Nintendo Switchでもっともハードコアだといえる中世オープンワールドRPG『キングダムカム・デリバランス ROYAL EDITION』。どうハードコアなのか

Plaionは5月23日、Nintendo Switchにてリリースされた『キングダムカム・デリバランス ROYAL EDITION』のパッケージ版を発売した。本作を遊んだ筆者が、本作がどのようなハードコア体験をもたらしたのかを紹介していく。

Plaionは5月23日、Nintendo Switchにてリリースされた『キングダムカム・デリバランス ROYAL EDITION』のパッケージ版を発売した。定価は税込5980円となっている。『キングダムカム・デリバランス ROYAL EDITION』は、『キングダムカム・デリバランス』にすべてのDLCを収録した完全版となっている。

『キングダムカム・デリバランス』は、Warhouse Studiosが手がけた一人称視点の中世オープンワールドRPG。忠実に再現した15世紀ボヘミアを舞台に、鍛冶屋のひとり息子ヘンリーの視点から、神聖ローマ帝国の壮大な冒険が描かれる。4月19日には、本作の続編となる『Kingdom Come: Deliverance II』を2024年内にリリースすると発表。続編を控えたこのタイミング、予習、もしくは復習として前作を今から遊ぶならNintendo Switch版をおすすめしたい。


なぜなら本作は中世を舞台とした本格的なオープンワールド作品となっており、そのボリュームはストーリークリアだけでも約40時間。サイドクエストなどを踏まえた作品のコンプリートには100時間以上の時間がかかるとされている(参考)。また、本作はストーリーやゲームシステム含め、一言で表すと「ハードコア」な作品となっており、プレイするのになかなか根気が必要。筆者もNintendo Switchでいろいろなゲームを遊んできたが、同ハードの中でもトップクラスのハードコアを誇る。

そんなボリューミーかつハードコアな作品なので、Nintendo Switchで手軽に遊べるのが良い、と言うのが筆者の考えだ。本稿ではNintendo Switch版『キングダムカム・デリバランス ROYAL EDITION』を遊んだ筆者が、本作がどのようなハードコア体験をもたらしたのかを紹介していく。

はじまりからハードコア

先ほど、本作を「ハードコア」と一言で表したが一体全体どこがハードコアなの?と聞かれると正直困る。なぜならストーリーや舞台設定といったはじまりからすでにハードさをまとっているからだ。本作の舞台となる15世紀のボヘミア王国は、国王ベンツェスラウス4世の失政と、そのベンツェスラウスを幽閉したハンガリー国王ジギスムントがボヘミアに侵攻したことにより、暗黒時代を迎えていた。ボヘミア侵攻により、王国の一部の村や土地は焼き払われ、兵士だけでなく村人たちまでもが意味もなく殺されてしまう。そんな無慈悲な侵攻の影響を受け、変化していくのが主人公となる青年、ヘンリーだ。



ヘンリーは村の鍛冶屋の一人息子、といっても昼に目覚め、遅い時間まで友人と酒をのみ、くだらないいたずらに興じる、いわゆるぼんくらな男だ。しかしこの暗黒時代、そんなヘンリーの日常は一瞬で崩れ去る。ある日ジギスムント率いる傭兵部隊が村を襲撃。愛する故郷だけでなく恋人や両親までもを無慈悲に奪われたヘンリーは、復讐の誓いを立て、騎士見習いとしての孤独な旅路を始める。旅を始めたばかりのヘンリーは、まだぼんくらな若者のままで、ないようなスタミナで武器を振りまわし、当てるのにも一苦労な能力の低さ。加えて武器はおろか食事すらもほとんどないし、金に関しては多少の借金を課されている。そんな状態でこの暗黒時代の中世にほっぽり出されるため、生きるのにも精一杯だ。旅に至るまでもハードコア、旅に出てもハードコアなのだ。


リアルでハードな世界で感じる成長

能力も道具もない、金に至っては若干の借金がある状態でスタートする本作のハードな旅路だが、旅をすることになるボヘミア王国は自然溢れる美しい大地。また、ヘンリーが比較的早い段階で訪れることになるラッタイの街は、実在する建物などを元にかなり精巧な制作をしているため、リアリティは抜群。巨大な城門や監視塔、宗教画が壁に大きく描かれる修道院などは歩いているとついヨーロッパ旅行に来た気分になる。

 


