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「自分がゲーム内の存在と認識する少女」とプレイヤーは友人になれるのか?フィクションキャラと“友だちになる”ゲーム『For the GHOSTs』を今こそ遊んでみよう
サークル「原産国」が手がけたビジュアルノベル『For the GHOSTs』を紹介。本作は2024年1月にSteamでリリースされた作品で、「フィクションのキャラクターと友達になる」ことをテーマに据えている。

Steamでは日々数多くのゲームがリリースされている一方で、個人や少人数チームによる国産タイトルには大作の話題に隠れながらも、独創的なアイデアや強いこだわりを持つ作品が少なくない。本連載「見逃してない? 国産Steamタイトル発掘録」では、同人・インディーゲームを中心に、国産Steamタイトルを毎回1本ずつピックアップして魅力を伝えていきたい。
架空のキャラクターたちと、おしゃべりを楽しむ
連載第13回となる本稿では、サークル「原産国」が手がけたビジュアルノベル『For the GHOSTs』を紹介。本作は2024年1月にSteamでリリースされた作品で、「フィクションのキャラクターと友達になる」ことをテーマに据えている。プレイ時間はおおよそ3〜5時間で、クリックで会話を進めながらキャラクターたちとの交流を楽しむ構成だ。Steamでの評価は323件のレビュー中、98%が好評の「非常に好評」を獲得している。

ゲームを始めるとプレイヤーは「チャンネル」と呼ばれる3つの仮想空間を訪れる。TrunkRoomには素直で友だち思いの「ねずみ」、Aquariumには肉体を持たない「さかな」、Consolationには少し無愛想で口下手な「彩度」と、世界のことを教えてくれる「Acryl」がおり、訪れるたびに彼女たちは好きなものや日々の出来事について話してくれる。飲み物や花、風景について語ったり、友人との関係について話したり。何気ない会話の断片を拾い集めながら、彼女たちの人となりを知っていくのだ。キャラクターの人物像は、プロフィールを読むだけでは見えてこない。何が好きなのか、誰を気にかけているのか、相手にどんな言葉をかけるのか。会話を重ねることで、彼女たちの性格だけでなく、互いの関係も少しずつ浮かび上がってくる。
たとえば彩度は口下手だが、自分なりにコミュニケーションを取ろうとしており、プレイヤーが訪れるたびに手の込んだ飲み物を出してくれる。考えをうまく言葉にできなくても、何かを用意したり、同じ時間を過ごしたりすることで気持ちを伝えようとする。そうした振る舞いに触れるうちに、彼女の不器用さは他者との関係を築こうとする姿勢の表れとして見えてくる。人と仲良くなるうえで、相手の好きなものを知ることは、その人自身を知ることにもつながる。自分の好きなものを相手にも好きになってほしいと思ったり、相手の話をきっかけにそれまで関心のなかったものに興味を持ったりすることもある。好きなものを共有する行為は、互いの世界を少しずつ広げていくのだ。

一方で誰かを大切に思っていても、相手の気持ちを理解できるとは限らない。仲のよい友人同士でも考え方が食い違うことはあり、相手のためを思ってした行動が、かえって相手を傷つけてしまう場合もある。本作ではキャラクターたちが友人について語るなかで、親愛の情だけでなく、すれ違いや悩みも描かれていく。互いを好きでいることと、互いを理解することは同じではない。彼女たちの関係は、そのような友情の難しさも伝えている。
虚構と現実の境界で、プレイヤー自身に問いかける
本作の特徴は、キャラクターたちが自分自身をゲーム内の存在として認識していることだ。彼女たちは自分がコンピュータープログラムのなかにいることや、プレイヤーがゲームを購入して遊んでいる人間であることを踏まえて語りかけてくる。プレイヤーは彼女たちの好きなものや考え方を知り、親しみを感じていく。だが彼女たちがプレイヤーについて知ることのできる範囲には限界がある。交流を重ねているにもかかわらず、両者の間には簡単には埋められない隔たりが存在するのだ。
ゲームのキャラクターが自分の存在を認識し、プレイヤーに語りかけるメタフィクションの仕掛け自体は珍しくない。だが本作では虚構と現実の境界を意識させる演出が、友情やコミュニケーションという主題と結びついている。キャラクターたちがゲームのなかにいると知っているからこそ、プレイヤーは彼女たちとの会話を本当のコミュニケーションと呼べるのか、そもそも相手を理解するとはどういうことなのか、と考えることになる。

虚構のキャラクターが、現実の人間と同じ存在になるわけではない。プレイヤーが彼女たちに親しみを感じても、現実の人間同士のように互いの生活を知り、同じ条件で関係を築けるわけではない。それでも彼女たちとの会話を通じて生まれた感情は、プレイヤー自身のなかに確かに存在する。架空の人物を好きになることも、物語に救われることも、現実の自分が何かを感じた結果だ。
『For the GHOSTs』は、キャラクターたちの好きなものや互いを思う気持ち、うまく伝えられない感情を、会話の積み重ねによって描いていく。静かな体験を通じて浮かび上がるのは、誰かを好きになることや、誰かと関係を築くことの意味だ。他者を完全に理解することはできないが、会話を重ねるなかで相手を知りたいと思うことは多いだろう。他者とのつながりや、フィクションに心を動かされることの意味を考えたい人にとって、本作は今こそ遊んでみたい一作だ。
『For the GHOSTs』は、PC(Steam)向けに配信中。
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