大ヒット作『ヘルダイバー2』開発元ボスいわく、ライブサービスのバランス調整では“見えない意見”を考える必要がある。圧倒的多数の「物言わぬプレイヤー」

『HELLDIVERS 2』の開発元CEO、Shams Jorjani氏は、公式Discordにてバランス調整にあたって“見えない意見”を考慮する必要があると語った。

Arrowhead Game StudiosのCEO、Shams Jorjani氏は8月31日、『HELLDIVERS 2(ヘルダイバー2)』の公式Discordにて発言。同作のバランス調整などを実施するにあたっては、圧倒的多数を占める“見えない意見”にも耳を傾けるべきとする方針を明らかにしている。

『ヘルダイバー2』は、『HELLDIVERS』の続編となるTPSだ。プレイヤーはスーパーアース連邦のエリート部隊ヘルダイバーの一員となり、宇宙生物のムシ(ターミニッド)や、オートマトンと呼ばれる殺人ロボット、そして高度な文明をもつイルミネイトに立ち向かうミッションに挑む。

本作については、本日9月2日に新大型アップデート「Into the Unjust Deep Dive(秩序なき領域)」がリリース。前回の「Heart of Democracy(民主主義の命運)」とは打って変わって、プレイヤーは敵陣営のひとつ、ターミニッドの本拠地となる惑星群「Hive Worlds」に攻め込む。Hive Worldsでの戦闘で全面的な支援は望めず、一方で新種のターミニッドも存在。新たな脅威に立ち向かうこととなるのだ。

そんな本作については、公式Discordが存在。サーバー参加者が約110万人にものぼる巨大サーバーで、日夜プレイヤー同士の交流がおこなわれたり、意見の交換などが実施されたりしている。今回、Discordユーザーinvader78a氏が本作開発元Arrowhead Game StudiosのCEOであるShams Jorjani氏に向け、意見を求めた。

invader78a氏いわく、今日ではストリーマーやコンテンツクリエイターは、OP武器(強すぎる武器)にばかり注目した、より最適化されたコンテンツを大量に作っているのだという。結果としてそれ以外の武器を悪いとみなし、新しい武器へのプレイヤーの反応も薄くなっているそうだ。つまり、コンテンツクリエイターの活動によってゲームの寿命が短くなっているのではないかとinvader78a氏は危惧しているようだ。同氏はJorjani氏に対し、インフルエンサーのコンテンツ発信の取り扱いについてどう思うかを訊いている。

Jorjani氏はこの質問に対し、「すべてのゲームが直面する課題だ」として、『ヘルダイバー2』に限った問題ではないと発言。そしてインフルエンサーは少数派のプレイスタイルを代表するにすぎないものの、配信プラットフォームと多くの視聴者を獲得することで、多数の人にとっての基準を作ってしまうとの考えを述べた。同氏によれば、『ヘルダイバー2』について、そうした多大な影響力をもつ少数派のデータも定性データとして分析しつつ、その他の大量のデータや指標をもとに調整をおこなっているとした。

またJorjani氏は、「圧倒的多数」のユーザーは黙々とプレイしているとの考えを明らかにした。こうした圧倒的多数は公式Discordに意見を投稿せず、Reddit上にも浮上しない層であるという。そのためそうしたユーザーの意見自体は確認できないものの、Arrowhead Game Studiosの調整が良かったか悪かったかといったフィードバックは、同スタジオ側での統計を通して観測できるそうだ。

ただし、こうした“見えない意見”は、SNS上のユーザーやインフルエンサーの意見と食い違うことも往々にしてあるという。そのため、さまざまなツールなどを活用して分析しつつ、調整をおこなっているようだ。この方針は失敗も頻繁にするうえ、Jorjani氏は開発側が常に正しい判断が出来ているとは限らないとしているものの、最近の評価やプレイヤー数・売り上げの伸びが学びや改善を続けられていることを証明しているとの見解を示した。

昨今では、特にライブサービスとして展開されるゲームなどにおいて、プレイヤーからのフィードバックに基づいて調整の方針を決定することは珍しくないだろう。調整にあたっては、わかりやすく発信された意見だけでなく、圧倒的多数を占めるという“見えない意見”も考慮しなければならないという、調整の難しさが伝えられたかたちだ。特に『ヘルダイバー2』では発売当初バランス調整を巡ってユーザーから苛烈な批判を受けた経緯もある。コミュニティの意見も踏まえつつ、“物言わぬプレイヤー”から寄せられる統計的なデータにも慎重に気を配っている様子がうかがえる。また本作に限らず、SNSなどには映らない、プレイヤー側では観測できないフィードバックも調整に反映されているのだろう。

ちなみに今回の『ヘルダイバー2』のほかにも、過去にはたとえば『GUILTY GEAR -STRIVE-』では、開発ディレクターの片野旭氏がストリーマーなどを起点とするユーザーフィードバックについて言及していたことがある。同氏によれば、あまり同作をプレイしていないものの、競技シーンやストリーミング配信を視聴したユーザーからもゲームの感想が寄せられる傾向があるという。そうしたゲームを飛び出した意見や感想を含め分析・考慮しており、調整が難しくなっている状況があると伝えていた(関連記事)。動画配信サイトなどでもユーザーコミュニティが形成される中で、さまざまな立場のユーザーの意見をそれぞれ偏りなく的確に拾い上げる調整は、ライブサービスゲームにおいて開発元が特に気を配っている点となっているのかもしれない。

『HELLDIVERS 2』は、PC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中だ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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