Steamほのぼの殺伐オンラインサバイバル『Longvinter』開発元インタビュー。『Rust』の影響を受けて、なぜか「かわいい×サバイバル」が生まれた

ほのぼの殺伐オンラインサバイバルゲーム『Longvinter』開発元インタビュー。かわいいグラフィックでありつつも、『Longvinter』にはPvP要素もあり、ゲームジャンルはサバイバルであるゲームの正体とは。

『Longvinter』は、2022年2月 よりSteamにて早期アクセス配信されているサバイバルゲームだ。現在開催中のSteamオータムセールでも対象となっており、30%オフでゲームを購入できる。本作のメインビジュアルを見て、任天堂の人気シリーズ『どうぶつの森』を思い浮かべた方もいるのではないだろうか。


しかしかわいいグラフィックでありつつも、『Longvinter』にはPvP要素もあり、ゲームジャンルはサバイバルである。開発を手がけるのはフィンランドのヘルシンキに拠点を置くUuvana Studios。開発陣によるとゲームジャンルとアートスタイルの異色の組み合わせは「自然な流れで生まれた」のだという。

このたび弊誌は、Uuvana Studiosの共同設立者Teo Ikäläinen氏、Niklas Nilsson氏にメールインタビューを実施。『Longvinter』が生まれた経緯や、早期アクセス配信開始から現在にかけてのゲームの状況などについて伺った。


野心的なことをしたくて

――スタジオ共同設立者のお二人について自己紹介をお願いします。また本作以前にゲーム開発経験はありましたか?

Teo Ikäläinen氏(リードデザイナー/スタジオ共同設立者、以下Ikäläinen氏):
私とNilssonは、secondary school(日本の中学校にあたる)で13歳の時に出会いました。自由時間に同じ種類のゲームを楽しんだり、休み時間にゲームの話をしたりして、仲良くなりました。

ゲーム制作の最初の経験は、9歳の時にフラッシュゲームを作ろうとしていたことです。それはうまくいかなかったけど、その後に『Team Fortress 2』や『Counter-Strike』のマップを作りました。私たちは『Longvinter』を作る前から、Unreal Engineについてかなり幅広い知識をもっていたんです。

――スタジオ設立に至った経緯を教えていただけますか?

Ikäläinen氏:
当初は、UnityとUnreal Engine向けのアセットパックを作るために立ち上げたスタジオでした。本業に疲れてしまい、もっと野心的なことをしたかったんです。会社を設立して間もなく、徐々にゲーム制作へと舵を切りました。


『Rust』から強烈な影響を受けて

――『Longvinter』ではなぜ「かわいい」と「サバイバル」を組み合わせようと思ったのでしょうか。

Ikäläinen氏:
2013年に『Rust』を初めてプレイしてからずっと、自分でサバイバルゲームを作りたかったんです。実際に制作することになって、かわいいアートスタイルを選んだことは、私にとっては自然なことでした。サバイバルに限らず、すべてのジャンルにおいて、リアルなグラフィックのゲームはすでにいくつも存在していますよね。ですから、リアルな表現にはもう惹かれなかったんです。

――かわいいグラフィックも相まって、これまでサバイバルゲームに触れたことがないユーザーも多いのではないでしょうか。本作はどういった遊ばれ方をしていますか?

Ikäläinen氏:
ほとんどの人は、本作を通じてほかのプレイヤーとの交流を楽しんでくれているようですね。『Rust』でも見かけるようなPvPを好むプレイヤーもいる傍らで、心地良い世界を作り上げて暮らすことを好むプレイヤーもいます。相手を打ち負かすことを好むタイプもいる一方、友達や見知らぬ人の助けを借りて何かを成し遂げることを好むタイプもいます。同じ「他人との関わり」を楽しむプレイヤー層でも、違った楽しみ方をしてくれていますね。

――早期アクセス配信開始から1年半以上経ちました。この間、ゲーム内容やコミュニティとの関わりについて、どのような変化がありましたか?

Niklas Nilsson氏(テクニカルディレクター/スタジオ共同設立者、以下Nilsson氏):
『Longvinter』はソーシャルな要素に深く根ざしています。PvPサーバー、PvEサーバー共に人気があることからも明らかです。これまでに、協力プレイの喜びを増幅させる機能や要素をたくさん実装してきました。たとえば、プレイヤーは、自販機を作ることができます。拠点の近くを通りかかる人に向けて、クラフトしたアイテムや探索で見つけてきたアイテムを販売できるのです。

伝統的なプレイヤー同士の取引機能、フレンドを認識するためのチーム機能、拠点のシェア機能などの実装も、協力プレイを楽しんでもらうための取り組みの一環です。目標としては、それぞれのサーバーの独自の経済発展をサポートするツールを作ることでした。各プレイヤーは、ゲーム内の好きなアクティビティを通して得たアイテムの売却だけで、やりくりしていくことができます。素晴らしいことに、このすべての経済システムは「プレイヤー同士の交流」によって成長してきたんですよ。

「ほのぼのしたかわいいグラフィック」と「激しい銃撃戦やレイド」という対照的なものが融合した『Longvinter』が、多種多様なプレイヤーに愛されていることに喜びを感じています。


かわいさとサバイバルさの天秤

――「グラフィックのかわいさ」と「サバイバルゲームであること」のバランスを取るのに苦労された点はありますか?

