Switch2の『ホグワーツ・レガシー』は、携帯機と据え置き機の利点をいいとこ取りした欲張り移植だった。マウスもジャイロもあるし、ロードも速い
Nintendo Switch 2版『ホグワーツ・レガシー』の魅力をご紹介する。携帯機と据え置き機のハイブリッド。

『ホグワーツ・レガシー』は、世界的に愛されるファンタジー作品「ハリー・ポッター」シリーズを題材としたゲームだ。開発を担当したのは、WB Games傘下スタジオAvalanche Software。プレイヤーは5年生からの編入生として、ホグワーツ魔法魔術学校に入学。魔法学校の門をくぐると、目の前に広がるのは「ハリー・ポッター」の世界そのもの。その中で授業や探索に励みつつ、魔法界の裏に潜む大きなしがらみに巻き込まれていく。ゲーム内には、ホグワーツ城やその周辺などの広大なフィールドが存在。それらを舞台に冒険や戦いを繰り広げ、成長していくことになる。
本作は精巧かつダイナミックに再現された「ハリー・ポッター」の世界が話題となり、累計3000万本以上を売り上げる大ヒットタイトルとなっている。PC/PS5/Xbox Series X|S向けに2023年2月10日に発売されてからは販売プラットフォームをどんどん広げ、現在はPS4/Xbox Oneといった前世代機やNintendo Switch、さらにNintendo Switch 2でもプレイ可能である。

ところでNintendo Switch版『ホグワーツ・レガシー』と言えば、その「執念の無茶移植」でも有名だ。『ホグワーツ・レガシー』の舞台は、「ハリー・ポッター」シリーズの舞台であるホグワーツ魔法魔術学校の周辺の広いエリアで、2023年当初はPS5をはじめとした次世代機の性能をふんだんに生かしたオープンワールドタイトルとして発売された。それをNintendo Switchに移植するにあたって、一部のエリアを分割してオープンワールドから独立させたり、画質を最適化したりすることで動作を安定させたのだ(関連記事)。もともとかなり要求スペックの高い本作を工夫と気合で動作させたNintendo Switch版は話題を呼び、移植を担当したデベロッパーであるShiverを任天堂が子会社化したというニュースもあった。
そんなエピソードも印象深いなか、2025年6月5日にNintendo Switch 2版が発売。Nintendo Switchと比べて向上したハード性能がフルに活かされており、全体的なゲーム体験もとてもリッチなものとなったという。なかでも、携帯モードでも安定したパフォーマンスを発揮してくれるという点は魅力的に聞こえる。すなわちこれは、魔法界への旅が手元でもテレビでも自由に楽しめることを意味するからだ。
加えてJoy-Con 2を使用した新感覚の操作体系も、「ハリー・ポッター」の世界への没入感を高めてくれるものに仕上がっているのだとか。せっかく入手できたNintendo Switch 2、どうせならその性能を存分に発揮したタイトルもプレイしてみたいところ。本稿では、そんなNintendo Switch 2版のプレイから得られたインプレッションをお届けする。年末に遊ぶタイトルとしてもぴったりな本作について、理解を深めていただければ幸いだ。
くっきりライティングで、より「ハリー・ポッター」らしい画に
プレイを開始してまず実感できるのが、ゲーム全体の画質の高さだろう。解像度はTVモードで最大1440p、携帯モードでは1080pで描画され、HDRにも対応。加えてライティングやシャドウ・アニメーション品質の改善や、いわゆる超解像技術であるDLSSのサポートも行われている。

突然だが、ここで『ホグワーツ・レガシー』の舞台である魔法界の魅力についてお話させていただきたい。「ハリー・ポッター」シリーズは伝統的な魔法使いの世界を描いた作品であり、秀逸なストーリーに加えて、科学技術に頼らず魔法の力のみで成り立つ魔法界の描写も人気の理由の1つとなっている。
作中で使用される光源はろうそくやランタンといった昔ながらのものであり、舞台となるホグワーツ城には図書室や地下室など、光があまり差し込まないエリアも多く存在する。特に映画で顕著だったのだが、一般社会を舞台とした作品よりも、光の量が少ないシーンが増える傾向にあるのだ。一方で、魔法使いや魔女が放つ魔法はまばゆい光の形で表現されることが多い。こうした光と影のコントラストが強烈に描かれることは魔法界の特徴であり、魅力の1つでもある。


