『League of Legends』のアニメ「アーケイン」が“商業的に失敗した”とする報道に、Riot Games幹部が反論。短期的な収益は重要じゃないとして
Riot Gamesは2024年11月に、自社で展開しているゲーム『League of Legends(LoL)』を原作としたアニメーション「Arcane(アーケイン)」シーズン2をNetflixにて配信。本作品は一部報道にて「制作費用を回収できず、経済的には大失敗だった」とする報道がなされた。この報道にRiot Games幹部が反応。「Arcane」によって短期的な利益の獲得はそもそも狙っていなかったとの見解を明らかにした。
「Arcane」はNetflixで配信されている、『LoL』を原作とするアニメーションだ。全2シーズン18話で構成されており、シーズン1は2021年11月7日より、シーズン2は2024年11月9日よりそれぞれ配信された。舞台となるのはルーンテラなる世界に存在する先進的都市「ピルトーヴァー」、そしてその地下に存在するスラム街のような都市地区「ゾウン」。作中では本家『LoL』のキャラクターでもあるヴァイ/ジンクス姉妹を中心として、ジェイスやケイトリン、エコーなどといった人物などが登場。2都市間の軋轢や、新技術「ヘクステック」を巡った物語が描かれた。
本作は関係各所で絶賛され、アニメ界のアカデミー賞とも呼ばれるアニー賞にて9冠を獲得。映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家/ユーザーともに、90%以上の好評を得る人気作品だ。
そんな「Arcane」について、Bloombergが「商業的には失敗か」との見出しで記事を公開。Bloombergが『LoL』エグゼクティブプロデューサーを務めるPaul Bellezza氏にインタビューしたところ、本作品の制作費用は約2億5000万ドル(約390億円)であると明かされていた。そしてVariety誌が伝えるところではNetflixからRiot Gamesに向けて1話あたり約300万ドルのライセンス料を支払ったとのこと。Riot Gamesの親会社であるテンセントも、中国での配信に際し、Riot Gamesに対して1話あたり約300万ドルを支払ったとされている。
本作は全18話で構成されている。つまり本作の収入は18×600、約1億800万ドル(約170億円)の計算だ。支出が約2億5000万ドル(約390億円)となっており、制作費用の半分も回収できていないことになる。さらにBloombergが関係者証言として伝えるところによると、「Arcane」制作費用の回収についての確固たる計画がなかったという。
またRiot Gamesは今年1月と10月に、選択と集中を理由として合計550人規模のレイオフを実施し、ゲーム事業への注力を図るとしていた(関連記事1、関連記事2)。大規模映像作品が制作される中でレイオフが実施され、プレイヤーベースの大幅な増加などにも繋がっていないとみられるわけだ。Bloombergはそうした点から、「Arcane」が商業的に失敗であったとの見方を示している。
こうした報道などに対し、Riot Gamesの共同創設者であるMarc Merrill氏はReddit上で反応。Merrill氏は、「Arcane」はユーザーにとってもRiot Gamesにとっても夢中になれるものだったとしつつ、「短期的に利益を得ることを重視して作成したわけではない」と述べている。つまり長期的な目線での施策として想定されていたわけだろう。
重ねてMerrill氏は、『LoL』や『VALORANT』でコラボスキンを売るために「Arcane」を作っているのではなく、「Arcane」のようなコンテンツを作るためにコラボスキンを売っていると説明。スキンなどのマネタイズは、新たなコンテンツ展開の資金を得る目的があるという説明のようだ。また同氏は、Riot Gamesはプレイヤーや視聴者に対し、よりよい価値を提供することに焦点を当てているとする方針も述べた。こうした姿勢はゲームに留まらず、eスポーツや音楽、アニメーションといったさまざまな媒体に向けられており、何度も成功を収めてきたとして、“短期的な見方”への反論をおこなった。
Bloombergの記事で述べられたように、映像作品単体の収支で見れば少なくとも短期的には「商業的に失敗した」という見方はできる。しかしMerrill氏の発言を見るに、Riot Gamesとしては短期的な収益ではなく、ユーザーに対する価値創出に重点をおく方針をとっているようだ。
こうした施策は幅広くコンテンツへの興味関心を惹き、作品の世界観を深められるさまざまな体験を提供するものといえる。一方で先述のとおり同社では今年2度にわたるレイオフが実施され、ゲーム事業への注力が掲げられている背景もある。また「Arcane」はシーズン2をもって終了し、今後はシーズン制ではなくスピンオフとして制作されていく可能性があるという(The Direct)。『LoL』のアニメーションを含めて、これからRiot Gamesがどのように新たなマルチメディア展開をしていくのかも注目される。