『リネージュW』は、話も世界観も暗すぎてクセになる。「ダーク エルフ」実装前に振り返る、引き込まれるような陰鬱設定

『リネージュW』は2ndエピソード:ダーク エルフ」を配信開始した。新クラスの「ダーク エルフ」が追加されるこのタイミングで、これまで『リネージュW』をプレイしたことがない方に向けて物語やキャラクターの魅力をお伝えしたい。

NCSOFTは5月4日、『リネージュW』の大型アップデート「2ndエピソード:ダーク エルフ」を実施する。新たなクラスとして「ダーク エルフ」が登場するほか、関連する村として「沈黙の洞窟」を訪れることも可能となる。2月23日にリリースされた「1stエピソード:アデン」に続く2度目の大型アップデートとして、そしてリリース後初の新クラス実装ということで、期待を寄せているプレイヤーもいることだろう。

『リネージュW』は、開発元であるNCSOFTの拠点がある韓国を中心に人気の高いMMORPGだ。昨年11月4日に世界同時リリースを果たし、 現在iOS/Android/PC(PURPLE)にてプレイ可能である。MMORPG『リネージュ』シリーズは韓国の同名マンガを原作とし、骨太なストーリーも特徴の1つだ。『リネージュW』もその例に漏れず、重厚な世界観や独特でダークなシナリオが魅力になっている。凄惨で暗鬱としたストーリーに王道の熱い展開、そしてほんのりとブラックユーモアを内包した『リネージュW』の物語は、暗く殺伐としつつもクセになる味わいだ。

本稿では、新クラスの「ダーク エルフ」が追加されるこのタイミングで、これまで『リネージュW』をプレイしたことがない方に向けて物語やキャラクターの魅力をお伝えしたいと思う。ダークながらも時折コミカルなブラックユーモアが挟まれるクエストの数々や、そこに登場する魅力的なNPCたち、プレイアブルキャラクターたちが背負うシリアスな過去など、『リネージュW』の面白さが少しでも伝われば幸いだ。


暗く凄惨、ときどきコミカルな物語

リネージュW』では、初代『リネージュ』後の時間軸の物語が描かれる。とはいえ、前作を遊んだことがない方でも問題なくストーリーは理解可能だ。筆者は恥ずかしながら初代『リネージュ』も『リネージュ2』も未プレイ。しかし、『リネージュW』のシナリオや世界観を楽しむのに支障はなかった。

本作のメインストーリーは、暗く陰惨な展開が多い。『リネージュW』には今回追加される「ダーク エルフ」のほかに、4種類のクラスが存在する。プレイヤーの分身である彼らはゲーム本編開始より前にさまざまな出来事を体験しており、みな重い過去を背負っている(この過去については後ほど語らせていただきたい)。重い過去に触れたのち、すべてのクラスでたどり着くのが「話せる島」という場所だ。この場所への迎え入れられ方はさまざまだが、どのクラスも村人連続失踪事件の調査を命じられるところから、「話せる島」での物語がはじまる。

メインストーリーでは、儀式のために生きた若者の手足が捧げられたり、処刑として村に人が吊るされていたりと、暗く凄惨な展開も少なくない。見下ろし視点のためカメラは遠めではあるものの、飛び散る血しぶきや人体の破損がはっきりと描かれ、ムービーで死体や血が映されることもある。グロテスクな描写が苦手な方は注意が必要だが、単に露悪的な演出というわけではなく、惨たらしい展開を正面から描ききろうという気概からくるもののように感じた。


『リネージュW』のストーリーはシリアスな展開が多いものの、それゆえに時折はさみこまれるユーモアが隠し味のように効いてくる。たとえば、序盤にエンチャントについて教えてくれるNPC・フェイラーは、変身の巻物を使わずに変身を試み、首から上がニワトリの状態で登場。そのあとにもやや怪しい挙動を繰り返す、“迷”NPCである。そのほかにもオークに変身して潜入任務をこなすNPC・リウダンのふるまいがオークに寄ってしまうシーンなど、時折見られるコミカルなシーンがスパイス的に作用。ダークな物語とユーモアが相互に引き立て合っている。


魅力的なNPCの存在も、本作の世界観に深みを増している。たとえば、最初にプレイヤーが調査する村人失踪事件では、過去に赤騎士団の団長であったラインハルト卿が力を貸してくれる。過去に強大な悪魔と戦ったことで、魂だけの存在となって眠っていたラインハルト卿。そんな彼がこの事件の元凶を倒すために打つ手については、ネタバレとなるためここでは伏せさせていただく。しかし、これがとにかく熱い展開であったことだけはお伝えしたい。また、各クラスゆかりのNPCがシナリオの重要人物となることも多く、「このクラスで物語を進めて良かった」と思えるような場面も多々あった。


『リネージュW』の物語は、ダークさにほんの少しのコミカルを添えた世界観と、魅力的なNPCたちによって支えられている。次項では、プレイヤーの分身たる各クラスのキャラクターたちの過去についてご紹介したい。


重い過去を背負うプレイアブルキャラクターたち

『リネージュW』には今回追加される「ダーク エルフ」のほかに、4種類のクラスが存在する。プレイヤーの分身である彼らはゲーム本編より前の時間軸でさまざまな出来事を体験しており、みな重い過去を背負っている。なかにはクラスによって同じ事件を別の視点から経験しているという場合もあり、導入部分だけでもさまざまなクラスをプレイすることで『リネージュW』の物語をより深く理解することができる。

