オープンワールド『紅の砂漠』は「何もわからない」が楽しいゲーム。NPC450人、動物400種類、すべてが未知でそれらを「知る」ための冒険の旅路
本作をプレイして印象的だったのは、「わからないこと」そのものを楽しませる作りだ。本稿では、未知との出会いを支える特徴的な要素について紹介していきたい。

Pearl Abyssが3月20日に発売したオープンワールドアクションアドベンチャー『紅の砂漠』は、広大な世界と高品質なビジュアルで注目を集めている作品だ。プレイヤーはクリフとして、ファンタジー世界「ファイウェル大陸」を旅しながら、戦闘や探索、さまざまな出来事に向き合っていく。
本作をプレイして印象的だったのは、「わからないこと」そのものを楽しませる作りだ。人や生き物、アイテムは膨大な数が存在する一方で、ゲーム序盤ではその多くが正体不明のまま提示される。しかしそれらは探索や発見を通して正体が明らかになり、世界の輪郭が徐々に見えてくる。
充実したヘルプ機能、偶然の発見を生むマップ構造、そして自力で法則を見つける謎解き。そうした仕組みが組み合わさることで、『紅の砂漠』では「知ることの喜び」を起点にした体験がかたち作られている。

弊誌は今回、『紅の砂漠』を先行プレイする機会に恵まれた。本稿では、未知との出会いを支える特徴的な要素について紹介していきたい。
膨大な“知識”の量に圧倒される
『紅の砂漠』はMMORPG『黒い砂漠』で知られるPearl Abyssが手がけるオープンワールドアクションアドベンチャーゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam/Mac App Store)、PS5、Xbox Series X|S。本作の舞台となる「ファイウェル大陸」は、魔法やドラゴンが存在するファンタジー世界でありながら、ロボットなど高度な文明も混在する独特の世界観を持つ。主人公クリフの所属する灰色たてがみは、宿敵「黒い熊」による襲撃で一夜にして壊滅してしまう。灰色たてがみの再建を目指して奔走する中で、クリフは謎の文明「アビス」に関わる陰謀へと巻き込まれていく。
本作をプレイしてまず印象的なのは、未知の部分があまりに多い世界と、知ることそのものが快感になるシステムだ。

ゲームが始まるとプロローグを経て、プレイヤーは「ファイウェル大陸」の広大な大地に放り出される。最初に訪れる街では多くの人が行き交い、さまざまな物が雑多に置かれたリアルな光景が広がっている。街には大量の施設があり、盗品商や投資が可能な銀行まで置かれている。また、NPCや動物には個別に「好感度」が設定されており、挨拶や贈り物で仲良くなることが可能だ。美しい風景に圧倒されると同時に、画面に映る膨大な情報量に少し戸惑ってしまうところもある。
その感覚とリンクするように、本作では初めて見る人物や物の多くが「???」と表示される。観察したり入手したりすることで正体が判明し、一度発見したものはメニュー内の「知識」に記録されていくという仕組みだ。最序盤は触れるものや話しかける人物がほぼすべて新発見となるが、知識が詰み上がっていく感覚が気持ちいい。

知識の項目数は約2900にのぼり、重要なロケーションから何気ない容器まで、細かなカテゴリで整理されている。たとえば名のあるNPCは約450人、動物や虫は約400種類、製作物も約350種類が存在し、それぞれに解説文が付いているという徹底ぶりだ。
知識は基本的にいつでも閲覧可能なため、ファンタジー作品にありがちな固有名詞の洪水で状況がわからなくなる、といった事態にも陥りにくい。ちょっとした図鑑のように読むこともでき、気になった存在を後から調べ直すと、この世界の文化や生態が少しずつ見えてくる。

少なくとも数十時間プレイした現時点では、装備や料理のレシピを除けば、知識が増えることで直接的なゲーム上のメリットが得られるわけではない。それでも知識を得ること自体が快感で、やがて筆者は純粋な知的好奇心から「???」と付いた存在を積極的に探すようになっていた。知ることの楽しさが本作の根幹にあり、ゲームプレイの一部として自然に組み込まれている。
システムの複雑さを支える、辞書のようなヘルプ
序盤は地域住民から受けるサイドクエストをこなすことが目標のひとつとなる。印象的なのは、チュートリアルの多さだ。戦闘時の各種アクションから、探索用の特殊スキル、道具を使った細かな行動まで、本作ではできることが非常に多く、特に序盤は頻繁に新しい操作が提示される。ほうきで掃除をしたりハンマーで杭を打ったりと、普通のゲームでは省略されてしまうような行動まで実際に操作できるのが興味深い。

