『クレヨンしんちゃん 炭の町のシロ』開発者、“60fpsなめらか動作”をボツにしたと明かす。あえて高フレームレートを避ける選択


ネオス株式会社は『クレヨンしんちゃん 炭の町のシロ』(以下、炭の町のシロ)PC(Steam)版を10月24日に発売する。なおNintendo Switch版はすでに販売中で、価格は通常版で税込6980円。海外メディアNintendo Lifeが本作のプロデューサー長嶋朗氏におこなったインタビューによれば、本作は“あえて”フレームレートを下げているそうだ。

『クレヨンしんちゃん 炭の町のシロ』は、野原しんのすけが秋田の村と不思議な炭の町で日々を過ごす、冒険アドベンチャーゲームである。本作で野原一家は、ひろしに下された突然の辞令により、ひろしの故郷である秋田へ出張する。一家は実家近くの村で古民家を借り、のびのびとした田舎暮らしをスタート。しんのすけも、祖父から虫取りや魚釣りを教わったり、新しい友だちができたりなど、田舎での日々を満喫していた。

ある朝、飼い犬のシロが突然すすだらけで帰ってくる。しんのすけが走り出したシロを追うと、そこには見たことのない不思議な電車が止まっていた。つい乗り込んでたどり着いた先には、昭和で時が止まったような町が存在していた。そこでしんのすけは不思議な少女と出会い、活気あふれる炭の町の人々とも仲良くなっていく。秋田の村と炭の町を行き交う、しんのすけの不思議な冒険が描かれる。


本作はNintendo Switch向けに今年2月22日に発売。そしてSteam版は10月24日にリリースされる予定だ。そんな本作について、Nintendo Lifeが本作プロデューサーを務める長嶋朗氏にインタビューを実施。前作『クレヨンしんちゃん オラと博士の夏休み』(以下、オラと博士の夏休み)からの2作目制作にあたっての裏話などを語っている。

その中では、パフォーマンス(ゲーム内fps)の面についても語られた。長嶋氏によれば、『オラと博士の夏休み』の頃から高いフレームレートを実現しようとは思っていなかったとのこと。これはゲームでもテレビアニメの質感を再現することを目標としていたためだという。


テレビアニメでは、表現手法のひとつとして「リミテッド・アニメーション」という手法が存在する。これは秒間24コマとする「フルアニメーション」に対して、秒間8コマとして表現を簡略化することで制作にかかるリソースを節約するというもの。長嶋氏はこの手法について、日本のアニメならではの動きやリズムを生み出す要因にもなっているとの見解を述べた。そうした「独特の雰囲気」を再現するために、あえてフレームレートを下げる判断をとったようだ。実際に『オラと博士の夏休み』では60fpsからコマを抜いていることも過去にIGNでのインタビューにて明かされていた。

長嶋氏によれば『炭の町のシロ』においては、プリプロダクション段階で一度60fpsを試してみたものの、描画の滑らかさがかえって不自然に感じられたという。そのため本作でもフレームレートを下げ、最終的には30fps程度に落ち着いたとのこと。ちなみに本作Nintendo Switch版のフレームレートを検証しているユーザーも見られ、検証動画を確認する限りでは、長嶋氏の言葉通り、30fps程度で動作している様子がうかがえる。このひと工夫が「クレヨンしんちゃん」らしさの醸成にも貢献しているのかもしれない。


なお『炭の町のシロ』のように、あえてフレームレートを下げる方策を取る作品は他にも存在している。Shedworksが手がける「砂漠」を舞台としたオープンワールド・アドベンチャーゲーム『Sable』では、アニメ的な特徴のある表現を実現するために、あえてfpsに制限をかけ、30fpsで動作させているとのこと(関連記事)。

また1930年代のアニメーションを意識した表現が高い評価を獲得している『Cuphead』についても、ゲーム部分を60fpsで実行しつつも、アニメーション部分は24fpsで動作させていると明かされていた。「アニメーション的表現」を実現させるため、技術的には可能であっても、あえて60fpsで動作させない選択が取られる例があるわけだ。

ちなみに『オラと博士の夏休み』では、しんのすけをはじめとしたキャラクターの顔について、正面から見ても違和感のないように“左向き用”と“右向き用”のモデルを切り替えていることを分析するポストが話題となっていた。今回改めて明かされた、“あえて下げた”というフレームレートも、「クレヨンしんちゃん」ならではの雰囲気をゲーム内で再現するための工夫なのだろう。

『クレヨンしんちゃん 炭の町のシロ』はPC(Steam)向けに10月24日発売予定。Nintendo Switch版はすでに販売中だ。