たとえば、クラスのひとつである「君主」は、偉大な英雄王の血を継ぐアデン公爵家の長子だ。しかし、王位継承権をめぐる争いから屋敷に攻め込まれ、目の前で両親が凶刃に倒れる。なんとか屋敷を抜け出し、老騎士バベット卿とともに逃亡することに成功した幼き君主だったが、その後の日々は過酷なものだった。幼少期の傷を抱えながら月日を経て成長した君主は、バベット卿とともに“話せる島”にいた。そこで島の防衛を担う赤騎士団の団長バルテンより、騎士の任命を受けようとするところから物語ははじまる。凋落した貴族の子供という王道のストーリーで、頼れる老騎士バベット卿との関係も熱いのが「君主」クラスである。


続いて近接クラス「騎士」について紹介しよう。騎士とは、正義の道を歩み、崇高な血の誓いに献身する者たちである。そう教えられた騎士の主人公は、黒蛇騎士団のもとでアデン公爵家襲撃に参加する。しかし騎士としての正義を教えてくれたはずの黒蛇騎士団長ライオスによる残虐行為や、襲撃後に無辜の人々が処刑される様子を見て、騎士の在り方に疑問を抱く。10年後、出自を伏せて“話せる島”で傭兵として働く主人公は、赤騎士団長バルテンからとある事件の解決を依頼される。

「騎士」クラスの導入シナリオは君主のものとリンクしており、1つの事件を2つの視点から見ることができるという、非常に面白い構成になっている。導入シナリオだけならそう長いプレイは必要ないため、「君主」が気に入った方は是非「騎士」でもプレイしていただきたい。


続いては「魔術師」だ。孤児の生まれで、魔術師のエクシードに育てられていた主人公。魔術を学ぶ日々を過ごしていた主人公は、ある日次元の狭間にて、封印されていた記憶を「異界の悪魔」に解かれそうになる。かろうじてエクシードに救い出され浄化の儀式を受けるも、悪魔は主人公の身を付け狙っていることが判明。エクシードは主人公に、“話せる島”の赤騎士団長バルテンに会い、悪魔と深い関わりのある“死の気”の問題を解決するように命じる。4クラスの中では一番「なぜ“話せる島”を訪れたのか」がわかりやすいのが「魔術師」である。過去に不明な部分も多いため、想像を膨らませながらプレイしたい人におすすめだ。


そして「エルフ」について。エルフの森で暮らしていた主人公はスピリッドと呼ばれる存在に惑わされ、味方のエルフを怪物と誤認して皆殺しにしてしまう。エルフの有力者ジリアンに助け出された主人公だったが、味方殺しの罪は重く、償いのために人間世界に送られることになる。“話せる島”にたどり着き、案内人から投げかけられる言葉は「君はこれから一生罪を償いながら生きていかなければならない」というもの。背負った味方殺しの罪の重さを初っ端から味わわされるのが「エルフ」の物語である。


「ダーク エルフ」の過去にも期待大

さて、ここまで既存のストーリーやクラスの物語について説明してきたが、冒頭に記したように5月4日には新クラスである「ダーク エルフ」が実装される。彼らもまた重厚でシリアスな過去を背負っているのかもしれないと思うと、筆者としては期待が止まらないところである。「ダーク エルフ」の世界観設定や旅立ちの経緯はいかなるものとなるのだろうか。公開されている情報やNCSOFTからいただいた資料をもとに紐解いていこう。

『リネージュW』の特設サイトによると、「ダーク エルフ」は力を求めた末に堕落し、不滅性を失ったエルフのようだ。既存クラスの「エルフ」とルーツは同じくするものの、信仰の違いから袂を分かち、肌の色も変化。それまで暮らしていたエルフの森を離れ、古代の巨人たちが作った遺跡である地下大空洞で暮らしていた。長きにわたって地下を出ることのなかったダーク エルフたちだったが、先代の遺訓には近いうちに破局が訪れることが予言されていた。ダーク エルフたちは地上へと舞い戻り、破局を防ぐために旅をすることになる。

「ダーク エルフ」の紹介トレーラーを見ると、血を流して倒れる老人や、集落を襲う異形、怯えながら隠れる子供など、ただならぬ雰囲気が漂っている。ダーク エルフの青年が異形を倒す際の描写も生々しく、これまでの『リネージュW』と変わらない、ダークなテイストの導入が期待できそうだ。

二刀とクロウ(爪)を操る「ダーク エルフ」は、「近距離の暗殺者」をコンセプトとするアタッカーだ。ステルス状態から多彩な毒を相手に与えることができ、敵を撹乱して戦況をひっくり返すことが可能なクラスである。また、「ダーク エルフ」だけが使用できる固有魔法「黒精霊魔法」のほか、初歩的な一般魔法も使用可能だ。また、既存クラスから「ダーク エルフ」へクラスチェンジできるサービスも開始される。「ダーク エルフ」が気になり、いますぐ遊んでみたいという方は試してみてはいかがだろうか。


以上、『リネージュW』の世界観やシナリオ面での魅力や、プレイアブルキャラクターの背景についてご紹介した。本作が長い歴史を持つ『リネージュ』シリーズの1つとして、MMORPGでありつつ世界設定やキャラクター個人のシナリオにも力を注いでいるタイトルであることがおわかりいただけただろうか。殺伐としたダークな世界観ながら、時折コミカルなブラックユーモアを交えて進む本作のシナリオは、好きな人にはたまらない塩梅である。本稿を読んで本作が気になった方は、ぜひともこの機会にプレイしていただきたい。

新たに「ダーク エルフ」という種族が加わり、重厚な世界観により深い彩りの増した『リネージュW』。今後も多くのアップデートが予定されており、これからの展開にも期待がかかるタイトルとなりそうだ。『リネージュW』はiOS/Android/PC(PURPLE)向けに基本無料で配信中。大型アップデート「2ndエピソード:ダーク エルフ」は、本日5月4日配信開始である。


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Aki Nogishi
Aki Nogishi

ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。

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