
Xbox元幹部が「Game Passは、大多数のゲームが売上を犠牲にして成り立っている」と警鐘鳴らす。ビジネスモデルとせめぎ合う“開発者側のメリット”
Bethesda Softworksの元幹部であったPete Hines氏がサブスク型ゲームサービスの問題を指摘。そんな同氏の発言に呼応し、Xbox Games Studiosの元VPであるShannon Loftis氏が賛同するなど、業界ベテランによるサブスク型ゲームサービスへの指摘が相次いでいる。

Bethesda Softworksにて約20年にわたりSVP(Senior Vice President)を務めたPete Hines氏が、海外メディアDBLTAPによるインタビューの中で、サブスクリプション型ゲームサービスには問題点があると語った。そのHines氏の発言に呼応するかたちで、Xbox Games Studiosの元VPであるShannon Loftis氏が賛同するなど、話題となっている。PC Gamerが報じている。
Pete Hines氏は1999年にBethesda Softworksに入社。以後2023年に退社するまで、グローバルマーケティング部門SVPやパブリッシング部門のトップを務めるなど、長らく同社に貢献した人物である(関連記事)。
同氏はDBLTAPのインタビューにて、自身の半生を振り返っている。そしてインタビューの中では、Game Passに代表されるようなサブスクリプションサービスについても言及。同氏は現時点では業界に身を置いていないことを前置きしつつも、そうしたサービスのあり方についてかねてより懸念していたようで、考えていた通りの状況になりつつあるとして、サブスクリプションサービスについて問題点を指摘した。

Hines氏は、サブスクリプションサービスの運営側と、開発元の双方がバランスよくニーズを満たせる方法を考え出せなければ、深刻な問題を抱えることになる、と警鐘を鳴らしている。同氏は特にコンテンツがなければそもそもサブスクリプションサービスは立ちいかない点を挙げ、ゲーム開発や発売後のサポートにかかるコストや労力を正当に評価し、報酬に反映する必要があると説明。また現状ではサービス運営側と開発元でそれぞれのニーズが異なる“緊張状態”があり、クリエイターを含む多くの人を苦しめていると考えているそうで、現行のサブスクリプションサービス運営における欠陥として指摘している。
この発言に対し、Shannon Loftis氏が賛同の意を示した。Loftis氏はマイクロソフトにてXbox Games Studiosに在籍していた人物。Kinectを用いた複数タイトルの開発や、パブリッシングにおけるゼネラルマネージャーを務めたほか、Xbox Games StudiosのVPを務めた経験もある。

Image Credit: Microsoft UK on YouTube
そんなLoftis氏はLinkedIn上で、自身の経歴を踏まえて「Hines氏の意見を正しいと断言できる(I can attest that Pete is correct)」と述べている。同氏は、リリース後のマネタイズ手段、つまりDLCや課金アイテムの販売が計画されている場合を除いて、Game Passに登場するゲームの大部分が、多くの小売の売上高を犠牲にしているとの見解を示している。つまり買い切りタイトルとしてもリリースされているタイトルでは、エンゲージメントを獲得できる傍らで、小売売上の機会損失も大きいとする見方といえるだろう。同氏は『Human Fall Flat』を例に挙げつつ、Game Passの効果もあって本来埋もれてしまうようなゲームが成功を収める場合もある一方で、多くのゲームでは人気獲得と収益性を天秤にかけるジレンマが生じることを示している。

Game Passを中心としたサブスクリプションサービスについて、昨今ではたびたびそのメリットやビジネスとしての持続可能性についての議論も見受けられる。Game Passへの作品提供の見返りとなる契約金が当初よりも少なくなっているという報告もみられ、業界ではビジネスモデルとして懐疑的な意見もある(関連記事)。
対して特にマイナーなジャンルのタイトルであったり、小規模なスタジオであったりする場合には、契約金だけでなく注目を集められる良い機会であるとする開発者も存在(関連記事)。また中規模スタジオRebellionが手がけた『Atomfall』でも、発売後まもなく長期的には開発費を回収できる見通しが立ったことが報告されていた(関連記事)。同作ではストーリー拡張DLCとして6月に「Wicked Isle」が配信され、9月16日には「The Red Strain」がリリース予定。発売後にも複数のストーリー拡張DLCが展開されており、Game Passによって高まった注目度を収益に繋げるという戦略だろう。
“ゲームを購入する”というハードルを下げ、ゲームに注目が集まる機会を提供するサブスクリプションサービス。ただし、特に発売初日から配信されるGame Passのようなサービスでは売上への影響も無視できないようで、昨今では開発規模によっては契約金だけで“損失”をカバーすることは難しくなっているのかもしれない。Loftis氏の述べるように、サブスクリプションサービスで高まった注目をマネタイズに活かすことは求められているのだろう。しかし作品や開発方針によってはそうした戦略をとれない場合も考えられる。今回は過去にXboxの幹部を務めた人物からもGame Passの ビジネスモデルとしての問題点が指摘されており、今後もサブスクリプションサービスの持続可能性は業界にとって注目のトピックとなりそうだ。
