
不条理なことに対してキッパリ拒否していく、ユーモア溢れるゲームプレイは痛快そのもの。ただ、感化されやすい人にオススメすることは憚れる内容でもある。これを真似するのは危険だ。もっとも、本作は社会不適合者になることが目的ではなく、メッセージ性のある物語を有している。また、日本語版では「いやです」と答えることとなるが、場面によっては適切な返答になっていないこともあり、「NO」という言葉の使い勝手の良さを実感できる作品でもある。
by. Taijiro Yamanaka
Post Void
207円(310円、33%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
『Post Void』は、ゲームプレイ自体はいたってシンプルなアーケードスタイルのFPSゲームだ。プレイヤーはひたすら目の前の敵を撃ち、ゴールに飛び込んでステージクリアを繰り返す。ステージの合間には、リロード速度アップや武器変更などランダムな3つの能力が提示され、プレイヤーの好みのものを選択する。では、本作のなにがおすすめを戸惑わせるのか述べたい。まず申し伝えておきたいのは、本作では非常に激しく画面が明滅するということだ。そのため、光過敏性発作を持っているユーザーは、ゲームプレイ映像の視聴でさえも注意した方がよいだろう。
かく言う筆者も、本作をプレイしているとこめかみに痛みを覚えることがある。終始一貫して毒々しい色合いのデザインに、グニャグニャとゆがむステージ。ゲームオーバーの際は特に激しく画面が発光し、目から血が出そうな衝撃を受ける。しかし、それらの苦痛はテンポの良いゲームプレイと、ギザギザしたBGMに押し流され、いつしか快感に変わっていく。本作の「体に悪そうなのにやっちゃう」刺激は、例えるなら電子ドラッグめいたものだ。好き嫌い以前に、体との相性や体調も問われる作品ではあるものの、刺激を求めるゲーマーには一度は試してみてほしい一本だ。
by. Seiji Narita
Receiver 2
1640円(2050円、20%オフ、有志日本語化あり)(Steamストアリンク)
『Receiver 2』は、“一人称視点のシューティングゲーム”だ。わざわざ引用符でくくったのには理由がある。このゲームには、「銃シミュレーション」ともいうべき特色があるのだ。「ステージ内に散らばったカセットテープを集める」というシンプルなルールながら、本作がおすすめしづらいゲームなのはそこに理由がある。
本作ではまず、リロードからして一筋縄にはいかない。各銃は、設計図やガンスミス用資料からその機構がリアルに再現されている。リボルバーの場合、まずは「E」でシリンダーを開き、「V」で排莢。「Z」を押すと一発ずつ弾を込める……といった具合に、銃のあらゆる主要な操作に独自のキー入力が必要なのだ。銃の照準についても、アイアンサイトを使い慎重に合わせなければならない。一見面倒なこの操作こそが、本作に独特の魅力を与えている。
ステージには、一瞬でこちらの命を奪う性能を持つ自動機銃などの敵も配置されている。やられればステージを最初からやり直しだ。そうした緊張を抑えつつ、シリンダーを開き、弾薬を確認し、撃鉄を起こす。そこには、まるで実際に銃を手にしているかのような奇妙な高揚感がある。難易度も高く一癖も二癖もあるが、同時に異彩も放つ本作。「銃」を感じたい方は、ぜひ手に取ってみてほしい。
by. Seiji Narita
SHENZHEN I/O
760円(1520円、50%オフ、一部有志日本語化あり)(Steamストアリンク)
『SHENZHEN I/O』を一言で表現するのなら、筆者は「超ハードコアプログラミングADV」と呼びたい。大好きながら内容が本格的過ぎて、おいそれと他人にはすすめられない。そのハードコアさたるや、筆者は本作初プレイ時に、ハマりつつも「なぜゲーム内で仕事と同じことをしているのだろう」とふと疑問に思ったほどだ。というのも、筆者は記者として活動する以前、他社でプログラマーとして働いていた。その業務サイクルと、本作のゲームプレイサイクルは非常に似通っているのだ。
まず、実装すべき課題が存在し、とりあえずコードを書く。そして上手くいかないのでマニュアルを読む。そして書く。繰り返しているうちに上手くいく。以上の流れは業務のサイクルに近似している。しかし、それでも筆者が楽しんで遊べたのは、本作がゲームとして丁寧に設計されているのが理由だ。必要な情報はゲーム付属のマニュアルに揃っており、現実の上司に怯えなくてよい。プログラムが動かないことに胃を痛める必要はなく、丁寧に作られた階段を登るようにじっくりと学習しつつ、プログラミングの純粋な楽しさを味わえる。なお、Steamガイドには本作の根幹たるマニュアルの有志日本語訳が存在するので、英語に自信がない方でも根気さえあればなんとかなる……かもしれない。