だからといってのんびりとぶらり旅に興じられないのが暗黒時代のボヘミア。各地にはジギスムントの傭兵たちや、襲撃後の村を狙う追い剥ぎや盗賊などがあたりをうろついており、うっかり鉢合わせてしまうと一大事。特にゲーム序盤はヘンリーのステータスも低いため、1人の盗賊を倒すことにすらかなりの時間を要してしまう。対集団なんてのはもってのほかで、遭遇したら即逃亡することを絶対のルールにしてほしいほど危険だ。


また、オープンワールドゲームでは頻用されがちファストトラベルも、本作のヘンリーにとっては長い旅路。ファストトラベルを使うとマップ内でコマが目的地まで移動するのだが、その間ランダムでイベントが発生。中には盗賊の集団と出くわすイベントもあり、その状況に対する選択に失敗するとマップが強制的に閉じられ、戦闘に移ってしまうのだ。オープンワールドゲームだとファストトラベル使いまくりな筆者だが、本作では慎重にルート取りをすることを徹底。自分の道は自分で決めて、自分の身は自分で守る。暗黒時代ボヘミアの鉄則だ。

戦闘をできるだけ避け、少しでも長く生きるのも大事だが、流石にそればっかりではヘンリーの復讐劇は夢のまた夢。戦闘はできるだけ避けつつ、少しでもステータスを上げることが重要だ。メインストーリーにてヘンリーはとある出来事から騎士見習いとして、訓練や見回り、雑用などを任せられる。訓練をこなせば筋力や武器スキルが上がるし、見回りでうまくトラブルに対処したら、話術やカリスマを上昇させることができる。力自慢なのか、口八丁なのか、どのようにヘンリーを活かすのかはプレイヤーの行動と選択次第。最初は難しくうまくいかない戦闘や弓なども、スキルを上げれば安定していくし、会話の選択も話術を上げれば言いくるめられる率があがる。


最初こそ世界の過酷さと残酷さに打ちひしがれるが、プレイヤーが難しい操作に慣れていくうちに、ヘンリーも同時に成長するのが本作の良いところ。最初こそ何もできないぼんくら青年だったのが、着実に、少しずつ強くなっていくため、感動も凄まじい。過去ここまで成長を感じられるようなオープンワールドゲームはあっただろうか?とも思える。これはまさしくハードコアな世界だからこそ得られる成長の実感だろう。

手広く楽しいアクティビティ。だけど責任も伴う

暗黒時代のボヘミアを生きるため、ヘンリーの復讐劇を果たすためにボヘミア中を奔走するのもよいが、ずっと堅苦しく任務や戦闘を続けるのも疲れてしまうはず。そういった時はサイドクエストやアクティビティに興じてみよう。ボヘミア王国には様々なサイドクエストやアクティビティなどの寄り道があり、そのどれもがしっかりと遊びがいのあるもので満足度が高い。馬上レースや女性キャラクターとのデート、ボヘミアに自生する植物を収集し、酒やポーションを錬金することもできる。

もっともベタなアクティビティとしては、ファークルというダイスを使って役を作るゲームがあるのだが、これがかなりヒリつくギャンブル性の高いものとなっている。筆者はこのファークルで危うく人生……いや、ヘンリー生を失いかけた。ゲーム最序盤、まだ村に襲撃が来る前、父からお使いを頼まれるのだが、どうしても金が足りない。ふと店の後ろをみるとファークルのテーブル。ルールを知らぬままなんとなく話しかけ、なんとなく金をかけてゲームスタート。

ルールは長くなるので各自調べてほしいのだが、少量のポイントを保有して堅実に勝つか、大役を狙って差をつけるかの駆け引きが非常にヒリつく。最初は少量の掛け金だったのだが、さらなるヒリつきを求め次第に高レートな勝負へと移る。そして、気付いたころには負けてスッカラカン。結局持っておきたかったアイテムを売却しアイテムを購入。余った金で少しだけファークルをし、財布を空にして帰ってきた。父には遅いと怒られた。さらにこのファークル、進めるとイカサマダイスなる要素も追加されるのがまた面白いところなのだが、それはまたの機会に……。


