『ステラーブレイド』PC版、中国ユーザーが半分以上との調査報告。3日で100万本のカギは「中国需要」狙い撃ちか

『ステラーブレイド』PC版は3日で100万本の売上を記録する勢いを見せた。この理由について、アナリストが独自データに基づき分析をおこなっている。

Shift Upは6月12日、『ステラーブレイド(Stellar Blade)』をPC(Steam/Epic Gamesストア)向けにリリース。同作PC版は1週間足らずで100万本を突破した。このスピード売上本数達成について、ゲーム業界アナリストが成功の理由を分析し、見解を示している。“爆売れ”の背景には、マーケティングだけでなく中国ユーザーへのアプローチもあったようだ。

『ステラーブレイド』は、侵略者から地球を取り戻すために戦うアクション・アドベンチャーゲームだ。本作の地球は、突如現れたネイティブと呼ばれる敵に襲われ、占領されていた。コロニーから降り立った兵士イヴは、人類の未来を取り戻すため、地球に残った生存者アダムや、かつて空挺部隊の隊員であるリリーと協力し、ネイティブに立ち向かうこととなる。

本作は2024年4月にPS5向けに先行リリースされ、今年6月12日にPC版が発売。PC版は発売から3日で販売本数100万本を突破したことが発表された。PS5版の約2か月で100万本売上突破のペースと比較すると、かなりスピーディーな売れ行きであったことがうかがえる。このことについて、ゲーム市場分析会社Alinea Analyticsに所属する、アナリストのRhys Elliott氏が、独自の集計データを用いて分析をおこなっている

Elliott氏はまずAlinea Analyticsによる推定値として、『ステラーブレイド』を含む複数のSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)タイトルのSteam版の初週売上本数を比較。1位こそ120万本を売り上げた『ヘルダイバー2』に譲っているが、『ステラーブレイド』は110万本で2位につけている。『ゴースト・オブ・ツシマ』や『Horizon Zero Dawn』などの初週売上を超えており、シングルプレイのSIEタイトルのなかでトップの売れ行きと言える。

一方でAlinea Analyticsの日ごとの売上推定値によれば、発売一週目以降も勢いを維持し続けた『ヘルダイバー2』に対し、『ステラーブレイド』は横這い気味の傾向にあるようだ。グラフの傾きを見る限り、『ヘルダイバー2』を超えることはなさそうに見える。

Image Credit: Alinea Analytics
SIEパブリッシングの各ソフトにおける、Steam版初週売上
Image Credit: Alinea Analytics
横軸が発売からの経過日数、縦軸が売上本数のグラフ(緑が『ステラーブレイド』、青が『ヘルダイバー2』)

とはいえ『ステラーブレイド』PC版リリース直後の勢いは目を見張るものがある。Elliott氏はこの勢いについて、中国市場の大きさを挙げている。同氏によれば、『ステラーブレイド』PC版のSteamでのプレイヤー割合としては、55.9%が中国ユーザーなのだという。なおアメリカユーザーは13.0%だそうだ。実際にユーザーレビュー言語の内訳をSteam Scoutで確認すると、簡体字中国語のレビュー割合が48.3%ある。レビュー数の割合が直接ユーザー数に反映されるものではないとはいえ、中国ユーザーの多さをうかがわせる結果となっている。

中国ユーザーの増加について、Elliott氏は『ステラーブレイド』が「中国向けのサービス」を盛り込んでいたことが成功の要因と分析している。たとえばPC版ではPS5版発売時点で実装されていなかった中国語音声に対応。加えて中国語のリップシンクにも対応しており、プレイ時の没入感がより増している。中国ユーザーにとっては嬉しい機能アップデートだろう。

加えて、『ステラーブレイド』は中国では268元で販売されており、日本円に換算すれば約5420円となっている。対して米国では59.99ドル(約8715円)、日本では7980円だ。Steamにて59.99米ドルの作品は、中国向けには400元弱で販売されていることが多い。物価の違いや平均収入といった要素がある都合上、異なる通貨での価格設定を一概に比較することはできないが、お安めに設定されているとみられる価格も『ステラーブレイド』が売上を伸ばしている要因のひとつといえそうだ。

Steamでは昨年8月に発売された『黒神話:悟空』が中国語ユーザーを中心に大ヒットを記録。同作発売後にはSteamの中国語ユーザーベースが拡大を見せるといった状況もあった。また同作のヒットを受けて、中国ではシングルプレイの大型ゲームの需要の高さが注目を集めているという(関連記事1関連記事2)。

そうした状況を見てか、Shift Upは2月の業績発表で、『ステラーブレイド』のPC版展開においてはアジア地域でのシングルプレイゲーム需要を狙う戦略を伝えていた。この一環か、先述した中国語の吹替・リップシンクの実装のほか、PC版展開にあわせてはチャイナドレスを模した新ナノスーツ(スキン)「クリムゾンウィング」が配布された。

また先に述べた268元という価格設定は、実は『黒神話:悟空』のSteamでの価格設定と同じだ。そのほか『ステラーブレイド』に関しては、動画配信サイトBilibiliなどでリリース前より盛んに動画が公開されていた。そうした入念なプロモーション戦略も大ヒットをもたらしたのかもしれない。

ちなみに『ステラーブレイド』を手がけたShift Upがモバイル向けに展開している『勝利の女神:NIKKE』は今年5月23日に中国向けにリリースされた。リリースにあたり、事前登録者数は3月時点で400万人を記録するなど話題を集めていた。同社が本作に限らず、多角的に中国向けの展開を狙っていることもうかがえるだろう。

『ステラーブレイド』はPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS5向けに販売中だ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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