批判殺到の大作ゲーム『MindsEye』開発元の経営陣に、スタッフらが組織改革の訴え。劣悪労働環境や不当解雇の可能性浮上する

Build A Rocket Boyの従業員と元従業員らは10月10日、同社の経営幹部に宛てた公開書簡を発表した。

『MindsEye』の開発元であるBuild A Rocket Boyの従業員と元従業員らは10月10日、同社の経営幹部に宛てた公開書簡を発表。同社の従業員に対する残業の強制や不当解雇など、さまざまな不適切な扱いがあったとして、スタジオに向けて謝罪や体制の見直しを求めた。

Build A Rocket Boyは、Leslie Benzies氏によって創設されたゲームスタジオだ。同氏はかつてRockstar Northに在籍し、『グランド・セフト・オートIII』以降の同シリーズ作品などで、プロデューサーなどを担当した人物。同氏はRockstar Northを退職後、2017年にBuild A Rocket Boyを設立。多額の資金調達を経てSFアクションアドベンチャーゲーム『MindsEye』が開発され、6月11日にリリースを迎えた。

『MindsEye』

しかし本作はグラフィックやストーリー面では一定の評価を得つつも、最適化不足や不具合の多さが課題に。またオープンワールドながらミッション中には脇道に逸れることができないゲームシステムなどが指摘され、本稿執筆時点のSteamユーザーレビューでは2050件中38%が好評とする「やや不評」ステータスとなっている。

そんな売上不振を受けてか、同社内で100名規模のレイオフが実施予定との報道もおこなわれた(関連記事)。また従業員の証言によれば、Benzies氏がスタジオを再起させ、『MindsEye』を“再ローンチ(relaunch)”すると宣言したとのこと。なおBenzies氏は本作の苦戦について、スタジオの内外の「妨害工作員」のせいだと主張していたといい、スタジオ内部のスタッフに対する不信感がスタジオの再編へと繋がった可能性もあるだろう(関連記事)。

そうした状況で10月10日、イギリスの労働者組合であるIWGB Game WorkersとBuild A Rocket Boyの従業員と元従業員ら計93名の連名で、同社の経営幹部に宛てた公開書簡が発表された。書簡では、Build A Rocket Boyの社内では従業員の意見を聞き入れずに働き方を大きく変更するといったことがよく起こるなど、コミュニケーションが欠如していたと指摘。また『MindsEye』が発売されるまでの4か月間にわたって、すべての従業員に週8時間の残業が義務付けられたとしている。一定の代休が与えられたものの、発売後も優先度の高い仕事の依頼が続き、いまだに取得できていないそうだ。

そして人員削減の際にも不適切な対応がなされたという。従業員たちは誤った情報を受け取り、解雇の通知は不適切な猶予期間の設定のもとに送られたそうだ。また、人材が誤ったチームへと配属されたために、業績評価が誤った担当者によっておこなわれることもあったとのこと。こうしたミスによって、不当解雇されたスタッフが数十人発生した可能性があると主張した。

従業員らは上述以外にも多数の問題が起きており、それらが従業員の苦痛やストレスを引き起こしたとして、「CEOはその座を退くべきだ(CEOs need to take a backseat)」とした上で、スタジオの変革を提言。従業員への不当な扱いについての謝罪や解雇された従業員に対する補償など複数の項目を要求した。

『MindsEye』

この書簡が公になったのち、翌日10月11日にBuild A Rocket Boyは海外メディアKotakuに声明を発表している。同声明では元チームメンバーとの別れへの悲しみを表現し、予期していなかった人員削減については、気遣いと透明性をもって進めたと表明。今後元従業員からのフィードバックにしっかり耳を傾け、学びと成長のために力を尽くすとコメントした。

なお書簡で指摘された労働環境などの事項についてBuild A Rocket Boyは言及していない。スタジオにおける実際の状況について真偽は不明だが、書簡の内容が正しいとするならば劣悪な労働環境が敷かれていたようだ。従業員と元従業員による要求がどのように実現されるのか、スタジオの今後の対応にも注目が集まる。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

記事本文: 430