こういったアクティビティ、楽しいのはもちろんなのだが、何事もやり過ぎると責任が伴うところが本作らしいポイント。例えば、一部のサイドクエストには高収入なダーティーワークが存在する。序盤、ヘンリーが借金することになる粉引き屋の男がいるのだが、借金を手早く返すために許可のない家宅への侵入と、許可のない家財の持ち込みを命じられる。簡単にいうと泥棒だ。本作には基礎スキルや戦闘スキルなどのように、ピッキングやスリなどといった犯罪のスキルが存在し、なろうと思えば犯罪王にだってなることができる。


ただ、普通に生きるのもハードなこの暗黒時代に犯罪王になるということは、かなりの覚悟が必要。まず本作は犯罪を見られると当たり前のように街の評判を下げることとなる。また、犯罪行為を見られた状態で逃亡を続けると、指名手配され、逮捕後には投獄される可能性もある。街中でのピッキングやスリ行為は用心するべきだ。そしてここで手に入れたアイテムは一般のルートでは売却することができない。なので専用の売り場に行くまで盗品を持ち歩かなければ行けないのだが、そこで立ちはだかるのが衛兵の荷物検査だ。本作では街中にいると、衛兵から声をかけられ、ほぼ強制的に荷物検査に応じさせられることとなり、ここで盗品を持っていることがバレると一発アウト。やはりこの暗黒時代、街にいる知らない人間をおちおち放っておけないのだろう。

この荷物検査、無視すると指名手配入りされたりとさらに厄介なことになるのでできるなら協力してあげるのが吉なのだが、街での評判が悪かったり、服に泥や血がついていたりすると、現実社会と同じように声がかけられやすくなる。なのでできるだけ身なりを整え、面倒ごとを避けるようにしたいのだが、そういった時は街のハズレにある浴場に寄ってみよう。浴場では体や装備を洗ってくれるだけでなく、時間経過で伸びるヒゲや髪を切ってくれたりと様々なサービスを受けることができる。高額な金額を払って受ける特別なサービスなどもあるので、数々の犯罪で心が汚れていても、衛兵に疑われないくらい清い体を保つことは可能なのだ。

↑もし話しかけられてもさまざまな方法で対処は可能

これらの要素はあくまでも寄り道なのだが、そういったサイドクエストやアクティビティにもやり過ぎると責任がのしかかってくるのが本作の面白さ。何をするにも責任が伴うのは、確かにハードなのだが、リスクがあるからこそ、やったほうが得だからやろういう義務感は薄れ、自分の好きなような1人旅が堪能できるのではないだろうか。成功も失敗も起こり得る世界だからこそ、旅は更に楽しくなるのである。

ハードコアな旅の行く末とは

以上が、筆者が本作をプレイして体感したハードコアさと、そこから生まれるプレイの楽しさである。このハードコアさはNintendo Switchのゲームの中では一番といっても差し支えないと感じる。しかし、据え置き機やPCで遊ぶとそのハードコアさ故に、時間を作ってどっぷりと遊びたくなるのだが、携帯モードに対応しているNintendo Switchで遊ぶと、暗黒時代中世ボヘミアの旅はちょっとだけお気軽になり、ハードコアな体験をライトに楽しみやすくなる。ライトでお気軽に楽しめるからこそ、プレイする機会も増え、よりハードコアさから生まれる成長の楽しさや自由度を楽しめるのではないだろうか。



そして本作は何よりもストーリーが面白い。ぼんくらな青年が泥臭く成長していくサクセスストーリーでもあるし、史実に基づいた壮大な歴史ドラマでもある本作。ヘンリーの旅路を進めるたびに、その2つの要素がゆっくりと交差していく感覚は、海外ドラマを見ているそれに近い。日本語吹き替えにも完全対応した見事な翻訳で世界に没入しやすいのもいいポイント。家に帰ってきてTVモードでどっぷりと世界に入りこむのも、携帯モードで寝る前にお布団で気軽にストーリーを楽しむのも、どっちのプレイングも楽しそうだ。2024年内に発売を控える『Kingdom Come: Deliverance II』に備えつつ、Nintendo Switchで中世暗黒時代のボヘミアを気軽に体験し、ヘンリーのハードコアな旅の行く末を見届けてほしい。

キングダムカム・デリバランス ROYAL EDITION』Nintendo Switch向けパッケージ版は、5月23日発売予定だ。ダウンロード版は配信中。どちらも定価は税込5980円となっている。

Tamio Kimura
Tamio Kimura

エンタメ大好き系ゲーマー。COOPゲームが大好き、クライム系だったらなおよし。

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