『Starfield』元開発者、開発初期より“エリア間ロード大増量”した街があってビックリしたと明かす。当初エリア分割はかなり少なめだったとして
元Bethesda Game Studios(以下、Bethesda)のNate Purkeypile氏が、『Starfield』の開発初期のエピソードをインタビューで明かしている。同氏によれば、本作の開発初期はロードが必要になるエリア分割が製品版よりずっと少なかったという。
本作は、Bethesdaが手がけるRPGだ。2018年に発表され、延期を重ねつつも2023年9月にリリースを迎えた。本作の舞台となるのは、人類が太陽系外に進出している2330年の世界。プレイヤーは希少なアーティファクトを求める宇宙探検家集団コンステレーションの一員として、広大な宇宙の星々を冒険することになる。
今回、海外メディアVideoGamerが元BethesdaスタッフのNate Purkeypile氏にインタビューを実施。Nate氏は2007年から約14年間同スタジオに在籍し、『Fallout 3』『Fallout 4』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』のリードアーティストなどを務めていたベテランだ。『Starfield』にも携わっていたものの、2021年に同スタジオを退職している。
VideoGamerによると、そんなNate氏が次回配信予定のポッドキャスト番組に出演予定とのこと。番組での同氏の発言の一部を、前もって紹介している。同氏によれば、発売後の『Starfield』では同氏が開発に携わっていたころより「エリア間のロード」が多くなっている都市があり、驚かされたという。
『Starfield』では、惑星への着陸時や都市で一部の建物に入るときなど、さまざまなシーンでロードを挟む方式がとられている。建物の内外やエリア間がシームレスに繋がった、オープンワールドなどとは異なるシステムといえる。
とはいえNate氏が開発に参加していた開発初期段階では、ゲーム内のエリア間ロードがかなり少なかったそうだ。また同氏は本作の「ネオン」の街を手がけていたそうで、ネオンはロードを挟まないような街として実現できたかもしれないという。しかし同氏が(発売後のネオンを確認すると)開発に参加していたころにはなかったエリア間のロードも増えており、驚かされたとのこと。
ネオンではその名のとおりネオンの光る看板が並ぶ、猥雑な街並みが特徴。ネオン・コアとされるメインストリートには店も立ち並んでいる。一方でドアを開けてロードを挟みつつ入る必要がある店も複数存在。また街の外周部となるエブサイドなどにもロードを挟んで移動するかたちとなる。Nate氏いわく、そうしたエリア分けをすることなくネオンを実現できた可能性もあったようだ。
Nate氏の見立てによれば、細かくエリアが分割されている背景には、Bethesda作品に用いられてきたゲームエンジン「Creation Engine」の仕様が関係しているとのこと。基本的にはパフォーマンスを維持するために、ネオンのエリアの分割がおこなわれているのだろうと説明している。また先述のとおりNate氏が携わっていたのは開発初期段階であり、ライティングエンジンなどのツールが完成する前だったそうだ。
なおCreation Engineは、『The Elder Scrolls V』の開発に伴いNVIDIA社と共同開発され、2011年に同作で用いられて以降、継続的なアップデートのもと『Fallout 76』まで使用されてきたゲームエンジンだ。一方で『Starfield』においては、約12年ぶりに刷新された「Creation Engine 2」が新たに使用されている。Creation Engine 2における変化としては、ボリューメトリックフォグの描画性能の向上、光源処理性能の向上やグローバルイルミネーションの採用などがアピールされていた(関連記事)。
Nate氏が開発に携わった期間は『Starfield』の開発初期、かつCreation Engineについても「2」への移行時期とみられ、パフォーマンス面やエリア分割を含め各種仕様は製品版とは大きく異なっていただろう。結果として、少なくともネオンでは同氏が予想しなかったほどにエリアが細かく分割されたのかもしれない。とはいえいずれにせよ、開発初期段階の『Starfield』ではエリア分割が少なかったといった裏話が明かされたのは興味深い。
なお『Starfield』は一定の人気を獲得しつつも、評価の割れている作品だ。Steamユーザーレビューでは本稿執筆時点で10万件以上を集めつつも、好評率は59%にとどまる「賛否両論」ステータスとなっている。大きなボリュームや分岐するストーリー、個性的なキャラクターたちについては、一定の評価を獲得。一方で自動生成による淡泊なコンテンツの存在や、進行においてたびたびロードが挟まる点や、ファストトラベルを多用することになるゲームサイクルから没入感を削がれるといった点が課題として指摘されている。
そのためロードが必要になるエリア分割の多さは『Starfield』が評価面で苦戦することになった一因ともいえる。今回のNate氏の発言を見るに、そうした仕様の背景にはCreation Engine 2にて構築されたエリアで安定したパフォーマンスを確保する狙いもあったようだ。
なおCreation Engine 2は現在Bethesdaが開発中の『The Elder Scrolls VI』にも用いられているという。同作では、エリア分割の多さという『Starfield』での課題が克服されるかどうかも注目されるところかもしれない。
『Starfield』はPC(Steam/Microsoft Store)/Xbox Series X|S向けに配信中。Xbox Game Pass(PC/コンソール/クラウド)向けにも提供されている。