『ポケモン』ダイパリメイクが約23分でクリアされる。崖から飛び立ったままポケモンリーグへ突入

 

ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール(以下、ポケモンBDSP)』のスピードラン(RTA)が加速している。約50分だったクリアタイムが、数日にして25分以下に短縮されたのだ。

『ポケモンBDSP』は、2006年にニンテンドーDS向けに発売されたRPG『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』のリメイク作だ。本作はオリジナル版に忠実なゲームプレイが評価される一方で、バグなどの報告も相次いでいる。奇妙ながら些細なバグから、ゲームプレイに支障をきたす不具合まで多様だ。また、バトルをスキップできるようなバグも発見されている。バグの存在は、普通のプレイヤーにとっては楽しみを損ねかねない。しかし、バグをフル活用するAny%(達成度問わず)スピードランに挑む走者にとっては絶好の環境なのだ。
 

 
本作は先月11月19日の発売以降、多数のRTAに活用できるバグが発見されている。発売から約一週間後の11月26日には、海外スピードラン走者のWerster氏がバグをフル活用でクリアタイム50分36秒をマーク。同日深夜には、PulseEffects氏が49分41秒を記録した(関連記事)。そして、それからわずか数日後には30分の壁すらも破られてしまったのだ。

まず11月30日には、日本のRTA走者でVTuberのキャロ氏が『ポケットモンスター シャイニングパール』英語版にて25分45秒の記録を樹立。30分の壁を破り世界記録を更新した。同氏は記録について「多分今日中には抜かされます」と述べ、さらなる高速化を予見していた。そして、その予想は的中することになる。翌日12月1日には、前述のWerster氏がクリアタイム23分13秒を叩き出したのだ。クリア最後の壁となる、チャンピオンのシロナ戦も相変わらずスキップ。セーブの挙動とむしよけスプレーを使って華麗にスルーされている。操作の最適化が進んだためか、殿堂入りのカットシーンまで姿すら見えない。
 

*14分07秒ごろより、後述の崖からジャンプするシーン。メニュー画面で見えにくいが、影の位置に注目。

 
極めて短いスパンで記録更新がなされた背景には、相次ぐ新ルートの開拓があるようだ。Werster氏は記録動画の説明欄にて「ほとんど毎日のように新規ルートが開拓されている」とコメント。著名メンバーを含む、スピードランコミュニティと協力してRTAに取り組む楽しさを述べている。また同氏は、22分台までは最適化により到達できる見込みとしつつ、20分の壁は高いだろうと予想。壁を破るためには、四天王戦の新しいスキップ方法が必要との見解を示している。現在、四天王はピッピにんぎょうを利用したテクニックでスルーされている。ピッピにんぎょうは野生ポケモンの気を引いて戦闘から逃げる道具だ。近い将来、四天王にとってもう少し屈辱的でないスキップ方法が開発されるかもしれない。

海外掲示板Redditでは、今回の記録を伝えるスレッドが立てられ反響が寄せられている。同スレッド上では、スピードラン関係の動画制作者であるEZScape氏も記録についてコメント。今回のタイム短縮の理由について、新たな移動方法が主な理由ではないかと述べている。同氏の分析によれば、Werster氏は今回、崖からジャンプした瞬間に主人公の「高さを保存」するLedgitate(崖浮遊)バグを利用している。そして浮遊状態のまま、グローバルトレードステーションで主人公が強制移動させられる会話イベントを「保存」。四天王とチャンピオンの待つポケモンリーグまで浮遊状態で向かい、会話イベントを進行してポケモンリーグ内に押し込まれることで無理やり侵入しているそうだ。また、浮遊バグに利用するアイテムを取得に時間のかかる「たんけんセット」から「ボロのつりざお」に切り替えたのも短縮ポイントとのこと。

本作スピードランに関する資料や動画も順次公開されている。Werster氏は自身のYouTubeチャンネルにてバグの解説動画を上げているほか、スピードランに関するFAQも公開している。キャロ氏についてもRTAチャートを共有している。また、海外スピードラン統計サイトSpeedrun.comでは11月29日から本作カテゴリーが解禁された。記事執筆現在はキャロ氏の25分45秒がトップ。Werster氏の記録も間もなくランク入りすることだろう。今後のタイム争いにも期待したい。

『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』は、Nintendo Switch向けに現在発売中。

【UPDATE 2021/12/02 15:43】
今月2日、Wester氏が新たに17分17秒の記録を叩き出した。また、その直後に配信されたアップデートがRTA走者に波紋を広げている。詳細はこちらの記事を参照されたい。




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