NINTENDO 64ソフトの“テクスチャ考古学者”、次々と新発見を報告。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の丸太の年輪など、執念の手作業で正体判明

ゲーム内のテクスチャの出典を分析する“テクスチャ考古学者”が、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』などの一部テクスチャの出典を明らかにしたようだ。

ゲーム内のオブジェクトに貼り付けられるテクスチャ。3Dグラフィック技術が急速に発展した1990年代後半からは、ポリゴンのみでは表現できないリアルな質感を出すためにテクスチャが用いられることが多くなった。テクスチャ素材には実写の画像が用いられる事例もあり、さまざまなゲーム作品でオブジェクトに彩りを与えてきた。

そんなゲームのテクスチャについて、調査をおこなう有志グループが存在する。クリエイター集団Render96だ。同グループは1996年に任天堂が発売した『スーパーマリオ64』を中心に、おもにNINTENDO 64向けソフトに用いられているアセットの出典元を分析している。Render96に所属し、“テクスチャ考古学者”を名乗るRoovahlees氏は今回、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』に登場する丸太の断面を表すテクスチャの出所を突き止めた。

丸太の断面に用いられているテクスチャは、「素材辞典 Vol.16 〈樹皮・年輪編〉」というデジタルデータ集のものだという。「素材辞典」はイメージナビ社が発売していたCD-ROMの素材集であり、「素材辞典 Vol.16」を含めその多くは生産終了済み。素材辞典シリーズはデザイン業界のベストセラー商品とも呼ばれ、ゲーム業界においてもこれまで『スーパーマリオ64』や『大乱闘スマッシュブラザーズDX』などさまざまな有名作品で利用されてきた。素材辞典の製品は画像のカテゴリーごとに分けて販売されており、Vol.16には実に200枚もの木の表面および断面の写真が収録されている。

Render96が提示した比較画像を見るに、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』では素材となった年輪の写真の左上4分の1を切り出し、鏡合わせになるように複製して使用しているようだ。並べてみると、たしかに割れ目の位置などが一致しているように思える。素材辞典が多くのNINTENDO 64向けタイトルで活用されていたという経緯から、目星をつけて探されたのだろう。とはいえ、そもそも年輪は目立った特徴が少ないうえ、色味も元素材とは大きく異なり、同じ画像であると気付くのは至難の業だ。なお発見したRoovahlees氏によれば、調査にはAIなどのツールは用いておらず、ゲーム内のテクスチャを拡大して一致するパターンを手作業で探しているとのこと。

Image Credit: Render96 on X

なお、Render96は直近においても続々と新たな成果を挙げている。7月8日には、『マリオカート64』に用いられたテクスチャの出典元を報告した。同作のコース「ヨッシーバレー」の草地に用いられているテクスチャは、「VisualDisk N8 Spring CD」という素材集に収録された風景写真であるという(Game*Spark)。

この「VisualDisk」シリーズも多くの任天堂タイトルで用いられた実績のある素材集。過去には『スーパーマリオ64』のステージ「かいぞくのいりえ」の背景テクスチャとして、「Visual Disk Mountains」という素材集に収録された富山県の山の写真が用いられていることが判明し話題となっていた(関連記事)。

ハードウェアの制約などもあり、当時の技術では用いられるテクスチャの解像度が現代と比べるとかなり低く、ぼやけた画像も多い。ゲームが発売された年代など限られた手がかりから素材の元ネタを探す過程は、さながら“考古学”だ。昔のゲームを遊ぶ際には、「いつの時代のどこの空なのだろうか」と想いを馳せながらプレイしてみてはいかがだろうか。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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