「NEOGEO AES+」はNEOGEO未経験ゲーマーも“凄さ”がわかる完全再現。エミュではなく「チップを一から開発」、なぜそこまでするのか開発者に訊く

「NEOGEO後世代」である筆者が、時を超えて如実に感じたNEOGEOの貫禄、AES+としての復活の背景にある、開発者の執念と誠実さをお伝えする。

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PLAIONは2027年9月16日、NEOGEO互換ゲーム機「NEOGEO AES+」を発売する。通常版の価格は3万2800円。ホワイトカラーが採用され、特別パッケージの『METAL SLUG』が同梱される「Anniversary Edition」は4万9800円となる。

今回弊誌は、東京ゲームショウ2026に出展したNEOGEO AES+(以下、AES+)ブースにて、実際に本機を触り、開発者にインタビューする機会をいただいた。「NEOGEO後世代」である筆者が、時を超えて如実に感じたNEOGEOの貫禄、AES+としての復活の背景にある、開発者の執念と誠実さをお伝えする。

AES+は、SNKが1990年以降に展開したゲーム機・NEOGEO(ネオジオ)の家庭用機の復刻版だ。オリジナル版のNEOGEOは、「アーケードゲーム機用タイトルを、そのままのクオリティで家庭でも楽しめる」というコンセプトのもと業務用(MVS)・家庭用(AES)が展開された。当時は家庭用機よりもアーケードの業務用機体の方が高性能であった背景もあり、画期的なゲーム機として評価を受けた。

そのAESが今、SNKの協力のもとPLAIONのレトロゲーム機復刻レーベルREPLAIからAES+として再誕することとなった。本機の最大の特徴は、エミュレーションなどを用いない「本物の再現」である。

というのも、近年の復刻レトロゲーム機は、広く流通していてコストも比較的安く抑えられ、機体設計に盛り込みやすい汎用チップを採用している場合が多い。ゲーム機そのものの回路や挙動はあくまでソフトウェア内の演算で模倣(エミュレート)するわけだ。また、ハードウェアを使って再現した機体の例もあるものの、汎用的なFPGA(内部の回路を書き換えられる集積回路チップ)を利用しての実装であったりする。

一方で、AES+は「再現のためだけ」に専用のASICチップを開発し、オリジナル版AESの回路をチップの中に凝縮・再現している。あえて大きな技術的ハードルとコストを乗り越えて「本物」を作り出す、執念の実装となっているわけだ。そのため、当時のNEOGEOカセットも動けば挙動もまったく同じとなっている。

また、当然ながらその外装などについても妥協なくオリジナル版AESが再現されており、周辺機器や復刻カセットも、オリジナル版との互換性をもっている。一方で、コントローラー等のワイヤレス接続対応や低遅延HDMI出力、DIPスイッチによる言語や動作の変更といった新機能も搭載。往年のNEOGEOを愛するファンたちが、現代の環境で遊びやすいようパワーアップもしているわけだ。

ところで、筆者はNEOGEOが展開された当時、2歳である。必然的にNEOGEOに触れる機会は少なく、幼少期にゲームセンターで『メタルスラッグ(METAL SLUG)』といった名作に触れた経験がある程度だった。そのためオリジナル版との比較はできないものの、裏を返せば「初めてNEOGEO AESに触れるプレイヤー」として新鮮に本機を試遊することができた。

まずはAES+で動く『メタルスラッグ』を遊んでみると、子どもの頃アーケードで遊んだ思い出が一気に蘇り、感激とノスタルジーを覚えた。オリジナル版の強みである「アーケードとまったく同じ体験」が現代に蘇っていることを実感できたわけだ。

続いて復刻タイトル『ティンクルスタースプライツ』『ショックトルーパーズ』『オーバートップ』など、筆者が未経験の作品たちも遊んでみた。するとその体験の色褪せなさ、上質さに驚くこととなった。なめらかなフレームレートやスプライト表現の豊かさ、そして操作への反応の良さはNEOGEOの性能由来であろう、遊んだ全タイトルに共通していた。

