超大作オープンワールド『紅の砂漠』先行プレイ感想。攻略自由度高し、『ブレワイ』ぽさも『キングダムカム』みもある、贅沢パワフルオープンワールドゲーム
超大作オープンワールドゲーム『紅の砂漠』の最新デモ版のプレイを踏まえて、その内容をお届けする。

超大作オープンワールドアドベンチャーとして話題沸騰中の『紅の砂漠』。このたび「東京ゲームショウ2025」にて日本初のプレイアブル出展が決定しているが、幸いにしてこのバージョンと同じデモ版をプレイすることができた。本稿ではその模様をお伝えしよう。
『紅の砂漠』はMMORPG『黒い砂漠』の開発・運営で著名なPearl Abyssによる、オープンワールドアクションアドベンチャーゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S/Mac App Store。発売日は2026年3月19日を予定している。
ゲームの舞台となるのは「ファイウェル大陸」。主人公「クリフ」は「灰色たてがみ団」に所属する傭兵だ。しかし、敵対組織「黒い熊」による襲撃を受け、1夜にして傭兵団は壊滅してしまう。「クリフ」は復讐者として、離れ離れになった仲間たち、そして失ったものを取り戻すため旅にでる。
何でもできそうな入力体験

筆者の試遊体験はチュートリアルから始まった。移動、攻撃、防御へと操作方法を続々と学んでいく。そして、この時点からゲームの中に明確な驚きがあった。覚えるコマンドが非常に多いのだ。「片手剣」を使った攻撃であれば、簡単なボタン連打で繰り出せる通常攻撃のほかに、回転斬りや縦斬り、属性をまとわせての大技がある。「槍」や「斧」であれば、突いたり、薙ぎ払ったりといった行動が可能。盾を構えつつパリィを行ったり、突撃したりもできる。攻撃手段といえば、武器を使わない体術もある。即座に接近して敵を怯ませる掌底をはじめ、小型の敵であれば掴んで投げ飛ばす、といったアクションもできる。
さらには、弓矢を用いての遠距離攻撃の存在も確認した。撃ち方もいろいろあり、矢に属性攻撃をまとわせれば、遠くのターゲットに火をつける、凍らせるといった芸当も可能だ。移動については魔法を用いての滑空をはじめ、ワイヤーアクション、乗馬、地面に掌底することでの上昇といったラインナップが確認できた。折れた旗印などオブジェクトを魔法で「持ち上げる」というアクションもあった。

面白いのは、この豊富なアクション1つ1つがシームレスに接続して、さまざまな効果を発揮するという点だ。たとえば、このような連携がある。「地面に掌底して浮く⇢ワイヤーアクションで高所に振り子のような形で飛び移る⇢アクションを途中でキャンセルして、遠心力を持ったまま長距離を滑空」という具合だ。戦闘の場合は、「武器を切り替える攻撃」、「弓矢による回避攻撃」が存在することを活かして「掌底で高速接近⇢槍で攻撃⇢剣に切り替えながら攻撃⇢回避しつつ弓矢で滑り撃ち」という連携をスムーズに決めることができる。さらに個々人によるアレンジの幅も広い。接近技を掌底ではなく盾突撃にすれば、速度は落ちるが攻防一体で動けるし、回転斬りを連打することで、前に踏み込みつつ攻撃しながら間合いを調節できる。魔法で上昇して空中から攻撃をするのもアリだ。もちろん、連携を意識せずとも適当にボタンをガチャガチャ入力するだけで楽しい。いろんな技が自然につながるため、カッコいい絵が簡単に撮れる。
こういった豊富な入力を体験の前提とする作品は、1時間ほど稽古場に籠もってトレーニングするのが筆者の恒例である。しかし、今回の試遊時間は50分しかない。もっと練習したい気持ちを抑えつつ、『紅の砂漠』の世界へ降り立つのだった。
何でもできそうな戦場を駆ける