by. Seiji Narita
Ashwalkers
976円(1220円、20%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
『Ashwalkers』はポストアポカリプス世界でのサバイバルを描くADVだ。主人公は、人類の命運を背負って旅を続ける4人の生存者。プレイヤーは一行の命を守りつつ、道中イベントに対処するのだ。メンバーには体力や空腹度などが存在。物資を分配し、各自の健康状態を保たなくてはならない。しかし、手に入る資源はごくわずかだ。ときには誰かを切り捨てる判断を迫られることとなる。絶えず倫理的ジレンマに苛まれながら、4人は過酷な旅路を続けていく。
地味。この一言に尽きる。ゲームブックをイメージしたという本作は、派手なアクションとは無縁だ。時おり起こるイベントもスペクタクルからは程遠く、灰色の世界でウジウジ生かしたり殺したりを繰り返す。極めつけの難点が「足の遅さ」である。このパーティ、とにかく足が遅い。道中はひたすら歩きながら資源を拾い集めるのだが、火山灰の積もる終末世界、過酷な使命を負った一行の足取りはとにかく重い。のろのろと歩く生存者たちを見つめる時間はかなり虚ろである。
しかし、虚無は余白であり、余白にこそ美が宿る。グレースケールの世界をうら寂しく歩く旅人たちの姿は、それだけで感傷を呼び起こしてやまない。そぞろ歩く時間こそが本作のメインディッシュといっていい。終わった世界、顔の見えない4人組、茫漠たる無彩色の荒野。これだけで飯を食える諸氏には、きっとたまらない美しさをたたえた作品である。
by. Yuki Kurosawa
Gone Golfing
260円(520円、50%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
『Gone Golfing』は、ゴルフサバイバルホラーゲームである。仕事の疲れをゴルフで癒そうと、新しくオープンしたミニゴルフ場へとやってきた主人公。しかし、COZY COVEには人の姿は見当たらない。代わりに、手足の生えたゴルフボールやゾンビトラウトによる歓待が待ち受けていた。主人公は怪異から逃げ隠れしつつ、COZY COVEの全13ホールを回ることになる。
ボールを打つ際には、スイングの角度や強度など、いくらかの集中を要する。一方、施設内には怪異が徘徊しており、主人公を見つければゴルフのプレイ中であろうとお構いなしに襲ってくる。ボールに意識を向けていたら、背後から違うボールに殺されていた、なんて状況も発生するわけだ。またレトロ風のグラフィックによって、出来の悪いマスコットじみたクリーチャーたちや、悪夢のような世界も表現。ミニゴルフとサバイバルホラーを足して2で割らない、奇怪なゴルフサバイバルホラーが本作の持ち味となっている。怪作といっていいだろう。
本作がおすすめしづらいのは、作品の奇抜さ故だ。ゴルフとホラーが同居した作品を遊びたいと思ったことはあるだろうか。きっとないだろう。しかしこの夏にも、怪異に追われながらホールインワンを目指したくなるかもしれない。そんな瞬間に備えて、ライブラリへ積んでおいてはどうだろうか。なお本編以外に、クリスマスや釣りをテーマにしたエピソードも収録されている。
by. Keiichi Yokoyama
FootLOL: Epic Fail League
196円(980円、80%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
『FootLOL: Epic Fail League』は、サッカーを題材にしたゲームだ。ただし、選手を操作できない。そのため、パスもドリブルもシュートも不可能だ。選手たちは皆勝手に動く。プレイヤーができることは、味方チームがゴールを決められるようにひたすら支援すること。支援の方法は多岐にわたる。地雷の設置、ミサイルの投下、隕石の投下、UFOの呼び出しなど。いま挙げたものは支援内容の一部にすぎない。そう、本作においてプレイヤーは、好き放題できる神なのだ。サッカーフィールドをメチャクチャに荒らして、敵チームを理不尽な敗北に追い込もう。
前述のとおり、まず本作はサッカーゲームではないし、かといってどのようなタイプのゲームかと問われれば答えづらい。使える支援スキルが豊富になるほど試合は激化していき、よりサッカーの概念から離れていく。大量の隕石が落下し、爆撃機が空を飛び、牛の大群が解き放たれたサッカーフィールドを見ていると、自分でも何をしているのか分からなくなる。一方で、とりあえず頭をからっぽにして、選手をひどい目にあわせる快感のようなものは確かに存在するし、意外と戦略性もある…かもしれない。何でもありだが、もう何でもいいやと思わせる振り切り具合がこの作品最大の魅力。しかし、それが勧めづらい理由でもあるのだ。
