『ホロウナイト シルクソング』、「インディーゲーム界の『GTA』」扱いされ始める。“発売日発表”の業界パニック続く
『Hollow Knight: Silksong』の突然の発売日発表はゲーム業界を震撼させている。

デベロッパーのTeam Cherryは8月21日、『Hollow Knight: Silksong』(以下、Silksong)を9月4日に配信すると発表した。これを受けて発売時期が被る作品の延期が相次いでおり、なかには“発売日”が大きな影響力をもつ大注目作品という点からか、本作を『グランド・セフト・オート Ⅵ』になぞらえる業界人もみられる。
『Silksong』は、高評価メトロイドヴァニア『Hollow Knight(ホロウナイト)』の続編だ。本作では前作にも登場したホーネットというキャラクターを主人公とし、シルクと歌に支配された古代のムシ王国を冒険する。
『Silksong』は、もともとは前作『Hollow Knight』向けのDLCとして企画されたものの、規模が大きくなったことで新作として開発されることになり、2019年2月に発表された。当初は2023年前半のリリースが計画されていたが延期され、今年に入るまで配信時期未定の状態が続くことに。そして8月21日、ついに9月4日にリリースされることが発表された。

業界を襲う突然の“発売日被り”
期待作の待望の発売日発表にユーザーからの期待は高まる一方、業界からは悲鳴も聞かれている。当初予定されていた発売時期が『Silksong』と被ってしまったことにより、さっそく延期の発表を余儀なくされた作品が続出。またタイミング的に延期が叶わなかったという作品もあり、開発者はどうにか発売日被りの影響を軽減しようと、ユーザーからアドバイスを募っていた(関連記事)。
そうした中で本日、新たにタクティカルRPG『Demonschool』の延期が発表された。同作は、マス目の上のユニットを移動させることでアクションをおこない、コンボなどを意識しながら魔物を倒す作品。謎めいた島での学園生活を通して、変わり者の仲間たちを強化していくことになる。

開発をNecrosoft Gamesが、販売をYsbryd Gamesが手がける同作は当初、9月3日に発売を予定していた。しかし『Silksong』発売日の前日にリリースを迎えることへの懸念から、日本時間では11月20日へと発売日が移されることとなった。Ysbryd Gamesは、明らかに血の海だとわかる場所に足を踏み入れることは同作にとって何の得にもならないとの見解を示した。なお、同作は過去にも延期をしていたが、今回が最後の延期であると強調している。
これに対して、同作を開発するNecrosoft Gamesも声明を発表。あくまでも延期は販売元のYsbryd Gamesによりおこなわれたものだと明かした上で、同社は延期による費用の負担もしてくれたと説明した。一方で、Necrosoft Gamesは「インディーゲーム界のGTA(the GTA of indie games)」の発売時期が2週間前に発表されたことで、みんながパニックになっていると言及。そうした状況への苛立ちもあるという。
“GTA級”の影響力
『GTA』といえばRockstar Gamesが手がける絶大な人気を誇るシリーズであり、最新作『グランド・セフト・オート Ⅵ』(以下、GTA6)が発売を控えている。『GTA6』は当初2025年秋に発売されると発表されており、同時期の発売を目指す業界のほかのメーカーからは、なかなか具体的な発売日を決められないとする声が聞かれる状況もあった。しかし、その後同作は2026年5月26日に発売されることが決まり、予想外の延期にはこれまた悲鳴を上げるスタジオが現れるなど、阿鼻叫喚の様相を呈していた。

Necrosoft Gamesは『Silksong』の発売日発表を巡る今回の状況を、前述した『GTA6』の発売日に関する業界の動向になぞらえたわけだろう。とはいえ『Silksong』はあくまでも少人数スタジオによるインディー作品。それにもかかわらず、『GTA6』にも負けず劣らずの影響力から、比べられている点は興味深い。『Silksong』については発表以来長らく延期を経ており、各種ゲームイベントにおいて発売日発表が待ち望まれていた経緯がある。そうした中では大きな期待に反して何も発表されず肩透かしを食らう状況を「Silksonged(シルクソングされた)」と表現するネットスラングも過去に生まれていた。小規模開発作品ながら、コミュニティにおいて大きな存在感を示してきたわけだ。
そうして発表から約6年もの歳月を経てようやくリリースを迎えることとなった『Silksong』に向けては、発売延期を余儀なくされたにもかかわらずリスペクトを示し感謝を伝える開発元も現れている。またたとえば協力山登りゲーム『PEAK』では、タイトル画面にて「みんなが『Silksong』に移るまでの2週間は『PEAK』を楽しんでほしいな」とのメッセージが出現していた(Game*Spark)。『PEAK』も発売から10日足らずで累計販売本数200万本を達成するなど凄まじい勢いで人気を獲得している作品。そんな同作ですら謙遜を見せるほどの『Silksong』の圧倒的な注目度は、まさに“GTA級”と言えそうだ。

ゲーム業界においては、注目作が現れるたびに「発売日被り」による影響が取り沙汰されている状況。ジャンル上競合がなくとも、SNS上のゲームコミュニティでの話題を攫われるといった点も、発売日被りが懸念される背景としてあるようだ。一方でユーザーから大きな期待が寄せられる作品の出現は、対応プラットフォームの売上をけん引することで結果的に業界全体としてはメリットをもたらすという見解もある(関連記事)。『Silksong』や『GTA6』の発売後には、市場調査としてそうしたデータも分析されていくかもしれない。
『Hollow Knight: Silksong』は、PC(Steam/Microsoft Store)/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに9月4日配信予定だ。Xbox/PC Game Pass向けにも提供される。
また『Demonschool』はPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS5/PS4/Xbox One/Xbox Series X|S/Nintendo Switch向けに11月20日に発売予定。