『スーパーマリオ64』“目隠し”120枚クリアが達成される。不屈の挑戦、11時間を超える死闘
『スーパーマリオ64』のとある条件下での、120枚RTA(スターを120枚収集)が達成された。今回打ち立てられた記録は、通常のRTAではなく、おそらく誰も達成したことのない「Blindfolded(目隠し)」RTAの記録だ。目隠しをした状態で音だけを頼りに、ゲーム内のすべてのスターを集めきるまでプレイし続けるという、過酷な挑戦となる。
『スーパーマリオ64』は、世界のスピードランコミュニティで根強い人気を持つタイトルだ。リリースから約26年が経つ今もなお、RTA記録は更新されつづけている。特に、すべてのスターを集めるまでの時間を競う120枚RTAは、同作のスピードランにおいて激戦区となっている。昨年には、日本人のバトラ氏が世界記録を更新して話題となった(関連記事)。その後も、世界中のプレイヤーによって記録の更新は続いている。
一方で、本作では、『DanceDanceRevolution』コントローラーや、ドラムを操作に用いたRTAなど、一風変わったスピードランもおこなわれてきた(関連記事)。風変わりなだけでなく、それぞれの条件下での卓越したテクニックは、これらのスピードランの大きな見どころとなっている。そして今回はなんと、目隠しをした状態でゲーム音だけを頼りに120枚RTAを達成するプレイヤーが現れたのだ。
今回、目隠し120枚RTAをクリアしたのはBubzia氏。同氏は、数々のゲームを目隠しでクリアしてきた目隠しRTA界の猛者であり、過去の挑戦の様子はYouTubeやニコニコ動画などの動画サイトに投稿されている。『スーパーマリオ64』だけでなく、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『NieR: Automata』など、その功績は多岐にわたるようだ。
そして、今回の『スーパーマリオ64』における120枚RTAチャレンジは、3月より挑戦が開始された。初回の挑戦では、ファイアバブルランド(Lethal Lava Land)にてコイン100枚を集めて取得するスターがネックとなり、120枚の獲得は断念された。挑戦前のBubzia氏の懸念が的中したかたちだ。そのため、記録は71枚のスター獲得にとどまったものの、それでも挑戦時間は8時間半を超えていた。4月におこなわれた2回目の挑戦では、プレイ時間は約11時間にも及んだ。しかしながら、コントローラーの不調や精神的な疲労が仇となり、惜しくも102枚のスター獲得にとどまった。
そして、今回は3度目の挑戦となる。長時間の過酷な挑戦に際して、今回もエナジーフードや軽食が用意された(食べるときはもちろん目隠しのまま)。立ち上がったときに目隠しを外していないことが確認できるセカンドカメラも用意され、厳重な記録態勢のもと挑戦は始まった。同氏のプレイは手慣れたもので、軽快なプレイは目隠しRTAであることをほとんど感じさせない。ただ、時おり壁張りついたり崖につかまったりして位置取りをチェックするなど、目隠しプレイ特有のテクニックも随所にみられる。
初回で苦汁を飲まされたファイアバブルランドの100枚コインには、今回も苦しめられている。慎重に足場の確認などを重ねながら、コインを91枚まで集めたところで、敵キャラであるどんけつの体当たりを受けるマリオ。なんとか足場から落とされずに済んだものの、位置関係の狂いなどが生じ、Bubzia氏には状況が掴めなくなってしまったようだ。ゲームをポーズして慎重に状況の把握に努める同氏。なんとかマリオの位置を理解して、コイン100枚を集めきり、スターの獲得に成功した。難所を切り抜けた同氏の好プレーにはコメントも“Let’s GO”と沸き立っている。
その後も数々の難所を潜り抜けたBubzia氏は、ついに120枚目のスターに挑戦する。最後の関門となったのは、懸念されていた難所のひとつである「はばたけ!はねスイッチへ(Tower of Wing Cap)」のスターだ。このスターは、はねぼうしを装備したマリオで、空中に配置された8つの赤コインをすべて取得することで出現し、入手できる。
同氏は何度か再挑戦を重ねながらも、6つの赤コインを取得し、最後の2つを残すのみとなった。緻密な位置調整をおこない、再び飛び立とうとするのだが、ここで飛び立つ位置を間違えるという痛恨のミス。これによって位置がズレてしまったため、正しい方向か確信が持てないまま飛び立つことを余儀なくされる。
しかし、ベテラン目隠しプレイヤーであるBubzia氏の勘は冴えわたっていた。空へ飛び立ったマリオは無事に8つの赤コインを集め終え、足場にスターが出現する。気を抜かずに慎重にスターを探り当て、無事にスター120枚の獲得を終えたのであった。歓喜の雄たけびをあげるBubzia氏。コメントも凄まじい盛り上がりを見せていた。
とはいえ、120枚RTAはこれで終わりではない。忘れてはいけないクッパの撃破が残っている。ただ、ここまで困難を乗り越えてきたBubzia氏にとっては、朝飯前であった。クッパに向かうコースでは、クリボーの不意打ちで足場から落とされつつも、リカバリーには通常のスピードランにも利用されるショートカットテクニックを華麗に披露。一度もリトライすることなく、あっさりとクッパを撃破してしまった。颯爽と目隠しを取り去った同氏。晴れて、目隠し120枚RTAの達成である。コメント欄は歓喜のコメントやスタンプで溢れかえり、猫までもが祝福に駆けつけていた。
今回達成された目隠し120枚RTAの記録は、11時間22分43秒となっている。長時間の挑戦ではあるが、Bubzia氏はクリアにかかるタイムを15時間と予想しており、予想よりも3時間30分以上タイムを縮めたかたちだ。2回目の挑戦では、102個のスター獲得に約11時間を要していたことを踏まえると、かなり良いタイムでの達成といえるだろう。三度目の正直で、前人未到のチャレンジを達成したBubzia氏。緻密な位置調整や、失敗時の冷静なリカバリーなどには、同氏の積み重ねてきた目隠しRTAの経験が遺憾なく発揮されていた。
ちなみに、国内での目隠しチャレンジとしては、2014年に投稿された『マリオカートWii』の目隠し走破動画が、先月より突如話題を集めている。そのため、目隠しゲームプレイは、国内外で人気を高めつつあるチャレンジなのかもしれない。気になる人は、記憶と音だけを頼りに、大好きなゲームをプレイし直してみてはいかがだろうか。
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