by. Nobuya Sato
Virginia
245円(980円、75%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
『Virginia』は、一人称視点のアドベンチャーゲーム。プレイヤーは新人FBI捜査官として、田舎町で起きた失踪事件の謎を追う。この設定は魅力的であるし、トゥーンシェーダーを用いたグラフィックも味があって良い。しかし、本作をゲームとして人に勧められるかどうかは正直なところ微妙だ。というのも、本作でプレイヤーが介入できる部分は少なく、基本的には限られたシーン(空間)の中でキーオブジェクトを調べて次のシーンへ。その繰り返しで、プレイ自体は単調である。かといって物語を楽しもうとすると、ボイスやセリフが一切なく、さらに場面転換が激しいために、いま何が起きているのか、物語の流れを把握しづらい。
では本作はプレイするに値しないアドベンチャーゲームなのかと問われれば、答えはノーだ。確かに前述したように、本作のストーリーテリングはクセが強く、ゲームとしてもインタラクティブな映像作品としても万人受けしないだろう。一方で、登場人物の表情や振る舞いといったモーションの完成度は高く、そこからシーンごとのつながりを推察する手探り感は本作ならではの魅力だ。それは、一度見ただけでは理解できない映画を見るような体験。繰り返しプレイすることで見えてくるパズルのピース。決して分かりやすい面白さはないが、自ら謎をひも解く快感が本作にはある。真の捜査官は主人公ではなく、プレイヤー自身なのだ。
by. Nobuya Sato
Arrest of a Stone Buddha
596円(1490円、60%オフ、日本語あり)(Steamストアリンク)
『The friends of Ringo Ishikawa』で知られるyeo氏の第2作。今作で描かれるのは圧倒的な質量を持つ「虚無」。70年代フランスを舞台に、殺し屋の灰色の日常が語られる。色彩美豊かなドット絵で描かれる背景。大気にはクラシック調の優美なBGMが香る。ゲーム自体は爽快感と緊張感が一体となった、横スクロール型ガンアクションパートと、映画鑑賞や美術鑑賞、筋トレ、飲酒など多様な娯楽を体験できるアドベンチャーパートの繰り返しで構成されており、一見すると本作は上質な「フィルム・ノワール」モチーフの作品にも思えてしまう。
だがそれは誤りである。このゲームには全ての行動に最終的な目標が存在しない。主人公は殺し屋のキャリアに生きがいを感じている訳ではないし、アドベンチャーパートは不眠症に対する睡眠薬を飲むまでの「時間つぶし」でしかない。美しい街並み。積み上がる死体。澄み渡る青空。拭ってもとれない紅。そして何も無いわたし。静と動の転換の中で、一切語られないキャラクター。本作は「虚無」がテーマであり、本質的に中身の無いプレイをひたすら繰り返す必要に迫られる。これは単純にプレイヤーに精神的苦痛を与える一方で、共感性も非常に高い。万人に勧められる作品では無いが、ゲームが作業である点を利用した物語体験は唯一無二であり、絶技と言っていい。メンタルが強い方はぜひ。
by. Takayuki Sawahata
んこダイス
690円(1000円、31%オフ、日本語なし)(Steamストアリンク)
“「う」「ん」「こ」「ち」「お」「ま」を揃えるダイスゲームあるけど、オススメだよ。” そんなことを親しくない友人に言おうものなら、正気を疑われかねない。面白いゲームであるものの、オススメしづらい。『NKODICE(んこダイス)』はそうした表現にうってつけのゲームだろう。
『んこダイス』はksym氏が開発したサイコロゲームだ。美麗なグラフィックにて、「お」「ち」「ん」「こ」「ま」「う」が記された6面サイコロをふるい、特定の出目を揃え、役を作っていく。あまりにも攻めたアイデアから話題になった同作であるが、実際のところかなり良くできている。サイコロをふるうタイミングやナッジのタイミングは、プレイヤーの腕が問われ、干渉できないパートも多く戦略性が問われる。美麗なビジュアルによって描かれるサイコロの動きは、単純に見ていて楽しい。
本作はそのテーマの奇抜さゆえに、バカゲーという文脈や、ジョークの文脈を込めて過剰に崇める評価もある。実際のところはどうかという面でいうと、この価格としてはかなり楽しめる。ひとりで役を揃えて白熱するもよし、友人たちとマルチプレイするもよし。ゲームシステムが堅実で、テーマもテーマなので、盛り上がること必至である。コンテンツ量があるゲームではないので、そうした面は価格に織り込まれている。ただ、カジュアルに楽しく遊ぶパーティーゲームを探しており、下ネタを笑える友人がいれば、間違いなく買うに値するゲームだ。
by. Ayuo Kawase