新作RPG『SacriFire』は、単なる「HD-2DっぽいRPG」ではない。探索も戦闘もターン制とアクションを融合させた意欲作[BitSummit the 13th感想]

90年代日本のRPGから影響を受けた3Dとドット絵が融合したRPG『SacriFire』(サクリファイア)を紹介していく。

日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit the 13th」が7月18日から3日間、京都市勧業館「みやこめっせ」にて開催された。本稿では会場にプレイアブル出展されていた作品の中から、デベロッパーのPixelated Milkが手がける『SacriFire』(サクリファイア)を紹介していく。対応プラットフォームはPC(Steam/GOG.com)およびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch。

『SacriFire』は、90年代日本のRPGから影響を受けた3Dとドット絵が融合したRPGだ。SFとファンタジーの要素を持つ世界には悪魔がのさばっており、数千年に及ぶ戦いの末に人々はヘルゲートで守られた地下都市アンティオキアに身を寄せていた。教会に仕える戦士エゼキエルは、悪魔からアンティオキアの人々を守るために日々奮闘しているが、あることをきっかけに大きな陰謀に巻き込まれていく。広大な地下都市アンティオキア と、死者や神も存在する美しき精神世界エレボスを行き来しながら、世界の真実を解き明かすのだ。

HD-2D風のグラフィックと横スクアクションのようなダンジョン探索

試遊版では、教会の訓練兵である主人公エゼキエルが宿舎で目覚めるところからスタート。これから正式に精鋭部隊へと任命されるらしく教会へと向かうことに。キャラクターを動かせるようになってまず目を引くのは、緻密なドット絵で描かれたキャラクターと3D背景のフィールドだ。昨今は2Dと3Dが融合したスクウェア・エニックスの“HD-2D”風のグラフィック表現の作品が増えているが、本作の3D背景には、イラストとドット絵の中間のようなテクスチャが使われており、ドット絵のキャラクターと絶妙にマッチしている印象であった。

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先へ進むと美しく描かれた教会前の広場に圧倒された。配置されているNPCキャラクターのドット絵とモーションも多岐に渡っており、先々に登場するであろうロケーションにも期待が高まる。仲間となりそうなキャラクターたちと出会い、教会で戦士になる儀式を終えると、突如として謎の人物による襲撃を受け、主人公は一人追いかけていく。ちなみに、ここまでの街フィールドは奥行もあり前後にも動かすことが可能だ。

追いかけていく場面はダンジョンとなり、グラフィック表現は変わらないものの横スクロールのフィールドとなる。奥行のある廊下など特定の場所でのみ前後へと軸移動できるイメージだ。このような横スクロールになっている理由として、ダンジョン探索が2Dアクションとして構成されていることが挙げられる。ダンジョンにおいてプレイヤーは2段ジャンプしたり、縁を掴んだりして高所へ登ることも可能。落下するような足場をジャンプアクションを駆使して進む場面もあり、2Dアクションとして探索を楽しめるようになっているわけだ。

また、本作はシンボルエンカウント制でありながら、徘徊する敵に対してフィールドアクションで攻撃することも可能。少なくとも試遊においては、どんな敵も一撃で撃破できた。さらに、興味深いシステムとしてフィールドアクションで撃破した敵は0.8倍の経験値が最大5回分ストックされる。ストック経験値は通常の戦闘を完了すると入手できる。上手く利用すれば探索に集中できるようになり、アクションとシンボルエンカウントが融合した斬新なシステムと言えるだろう。ちなみに、エンカウントする敵との向きによってバトル開始時の有利不利も発生する。

ターン制コマンドとリアルタイムアクションが融合した新たなバトルシステム

バトルシステムについても紹介しよう。ターン制コマンドとリアルタイムアクションの融合といえば『FF7リメイク』シリーズのバトルシステムを思い浮かべる方も多いだろう。本作のバトルは似ている部分もありつつ、異なる融合を遂げている。まず、シンボルエンカウントすると奥行のあるバトルフィールドに移行。キャラクターはバトルフィールド上をリアルタイムで前後左右に動くことが可能で、時間経過やフィールドに頻繁に出現する光る玉を取得することでAPが溜まっていく。敵の遠距離攻撃に対してはAPを消費して回避することも可能だ。

そして、攻撃が本作ならではのシステムとなっている。コマンドボタンを押すと時間停止し、AP1消費の弱攻撃もしくはAP2消費の強攻撃を発動可能。この攻撃中はプレイヤー以外の時間は止まったまま、つまり「プレイヤーのターン」となり、APがある限り弱攻撃と強攻撃のコンボを繋げることができる。弱と強のコンボルートによってモーションやダメージも変わっていくのだ。本作は『ゼノギアス』に影響を受けていることが公言されており、同作ではコンボルートによって強力な技も発動していたため先へ進めばそういった要素もあるかもしれない。また、これらの攻撃のほか魔法やアイテムを使うことも可能だ。

なお、敵の攻撃を回避できるとは書いたが、敵にもAPゲージが存在し、攻撃範囲に入ると敵以外の時間が一時停止、つまり「敵のターン」となる。その場合は回避不可の攻撃を受けてしまうので、近づかれないような立ち回りや敵の行動前に撃破するといった駆け引きが生まれる。まさにターン制コマンドとリアルタイムアクションの融合となっているわけだ。

このほか、試遊では体験できなかったが、仲間との共闘要素や『ベイグラントストーリー』のように部位を選択して破壊する要素、戦闘中に武器を切り替える要素、武器種ことのスキルツリーやカスタマイズ要素などもあるという。ストーリーを進めることで試遊で体験したバトルシステムから数段階の変化を楽しめそうだ。

なお、本作のバトルシステムは斬新であるがゆえにチュートリアルが分かりづらいのは否めない。文章でも可能な限り分かりやすく伝えたつもりだが、本作のバトルシステムは実際にプレイしないと理解するのは難しい印象だ。試遊後に開発者に話を伺ったところ、そういった意見は把握しており、発売までにより分かりやすいチュートリアルを構築することを検討しているそうだ。斬新なバトルシステムに興味のある方はチェックしてみてはいかがだろうか。


『SacriFire』はPC(Steam/GOG.com)向けに、2026年第1四半期に配信予定。PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch向けには2026年後半にリリース予定となっている。

Haruki Maeda
Haruki Maeda

3DアクションRPGと犬をこよなく愛するPCゲーマー。『フォールガイズ』のようなわちゃわちゃ系も大好きです。

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