また本作では、人の行動を観察することで新たなスキルを習得することもできる。敵の技を戦闘中に盗んだり、農作業を眺めて「種まき」を覚えたりと、慣れてきた頃に突然新たな概念が出現したり、いつ使うかわからないアクションを覚えたりするため油断ならない。

これほど多くの操作があると「これなんだったっけ」と思うことも少なくない。そうした複雑さを支えているのが、充実したヘルプ機能だ。約350項目におよぶ解説が用意されており、メニューからいつでも確認できる。基本的な操作方法から攻略のTipsまで画像や動画付きで記載され、操作の複雑さを補うようにかなり丁寧に作られている。
ヘルプは発見した内容しか閲覧できない仕組みになっているため、未知の情報で圧倒されることはない。プレイヤーが世界を理解していくペースに合わせて、少しずつ知識が増えていく設計になっている。「知識」システムと同じく膨大な物量を前提にしながらも、プレイヤーを置いてけぼりにしない設計が印象的だ。

偶然の出会いを生むマップ構造
メインクエストが進むにつれて、徐々に遠方の土地へ向かう機会が増えていく。マップにはピンを立てることができるが、未探索の場所には霧がかかっており、ルート案内のような機能は用意されていない。プレイヤーは地形を目視で確認しながら、自分で移動ルートを考える必要がある。

地形には高低差もあり、壁につかまって登ることもできるが、移動手段や気力(スタミナ)の少ない序盤では迂回を余儀なくされることが多い。しかしその道中では、マップに表示されない洞窟や遺跡を発見したり、道行く人に突然話しかけられてイベントが始まったりと、思いがけない出来事に出会うこともある。こうした遠回りが、自然なかたちで偶然の出会いを生み出している。
なお、スキルを成長させれば、伸び縮みするガジェットを使ったハイジャンプや“空中ブランコ”のような移動も可能になる。縦方向の移動手段が増えることで、探索の自由度はさらに広がっていく。

さらに謎の文明「アビス」に関連する場所は重要なポイントとなっており、場合によってはファストトラベル地点として機能する。これらは剣を掲げて光を集めることで、視界内に光って表示される仕組みだ。そのためルート選びに迷ってしまった場合でも、アビスに関連した場所を転々と移動することで、ファストトラベルポイントを確保しながらじっくりと行動範囲を広げていくことができる。

完全な手探りではないが、目的地へ一直線に誘導されるわけでもない。この絶妙な不便さによって、自分の目で世界を見つけていく感覚が保たれている。
自力で解いたと思える謎解き
クエストの途中や探索中には、さまざまなパズルや謎解きが用意されている。明確に謎解きとして配置されているものもあれば、扉がよく見るとスライドパズルになっていたり、壁に何かを差し込めそうな穴が開いていたりと、一見すると見落としてしまいそうな仕掛けも多い。

たとえばある遺跡では、偶然踏んだスイッチによって石像が剣を掲げ、奥の像の目が光る仕組みを発見した。動くとすぐ元に戻ってしまうため最初は戸惑うが、試行錯誤を繰り返すうちに、像の目が光っていないときに動く「だるまさんがころんだ」のようなルールだとわかる。隙を見て近づくことで、最終的にアイテムを入手することができた。
オープンワールドの中で見つかる小規模な謎解きであっても、観察と考察を繰り返し、頭を使わないと解けないものが多い印象だ。小さな違和感から謎の発見、解明までが大きな演出を挟まずにおこなわれることで、「自分の力で解いた」という感覚が強調されている。

謎解きは全体的に目立たず説明も少ないため、プレイヤーは自力で謎を発見し、法則を見つける必要がある。一見すると不親切にも思えるが、その分、自分で発見し、法則を理解して謎を解いたときの感動は大きい。ここでもまた、「わからない」状態から理解へと至る過程そのものが楽しさになっている。
「知ること」そのものが快感になる、高密度な世界
『紅の砂漠』では、できることの多さや物量の多さにまず驚かされる。一方で、知識システムや充実したヘルプによって、プレイヤーが世界を理解していく導線もしっかり整えられている。コンテンツを大量に作って終わりではなく、それを少しずつ知っていく過程がゲームプレイの一部として成立しているのだ。

広大なフィールドや美しいビジュアルといったスケールの大きさにも驚かされるが、プレイヤー自身の発見によって世界の解像度が上がっていく感覚が、本作のオープンワールド体験をより印象深いものにしている。見知らぬ土地を歩き、名前も知らない存在を発見し、それが何なのかを少しずつ理解していく。未知との出会いを楽しめる人にとって、『紅の砂漠』の世界は長く探索し続けたくなる場所になるだろう。
『紅の砂漠』はPC(Steam/Mac App Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中。
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