魔導冒険ストラテジー『Songs of Conquest』売上50万本突破の秘訣がつまびらかに明かされる。開発者が大好きな作品の精神的続編を、“ただ作る”だけではない工夫
ゲーム開発者向けマーケティング情報などを提供するGameDiscoverCoの創設者Simon Carless氏は1月15日、『Songs of Conquest』のセールスについての分析を公表。コアスタッフ8名という小規模スタジオの作品が、いかにして50万本以上売り上げたのか論じている。
『Songs of Conquest』はターン制のストラテジーゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/PS5/Xbox Series X|Sで、ゲーム内は日本語表示に対応している。本作の舞台となるのは4つの派閥が覇権をめぐって争う、剣と魔法のファンタジー世界だ。プレイヤーは自分の勢力を発展させつつ、ウィルダーと呼ばれる魔法使いを操作して未知の世界を冒険。他国と戦い領土を広げていく。
ゲームプレイではウィルダー率いる部隊をユニットとしてマップを探索し、資源やアーティファクトを集めたり、敵部隊と戦ったりしていく。戦闘はターン制となっており、六角形(ヘックス)のタイルが敷き詰められたマップにて進行。指揮官であるウィルダーが直接戦闘には参加せず、魔法の詠唱や指揮スキルなどで兵士を支援する。さまざまな性能のウィルダーや兵士たちを組み合わせて部隊を編成し、戦いを勝ち抜くのだ。
ゲームモードは複数存在し、4つの派閥をそれぞれ主役とした物語が楽しめるキャンペーンモードや、最大8人参加できるマルチプレイモードなどが存在。またマップエディター機能も用意されており、ほかのユーザーが制作したマップでプレイすることも可能となっている。
本作は2022年に早期アクセス配信が開始され、2024年5月にPC版が正式リリース。同年11月にはコンソール版も発売された。Steamユーザーレビューでは、本稿執筆時点で約9700件中86%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得。昨年5月には売上が50万本を突破したことが報告されるなど、評価・売れ行きともに好調な作品である。
GameDiscoverCoの創設者Simon Carless氏は1月15日、『Songs of Conquest』の販売戦略を分析する記事を公開。開発元Lavapotionへおこなったというインタビューを踏まえつつ、好調な売り上げの理由を分析している。Carless氏によると、同作は開発者が個人的に好きでよく理解している古いゲームを現代に復活させ、ニッチな顧客をつかんだことが成功の要因だという。
Lavapotionによると、同スタジオの創設メンバーはみな『Heroes of Might & Magic III』(以下、HoMM3)のファンで、『Songs of Conquest』は同作のオマージュとして制作されたそうだ。『HoMM』は1990年代からシリーズが展開されている、ストラテジーゲームのシリーズである。海外を中心に根強い人気を誇り、数々の派生作が作られたが、正式ナンバリング作品としては2015年の『HoMM7』を最後にしばらく展開が途絶えている。
先述どおり開発者ら自身が『HoMM』のファンだという『Songs of Conquest』は、そんな『HoMM』シリーズのシステムを踏まえた作りとなっている。ユーザーレビューでも『HoMM』シリーズになぞらえつつ、作品を評価している声が多数存在。『Songs of Conquest』はしばらく続編が出ていない『HoMM』シリーズのファンから「似ている作品」として支持されたことがうかがえるわけだ。
ただしLavapotionは、過去の人気作に似たゲームを作るのは「諸刃の剣」であると語っている。当然似せた先の作品をプレイしたユーザーに比較されるため、高い完成度が求められるからだという。『Songs of Conquest』の開発では、まず早期アクセス配信を始めるまえに5年間の開発期間を設け、入念な準備をしていたそうだ。さらに早期アクセス配信後もほぼ毎月アップデートをし、改善を続けたという。また過去作のインスピレーションから離れるのが難しくなるため、意識して独自のひねりを盛り込む必要もあるとのこと。
Carless氏は『Songs Of Conquest』の事例から学べることは多いとしつつ、インスピレーションの元にする作品は注意深く選ぶ必要があるとしている。たとえば数十年前に人気だったカジュアルゲームの精神的続編を作ったとしても、その作品のファンが現在もSteamなどで活発にゲームを買っている割合はおそらく高くないと指摘。2025年のゲーマーの視点で、類似作が登場していない市場の“穴”を探す必要があるとまとめている。
Carless氏の分析では、『Songs Of Conquest』は展開が止まっている人気シリーズの新作を求める、ファンの需要にうまくハマったということのようだ。本家に匹敵するクオリティが求められるなどハードルが高そうではあるが、興味深い戦略といえるだろう。ちなみに『HoMM』シリーズは最新作が昨年8月に発表され、『Heroes of Might & Magic: Olden Era』が2025年第2四半期に早期アクセス配信予定となっている。待望の“本家”の売り上げがどれほどになるかも注目されるところだ。
『Songs of Conquest』はPC(Steam/Epic Gamesストア/GOG.com)/PS5/Xbox Series X|S向けに配信中だ。ゲーム内は日本語表示に対応している。