文字通り空中へ飛び降りる過程を経て、本作の舞台であるファイウェル大陸に降り立つ筆者。まずは周囲を見渡し、目に映る光景をしみじみ楽しむ。『紅の砂漠』はオープンワールドアドベンチャーであり、よって「視界に映る大部分に足を運べるのだろう」と心踊らせたのもつかの間。本作のとある点に驚かされた。それは描画されているNPCの多さだ。今回の試遊ではとある戦争に介入し、敵拠点を破壊するというシークエンスを体験することになっている。よって、自軍の拠点に到着するところからプレイがスタートするわけだが、拠点に集結している人間の多さよ。礼儀正しく待機している軍人たちをはじめ、食料や商機を求めてか、浮浪者や商売人といった人たちも集う。この描写自体は軍記物のファンタジーでよくある光景ではあるが、本作では拠点が明確に「混雑」している。戦争という極限状態によってさまざまな人間が忙しなく動かされている。試遊版では彼らに対して何かアクションをすることは叶わず、無断で陣地の私有物を盗ってもお咎めなしだったが、それだけで終わるわけではなさそうだ。
陣営を観察したら、前哨戦として砲台の修理と砲撃のアクションをこなす。まずは魔法で物を「持ち上げる」アクションを使い、部品を運搬する。これ以外にも、味方勢力の旗印を持ち上げて設置することで士気を上げたり、折れた柱を持ち上げて振り回すことで武器にすることができたりと、「持ち上げる」アクションは主にさまざまなギミックを解決するため存在するという印象である。砲台が完成したら敵拠点に砲撃を行う。監視塔に的当てを行うシンプルなミニゲームだが、作中世界に能動的な形で介入し、没入を得るという点において、非常に効果的だ。
続けて、敵の拠点を破壊するため戦場に攻め入る。そして戦場に存在する人の数に再び驚く。多くのNPCが戦場のあちこちでリアルタイムに戦っており、本作はタクティカルシミュレションゲームだったか?と錯覚させてくれる。油断すれば一瞬で敵に取り囲まれ、身動きが取れなくなってしまうほどの人口密度だ。そんな状況で役に立ったのが、「投げ技」のように敵を自分の周囲から退ける技であったり、「氷属性」を武器にまとわせて敵を拘束する技だったりする。
また、空爆のような威力を誇る、支援攻撃を受けることができた。鏑矢を放ち、その場所に爆撃が発生する仕組みだ。波のように兵士が押し寄せてきたとしても、この爆撃支援によって状況を切り返すことができる。ここでひらめく筆者。もしかするとこの爆撃を破壊対象に打ち込むことができれば、わざわざ拠点に乗り込まずとも、ゲームクリアになるのではないか……?今回の試遊における制限時間は50分。終わりがすでに差し迫っていたのは、これまでの経験上、直感で理解していた。まだボス戦の試遊が残っている。やるしかない。
敵の拠点を取り囲む柵を乗り越えるように矢を打ち込むと、瞬間火の雨が降り注ぎ、敵兵士もろとも建物を粉々に破壊していく。任務達成である。本作におけるゲームの進行は比較的自由な形に設定しているという。たとえば「何かに火を付ける」という任務に対して、直接火種を持っていってもいいし、魔法をまとわせた弓矢で遠くから火をつけても良い。製品版では、プレイヤーのロールプレイを通じた創意工夫を可能な限り尊重するような内容に仕上げていきたいとのことだ。

仲間の救援に成功したカットシーンのあと、試遊体験は最後の段階へ突入……ボス戦が始まった。彼は巨大な体格と高速移動を両立しており、多彩なモーションを駆使して凄まじい勢いで攻め立ててくる。回避を行いながらモーションを観察してみるものの、まるで隙が無い。しかし、隙が無いなら作れば良い。プレイ最初のトレーニングを思い出す筆者。体術を絡めた連携ならば、敵を一瞬怯ませることができるはずだ。魔法を込めた掌底を起点に、怯んだところへ剣による連撃を叩き込んでいく。回避をしながら間合いの外に向かい、弓矢で追撃を挟む。攻撃は最大の防御。猛攻には猛攻で対応する。
本作のボス戦には専用ゲージが設定されており、削りきると敵はダウンして一定時間動かなくなる。いわゆるチャンスタイム到来だ。ここで「持ち上げる」アクションが光る。戦いのさなかに崩落した柱を持ち上げ、敵に向かって振り回す。大ダメージが入った。試遊の制限時間が迫るなか、なんとか撃破を達成。独自のゲームエンジン「BlackSpace Engine」によって描かれた美しいカットシーンを挟んだら、烽火台に火を灯す作業を経て、試遊終了である(この火を灯す作業についても、実際、手段は問わないそうだ)。
なんとも贅沢なオープンワールド

現時点における筆者のインプレッションとしては、既存の類型作品を綺麗に良いとこ取りしたオープンワールド作品という印象である。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のように、プレイヤーの発想をもとにアクションの連携を駆使すれば、その場から空を滑空したり、楽にイベントをこなすことができる。それでも物語が破綻しない美しさは『キングダムカム・デリバランス』シリーズを思い出す。オープンワールドが描き出す「世界とプレイヤーの個性」に関しても『サイバーパンク2077』のように、人口密度のある生き生きとした空間の中で展開される、多彩な戦闘スタイルや問題へのアプローチによって表現できている。そして、こういった印象の羅列は本作が没個性気味であるということを意味しているわけではない。というのも、今回の試遊においては、作品のメインディッシュとなる物語体験を詳細に味わうことが出来ていないからだ(既存の著名作を綺麗にまとめている時点で十分個性的ではあるが)。
つまり、「類型作品のいいとこ取り」が前菜になっている。そのうえで本作ならではの体験が「おあずけ」にされている。先行プレイ側としてはクリフハンガーだった。現時点で公開されている情報としては、採鉱 、採集、釣り、製作など、 豊富な生活要素が用意されていたり、クエスト、ダンジョン、パズル要素など、多彩なコンテンツが存在するという。物語の中ではさまざまな勢力と主人公が関わることになるようだ。なんとも贅沢な作りである。
通常、試遊をすると、筆者の場合は作品の品質に関して満足し、安堵を覚えて発売日を待とう、という心持ちになるのだが、今回は違った。思わず「もっと遊ばせてほしい」「続きはまだ?」と開発者に言いたくなるような、空腹を刺激されてしまったかのような試遊体験だった。発売日が楽しみである。
『紅の砂漠』は2026年3月19日に発売予定だ。