この魅力は『ホグワーツ・レガシー』においても変わらない。つまり、ライティングやシャドウ品質の向上によって、ゲームの世界観や演出をより効果的に引き立たせることができるようになったのだ。
Nintendo Switch 2版ではライティング・シャドウ品質の向上によって、魔法界の光と影のギャップがより再現されているように感じられた。そうして強調された明暗のコントラストが描き出すホグワーツ城内の重厚感あふれるロケーションは、魔法界での冒険への没入感を高めてくれる。『ホグワーツ・レガシー』が「ハリー・ポッター」シリーズの世界をゲームで表現することを目指したタイトルであることを考えると、非常に大きな進歩を果たしたと言えるだろう。
もちろん、フレームレートやアニメーション品質の改善といった、ハードウェアのグレードアップによる映像面での高品質化も見逃せない。本作の会話シーンはキャラクターのバストアップを中心に進行する、いわゆる「洋ゲースタイル」である。アニメーションをアップで見ることになるため、キャラクターモデルの動きや画質が改善されたことのメリットはより強く感じられた。

進化したオープンワールドがもたらす、魔法界への没入感
Nintendo Switch 2版では、オープンワールドとしての体験がより進化している。特に、魔法使いの村であるホグズミード周辺は大幅にパワーアップ。Nintendo Switch版ではホグズミードが独立したエリアとして扱われており、出入りにロードが必要であったところ、Nintendo Switch 2版ではシームレスに入れるように。また、Nintendo Switch版ではホグズミードのお店に出入りする際にもロード画面に移行していたが、Nintendo Switch 2版では扉が開くまでに一瞬のロードが発生するのみとなっている。

また、ホグワーツ城を出入りする際のロードに関してはさすがに撤廃が難しかったようでロード画面の経由が必要となるものの、ホグワーツ城内であれば移動する際のロードもスムーズになっている。先述の画質向上と合わせて、魔法界への没入感は大幅に増していると言える。
マウス&ジャイロ操作で、杖や箒を操るかのようなプレイ体験
Nintendo Switch 2にハードが変わったことで恩恵を受けたのは、パフォーマンスだけではない。Joy-Con 2の機能を活かしたジャイロ操作やマウス操作も、本作に新しい体験を与えてくれている。具体的には、ジャイロ操作は戦闘時の魔法のエイムや飛行時の箒の操作に使用でき、マウス操作はそれらに加えてフィールドでのカメラ操作やメニュー画面のカーソルの移動などにも用いることができる。
特筆すべきは、ゲーム中にJoy-Con 2の持ち方を変えるだけで操作スタイルをスムーズに切り替えられること。つまり、オプション画面などを介さずにリアルタイムで変更できるのだ。
例として、筆者は普段Joy-Con 2の側面を下にしたマウス操作をメインにゲームを進めていたが、箒での飛行の際にはジャイロ機能での直感的な操作が楽しく、自然と操作を切り替えるようになっていた。ジャイロでの飛行のコツとしては、左右に曲がりたいときはJoy-Con 2の向きを変えるのではなく、Joy-Con 2を正面に向けたまま曲がりたい方向にひねること。慣れてくればボタン操作を一切しないままに飛行ができるようになり、なかなか爽快だ。

加えて、右スティックをカメラ操作やカーソル操作などに用いるクラシックなスタイルでのプレイも可能となっている。移動中やベッドの上など、動作が限られた場所で携帯モードをプレイする際も遊びやすいのがうれしいところだ。
もちろんマウス操作はPC版で、飛行時のジャイロ操作はPS5版でもそれぞれ楽しむことができる機能である。しかし、これらの操作スタイルから好きなものを選べ、さらにオプションを介さずに気楽に切り替えられるという点は、携帯性に優れプレイする状況を選ばないNintendo Switch 2ならではの利点といえるだろう。携帯モードでのプレイでも優れたパフォーマンスを発揮できることも、Nintendo Switch 2版のこの長所を強く後押ししてくれている。

Nintendo Switchから2へ、「無茶移植」から「堅実移植」へ
丁寧に作りこまれたホグワーツへの入学体験が世界中で評判を呼んだ『ホグワーツ・レガシー』を、いつでもどこでも快適に遊べるNintendo Switch 2版。発売から半年を迎えたNintendo Switch 2にも慣れてきたと感じたら、本作をこの冬の「次なる一歩」として選んでみるのはいかがだろうか。複数用意されている操作スタイルもそれぞれに長所があり、オリバンダーの店から杖を選ぶようにいろいろと試してみるのも一興かもしれない。
『ホグワーツ・レガシー』のNintendo Switch 2版は、8777円(税込)で発売中だ。
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