Ikäläinen氏:
変わった組み合わせであることは確かです。でも、決して難しいことはなく、開発はすべてがごく自然に進みました。もちろん、本作にPvP要素があることにびっくりするプレイヤーもいらっしゃるでしょう。フレンドリーで、のんびりできるゲームだと思っていたでしょうから。実際本作には、のんびりできる一面もあります。ほのぼの楽しめる面がありながらも、ほかのプレイヤーを倒してしまったり、ゲーム進行の妨害をしてしまったりすることもできます。そういった部分も含めて、このゲームなんです。

――本作では銃声やチェーンソー音も響き渡る一方で、音楽や環境音も印象的です。サウンドにおいては、どのような点にこだわってデザインされましたか?

Ikäläinen氏:
メランコリックで、悲しくて、そして時にはすこしミステリアスな雰囲気になるようデザインしました。「のんびり楽しめて、友達を作るゲームというだけではないんだ。もっと何かあるぞ」と、ほのめかすようなイメージです。

音楽のスタイルは、私が『Longvinter』を作り始めるずっと前に書いた古い曲から来ています。ゲームの雰囲気にフィットすると感じて、メインメニューのテーマにも採用しています。本作に使われている楽曲は、すべてその古い曲の「1トラック」から生まれたんですよ。

新たに曲が必要になったときに、なるべく作曲の負担が重くならないよう、ほとんどピアノ音のみの構成としました。中には、本当にただピアノのみで構成されている曲もいくつかあります。

ゲームに使われている音は、ほとんどがほかのプロジェクトのために私たちが録音したサウンドです。銃声でさえも、微調整を加えることによって、『Longvinter』にとても合うようになりました。


「やや好評」からさらに好評を得るために

――本作はさまざまなプレイヤーによる交流が盛んな点も特徴的ですが、今後コミュニケーション機能を追加する予定はありますか?

Nilsson氏:
カスタマイズ性の拡張と個性を表現できる機能の追加を考えています。まずは、見た目の面で、プレイヤーごとに見分けがつきやすくなるよう、服飾系アイテムの追加を予定しています。そして、コミュニケーションを円滑にするため、絵文字機能の開発も進めています。この機能はホイールメニューから簡単にアクセスできて、「ありがとう」や「こんにちは」といった基本的なフレーズを表現できるものです。受け手側のプレイヤーの言語に関わらず簡単なコミュニケーションを取れる仕組みにもなるでしょう。

――現在(インタビュー当時)のSteamユーザーレビューの評価は「やや好評」ステータスですが、もっと向上させたいのではないかと思います。どのようなアプローチを考えていますか。

Nilsson氏:
私たちは、常に開発チームのビジョンに沿ってゲームの改善に取り組んでいます。現在、「最近のレビュー」の項目については「非常に好評」ステータスとなっており、とても光栄に思います。これまでに改善してきた内容が、プレイヤーの皆さんに喜んでいただけたからこそ、このような評価をいただけたのでしょう。

私は週に一度、新規プレイヤーの皆さんからのレビューに必ず目を通し、好評/不評の両方のレビュー数を測定しています。また、私たちのDiscordサーバーでは、誰もが『Longvinter』について話し合える場を提供しています。問い合わせにはコミュニティマネージャーが答えますし、プレイヤーの皆さんからゲーム内の修正・変更についての提案を受け付けるフォーラムもあります。私はそれらに目を通して、どんなアイデアがプレイヤーにとって魅力的なのか確認しているんです。皆さんの洞察力のおかげで、メジャーなものからマイナーなものまで、ゲーム内QoL向上のための機能をたくさん取り入れることができています。

また開発チームにはゲームの今後についての総括的なビジョンもある一方で、より豊かなコンテンツを追加し、既存のゲーム内容を洗練させていくことにも尽力しています。さらに、新規プレイヤーにより良いゲーム体験をしてもらうための機能強化にも重きを置いています。そのために、ゲーム内にひと通りのチュートリアル機能を設けられるように開発中です。

また、次の課題としては、料理とアイテムに関するシステムの刷新を考えています。現在、料理を作る際に特定のアイテムが必要ですが、新システムでは、もっと自由度が高くなります。どの食料アイテムでも暖炉に投入できるようになりますし、それが50種類以上追加予定の新レシピの中のひとつともなるでしょう。

ほかの大きな追加点としては、料理に複数のバフやステータス効果を組み合わせることができる機能を考えています。料理の自由度が上がるだけでなく、戦略性が生まれます。目的にあわせて賢く準備することで、より実りのある戦闘や探索がおこなえるのです。

 
――まだ『Longvinter』をプレイしたことがない読者に向けて本作のアピールポイントを教えてください。

Ikäläinen氏:
私にとって、本作は西部開拓時代やサンドボックスのような性質をもつゲームです。ほかのプレイヤーとの交流において、従わなければならないルールがそれほど多くありません。そのため、ほかのプレイヤーと出会うたびに、新しくユニークなやり取りを楽しめるんです。

Nilsson氏:
私はゲーム内で自分のお店を始めて、ご近所さんと仲良くなることを楽しんでいます。そして、新たに追加したバンカーや洞窟といったロケーションもお気に入りです。探索やPvE要素を楽しむには打ってつけの作品ですよ。

――ありがとうございました。

以上、『Longvinter』開発スタジオの共同設立者、Teo Ikäläinen氏、Niklas Nilsson氏のインタビューをお届けした。『Longvinter』はSteamにて早期アクセス配信中だ。なお、本日11月22日より開催中のSteamオータムセールの対象商品にもなっている。

Maho Ikemi
Maho Ikemi

ニュースを担当します。物心ついた時にはゲームに囲まれていました。この先もゲームとともに楽しく過ごしたいと思っています。

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