そして、ビジュアルからゲームデザインに至るまでの丁寧さも伝わった。アーケードと同時展開が前提にあるため、とっつきやすく遊びやすいことも求められたのだろう。どの作品も、当時の開発者たちがプレイヤーを魅了するために練り込んだ工夫で溢れていた。総じて、「35年前のゲーマーが感じたのとそのまま同じNEOGEOの底力を、自分もいま、肌で感じている」と思わされた試遊体験であった。

その後、REPLAIのシニアプロダクトマーケティングマネージャーであるNamer Merli氏より本機についてプレゼンテーションを受け、続いて開発者インタビューの時間をいただいた。話を訊けたのは、開発者のひとりであるコマーシャルディレクターのBen Jones氏だ。これほどのこだわりを込めてAES+が作られたのは何故か、どういった人物が開発しているのか。以下にお伝えしていく。

──AES+で初めてNEOGEO AESを体験したのですが独特の魅力がありました。業務用/家庭用NEOGEOの魅力とは具体的になんだと思われますか。

Ben Jones(以下、Ben)氏:
当時のSNKは、ゲームセンターというシーンの中で、収益をあげるためにも「パッと見て面白さがわかりプレイしたくなる、そして何度も遊びたくなるゲーム」を作る必要がありました。なので、リリースされる作品は高品質な名作揃いとなったのでしょう。

私は当時からNEOGEOの作品を遊んでいましたが、今でもプレイしたくなります。最大の魅力はその「先の時代まで通じるような、ものすごく良いゲームを作る」というところでしょう。とはいえ、私も歳を取ったので最近は『ビッグトーナメントゴルフ』といったペースのゆっくりした作品が好みです。

──エミュレーションなどではなく、ASICによるハードウェアでの再現という、とてもハードルの高いやり方を選ばれた理由を教えてください。

Ben氏:
私はこれまで多くのレトロゲーム機の復刻版に携わってきましたが、基本的にはどれもエミュレーションが採用されていました。今回、SNKから正式にAES+を作る光栄な機会をもらい、「この復刻機は特別でなければ」と思いました。SNK、そしてNEOGEOは当時からのゲーマーたちに強く愛されている特別な存在です。

そしてSNKは過去にエミュレーションを利用した機体を制作していましたから、ハードルを上げて最高のものを作りたいと思うのは自然なことでした。そのためにはチップから作り、機体はオリジナル版と寸分たがわず、カセットも同じで、操作レバーの感触まで完璧である必要がありました。SNKはそれだけのリスペクトにふさわしい存在ですから。

──オリジナル版AESのハードウェアをASICに落とし込むことはとても困難な挑戦だったと思います。

Ben氏:
そうですね、私が思うに、もっとも難しかったのはオリジナル版の中にあるチップをすべて作り直す部分でした。というのも、当時のAESに関する技術資料にその部分はなく、Seanがすべてのチップをリバースエンジニアリングし、Brunoが調べ上げた情報から新たなチップを設計しました(*)。その工程がもっとも難しく、長くかかりましたね。一つのチップの挙動が違えば全てが台無しになるので、膨大な数のすべてのチップを完璧に再現してまとめ上げなければなりませんでしたから。

実をいえば、今回のブース出展がAES+を完璧に仕上げてから初のお披露目でした。なので、ASICを開発したのは私ではなく仲間たちではありますが、AES+が完成して一般公開できて本当にほっとしています。

(*)テクノロジーコンサルタントのSean ‘Furrtek’ Gonsalves氏と、テクノロジーディレクターのBruno Steux氏。

──ほかにも、当時との違いなどによる困難はありましたか。

Ben氏:
なにもかも困難だらけでした。発売日の延期にも影響した大きな問題としては、「カセットに使うメモリーチップの品薄」、具体的にはパラレルNORフラッシュメモリの入手難がありました。このチップを大量に用意する必要があったのですが、おそらくAIの隆盛による需要急騰などが原因となり、1年は待たないと買うことすらできず……。

そこで私たちは計画を変更して、違うタイプのメモリーチップを利用できるようにしました。それに成功したのも最近のことでしたから、私にとっては恐らくもっとも大きな困難だったと思います。過去20年ほどを振り返っても、どんなチップでも必要になれば手に入るものでしたから、品薄で買えないという現状が信じられませんでした。

