『原神』リーク者の処罰を求めて、HoYoverseがXにリーク者の情報開示請求するも「X側が異議唱える」。しかし異議は却下され次のステージへ
『原神』のHoYoverseを擁するCOGNOSPHEREは2023年11月、同作のリーク情報を扱うX(旧Twitter)アカウント4つについて、X社に対し個人情報開示を求めるDMCA召喚状を米裁判所に提出していた(関連記事)。この召喚状についてはX社がユーザーのプライバシー保護の観点から異議を申し立てていたものの、裁判所により却下されたことが明らかになった。
『原神』は中国を拠点とするmiHoYoが開発・運営するオープンワールドARPG。同作はmiHoYoの子会社であるCOGNOSPHEREのブランド「HoYoverse」よりグローバル展開されている。同作は世界的に高い人気を誇るゆえか、本来秘密である事前情報を漏洩するリーク行為もあとを絶たない。miHoYo側もリーク行為に対して、実行者を訴え賠償を請求するなど厳粛な対応を取ってきた。
リーク情報を扱うXアカウントへの開示請求
そうした中で2023年11月、COGNOSPHEREがX社に向けてDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づく召喚状を発行し、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提出。X上で『原神』のリーク情報を投稿していた@HutaoLoverGI、@GIHutaoLover、 @HutaoLover77、@FurinaaLoverの4つのアカウントの情報開示を請求した。現時点でこのうち3つのアカウントは凍結済み。@FurinaaLoverについても、ひとつのポストを残して投稿がすべて削除されている。開示が求められたのは、当該アカウント利用者の本名・住所・電話番号・メールアドレスなどの個人情報だ。
当該アカウントはリーク情報として『原神』のスクリーンショットなども投じており、COGNOSPHEREはそうした著作権侵害行為を問題視。開示請求した情報を、著作権侵害を防止するために用いるとしていた。なお召喚状の中では、4つのアカウントがすべて同一人物ないしは同一の組織に運営されているとの見立ても伝えられていた。
一方でX社は、情報開示請求について裁判所に対して異議を申し立てていた(TorrentFreak)。同社はまず、COGNOSPHEREがDMCA召喚状によって、X上の匿名の発言者の正体を暴こうとしていると主張。そのためX社は裁判所に対して、言論の自由を保障するアメリカ合衆国憲法修正1条の法益と照らして、COGNOSPHEREの召喚状の意義や証拠の提示などが十分かどうかを検討するように要請していた。
却下されたX社の異議申し立て
そして今回、X社による上述の異議は却下されたことが明らかになった。TorrentFreakやゲームジャーナリストのStephen Totilo氏が伝えている。却下を伝える文書によると、裁判所は合衆国憲法修正1条と照らし合わせて、COGNOSPHEREのDMCA召喚状が妥当かどうかを検討したとのこと(資料pdf)。当該Xアカウントのおこなった著作権侵害について、COGNOSPHEREが十分な証拠を示していたかどうかや、召喚状の目的が誠実であるかどうかなどが検討されたという。
結果として裁判所は、COGNOSPHEREの求めている情報開示などが妥当であると判断。また開示請求されたアカウントが同社の著作権を侵害していることからも、情報開示の必要性は、合衆国憲法修正1条の法益を上回ると判断されたそうだ。そうしてX側は改めて、リーク情報を扱っていたXアカウントのユーザー情報をCOGNOSPHEREに開示するように求められている。
過去には「異議」が認められた事例も
なおX(旧Twitter)社がDMCA召喚状によるユーザー情報の開示に異議を申し立てたのは今回が初めてではない。たとえば過去にはBayside Advisoryなる企業が、自社が所有する写真の権利を侵害したとして、MrMoneyBagsなるXアカウントの情報開示を求めるDMCA召喚状を裁判所に提出した。X社はこの際にも、合衆国憲法修正1条による言論の自由を損なうと主張。また非営利目的の写真の利用、つまりフェアユースに該当するとして、情報開示に応じなかった(TorrentFreak)。
そしてこちらのケースでは結果的に、裁判所側がX側の主張を認めていた。この際に裁判所は、Bayside Advisoryが写真の権利を有しているという証拠が不十分であると判断。またMrMoneyBagsが実際にはフェアユースに当てはまらず著作権を侵害していた可能性もあるものの、その疑いを暴くためにXのもつ匿名性を損ねるのは妥当ではないといった判断がおこなわれたようだ。
SNSプラットフォームとしてXがもつ匿名性から、DMCA召喚状への異議が認められたケースはあるわけだ。今回のCOGNOSPHEREによるDMCA召喚状についても、裁判所側はX社が合衆国憲法修正1条の法益に基づいて異議を申し立てられる点については認めている。とはいえ今回のDMCA召喚状の対象となったXアカウントが投稿した画像は、権利元がCOGNOSPHEREであることが明白であったとされる。またリーカーによる著作権侵害を食い止めることが合衆国憲法修正1条の法益を上回ると判断されたこともあり、今回はX社の異議は却下されたわけだろう。
いずれにせよ、今回X社の異議が棄却されたことで、『原神』のリーク情報を扱っていたXアカウントのユーザー情報はCOGNOSPHEREに開示される見込み。COGNOSPHEREはこれまでにもさまざまな情報リーカーに毅然とした対応をおこなっており、Redditの本作関連コミュニティではリーク行為を防ぐためのルール新設なども見られる(関連記事)。一部ではリーク行為にやや沈静化の気配も見えるものの、引き続きそうした行為に加担する者には、miHoYo側からの追及がおこなわれることだろう。