『ポケモン』ダイパリメイクのアプデで「メニューバグ」消え、RTA界に衝撃。旧バージョン世界新記録は17分と最後の輝き見せる
『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール(以下、ポケモンBDSP)』のバグ利用スピードラン(RTA)がついに20分の壁を破った。そして、その直後に配信された本作アップデート1.1.2は、スピードラン走者に大きな打撃を与えるものだったようだ。
『ポケモンBDSP』では11月19日のリリース以降、バグを利用したAny%(達成度問わず)スピードランのタイムが目覚ましい頻度で更新されていた。11月26日には50分前後でクリアされ、30日にはクリアまで25分以下の領域に(関連記事)。世界記録が目まぐるしく書き換わる状況が続いていた。そして本日12月2日には、17分17秒の記録が叩き出された。20分の壁を大幅に破ったのは、海外スピードラン走者のWerster氏。同氏は一連の世界記録争いで、幾度も記録更新をしている。『ポケモンBDSP』RTAトップランナーのひとりだ。
今回の大幅タイム短縮の鍵となったのは、クリア直前に立ちはだかる四天王のスキップ方法。同氏はクリア23分台を記録した動画にて、「クリア20分を切るには、四天王を効率的に突破する新しい方法が必要」と述べていた。その舌の根も乾かぬうちに、新しい方法が導入されたのだ。四天王は、以前はピッピにんぎょうを利用したバグで突破されていた。今回は単純に主人公が四天王をスルー。そのまま背後の壁にすっと消えて次の部屋に向かっている。まるで心霊現象である。
*動画13分22秒頃より、四天王突破シーン。
Werster氏は記録動画の説明欄で「これが最後のタイム更新になるかもしれない」とコメント。毎日のように新しいルートやスキップが発見されているものの、「もうスキップできるところがない」との見解を示した。同氏は一連のタイム更新を旅に例え、RTAコミュニティ一丸となりここまで短縮できた感慨を語っている。そして、本作のRTAシーンは今後事情が変わる可能性が大きい。奇しくもWerster氏の記録更新直後に配信された本作アップデート1.1.2にて、RTAの重要バグが修正されたのだ。
今回の『ポケモンBDSP』アップデート1.1.2には、複数の不具合修正が含まれている(関連記事)。本作ではゲーム進行を妨げる不具合やポケモン増殖など、多数のバグが報告されていた。詳細な内容は公式に発表されなかったものの、有志検証によれば上述の増殖など複数のバグが修正済みだ。そして、RTAにとって要となるバグ「Menu Storage(メニューバグ)」も修正されたようなのだ。メニューバグとは、所定の操作をおこなうことで、メニューを開いたまま移動などさまざまな行動ができるようになるバグのこと。それだけでは無意味に思えるが、さまざまな技術と組み合わせることで、イベントショートカットを引き起こすことが可能。多数のタイム短縮テクニックの起点となっていた。一連のバグ利用RTAの根幹をなすといっても過言ではないバグだ。
国内外の複数ユーザーが修正を確認しており、日本国内ではYouTuberのとも湯氏が動画にて報告。今後のバージョンではメニューバグを利用した大幅タイム短縮は不可能となる見込みだ。ちなみに一部では「メニューバグを使用しようとするとエラー落ちする」との噂が流布していたが、こちらについては今のところ実証報告は見られない。
通常であれば、ゲームをより安心して遊べるバグ修正はユーザーにとって嬉しいことだ。実際、SNS上などでは今回のアップデートを歓迎するユーザーの声も多く見られる。しかし、バグ利用RTA走者にとって、メニューバグを奪われるのは一大事。スピードラン走者のPulseEffects氏は「みんな自動アップデートをオフにするんだ」と呼びかけ、続くツイートで修正への“悲しみ”を綴っている。また、別のスピードラン走者Glennjamin氏は「自動アプデ切っといてよかった」と安堵のコメント。アップデートにより、バグ利用スピードランはおそらく3時間ほどタイムが遅くなるだろうとの見解を述べている。
海外スピードラン統計サイトSpeedrun.comでは、国内外の走者たちによる競争が過熱し始めたばかりだった。同サイトにおいては、バージョンの違いによってカテゴリーが分かれるケースもある。本作も「1.1.1以前」と「1.1.2以降」でなんらかの区分けがされる可能性はありそうだ。
『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』は、Nintendo Switch向けに現在発売中。
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