──AES+タイトルラインナップのうち、『ゼロウイング』(東亜プラン開発)はオリジナル版NEOGEOに展開されなかった新規移植作品ですよね。今後「NEOGEO向け完全新作」のような展開や、インディー開発者サポートの可能性はありますか。

Ben氏:
まず、リリースされるタイトルには複数の種類があります。過去作の再販については、カセットと権利関係とアートワークが整っていれば、工数はかかりますがそこまで難しくはありません。そして言うなれば「エンハンスドゲーム」と呼べるタイプがあり、『ビッグトーナメントゴルフ』のように、オリジナル版と別のバージョンから追加コンテンツを盛り込んだタイトルです。そして『ゼロウイング』のような他機種からの移植タイトル、こうしたオリジナル版になかったタイトルの登場はとても興奮しますし、当時の多くのアーケードゲームがNEOGEO移植にうってつけだと思います。ここまでは通常の復刻より複雑ですが、可能です。

しかし、完全な新規開発タイトルは最高難易度といえるでしょう。NEOGEO向けゲームに取り組んでいるインディーデベロッパーの存在も把握していますが、新規開発には莫大な時間的・金銭的コストもかかります。新作のリリースを手伝うことは私の夢でもありますが、実現させるにはまずはもっと多くのタイトルを展開し、AES+を普及させ、採算なども考慮して好機を狙わなければなりません。要するに、「私にとっても是非やりたいけど、長期目線で進めなければ」といったところです。

──AES+の発表後、オリジナル版のファンから強い反響がありました。どのように感じられましたか。

Ben氏:
本当に嬉しく思いました。これだけ長い期間努力を積み重ね、どのようなリアクションが来るかとても不安でしたから。ただ忘れてはいけないのが、これは私の成果ではないということです。苦労もありましたが、私はただ復刻プロジェクトを進めただけで、上手くいったのはSNKとNEOGEOが培った評判とファンの愛情があったからこそです。SNKの偉大な功績を保存し、未来に伝えることに少しでも寄与できたのなら、私は幸せです。

左からNamer Merli氏とBen Jones氏で、右は今回お力添えいただいた通訳の方だ。開発陣の「一緒に写ろう!」の一言で入っていただき、とてもよい笑顔が並んだ。Ben氏らの人柄がわかる一幕。


──Benさんには「NEOGEOの思い出」も沢山あると思いますが、ひとつ挙げるとしたら。

Ben氏:
私は当時、『ストリートファイターII』の大ファンだったんです。90年代にはゲームセンターが隆盛を誇っていましたし、みんな行列をなして『ストリートファイターII』に並んでいました。強いプレイヤーがずっと筐体でプレイし続けていて、私はいつも列に並んでいました。そこで……貶しているように聞こえないとよいのですが(笑)ふと目に入ったのが稼働したばかりのNEOGEO MVSの筐体でした。列に並ぶのをやめてそちらをプレイして、以来多くのNEOGEO向けタイトルを遊びましたね。それが特に思い出深い記憶です。

──日本の読者に向けて、メッセージをお願いいたします。

Ben氏:
とにかく単純に、AES+を買ってくれた人、カセットを買ってくれた人たちに、末永く楽しんでもらいたいです。私にとって、開発に取り組む目的のひとつは「人を幸せにしたい」ということで、AES+で楽しんでくれればこんなに励みになることはありません。

──ありがとうございました。

「NEOGEO AES+」は、2027年9月16日発売予定。各エディションや周辺機器の詳細については、AES+公式サイトを確認してほしい。なお、現在発表されている発売予定タイトルについては以下のとおり。

• 『メタルスラッグ』
• 『ザ・キング・オブ・ファイターズ 2002』
• 『餓狼 MARK OF THE WOLVES』
• 『サムライスピリッツ零SPECIAL』
• 『ショックトルーパーズ』
• 『ビッグトーナメントゴルフ』
• 『パルスター』
• 『ティンクルスタースプライツ』
• 『マジシャンロード』
• 『オーバートップ』
• 『ゼロウイング』
• 『マジカルドロップII&III』
• 『ファイターズヒストリーダイナマイト』
• 『ミラクルアドベンチャー』
• 『ダンクドリーム』

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Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

記事本文: 2003