12月に入ってもゲーム業界のレイオフ止まらず。実績ある中堅スタジオで失職者続出

本日時点で12月に入ってからまだ半月ほどながら、ゲーム業界ではレイオフやスタジオ閉鎖の知らせが相次いでいる。実績のある中堅スタジオにも厳しい状況は広がっているようだ。

本日時点で12月に入ってからまだ半月ほどながら、ゲーム業界ではレイオフやスタジオ閉鎖の知らせが相次いでいる。特に一定の評価や人気のあるゲームを手がけた実績のある中堅スタジオにも厳しい状況は広がっているようだ。


12月になってもレイオフ多発

まず現地時間12月3日には、中世戦場アクションゲーム『Chivalry』シリーズの開発元Torn Banner Studiosにてレイオフが実施。声明によれば、独立系スタジオとして健闘を続けてきたものの、苦渋の決断としてチームの再編および人員削減をおこなうとしている。なお同スタジオは最大8人協力プレイ対応のゾンビアクションFPS『No More Room in Hell 2』を今年10月に早期アクセス配信開始。同作を2025年内に正式リリースする当初の計画には現状変更はないという。

そして現地時間12月4日には、IllFonicでレイオフが実施。映画「13日の金曜日」を題材とする非対称対戦ホラーゲーム『Friday the 13th: The Game』や、「ゴーストバスターズ」を題材とする『Ghostbusters: Spirits Unleashed』などを手がけたスタジオだ。また同日には、スパイ対戦FPS『Deceive Inc.』などを開発したSweet Banditsが閉鎖されたことが報告。いずれも一定の評価を受ける作品であり、実績あるふたつのスタジオにて偶然にも同じ日にレイオフが実施されたかたち。

また12月6日にはDeck Nine Gamesにてレイオフが実施された。ADVゲーム『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』を皮切りに、ナンバリング以外の『ライフ イズ ストレンジ』シリーズを手がけてきたスタジオだ。直近では『ライフ イズ ストレンジ ダブルエクスポージャー』が10月29日にリリースされた。Deck Nine Gamesでは今年2月に20%ものスタッフを対象とするレイオフが実施。今回のレイオフでは規模は明かされていないものの、今年2度目のレイオフが実施された格好だ。

このほかにも12月には大手傘下のスタジオの閉鎖や、比較的規模の大きいスタジオでのレイオフも実施。12月4日にはUbisoftの大阪およびサンフランシスコのスタジオが閉鎖され、シドニーのスタジオは活動停止となった。これによりサンフランシスコでは143名、大阪とシドニーでは134名のスタッフが職を失った(関連記事)。また12月10日にはFPS『Bulletstorm』や協力プレイ対応TPS『アウトライダーズ』を手がけたPeople Can Flyで120名ものスタッフのレイオフがおこなわれた。

レイオフの理由はプロジェクトの中止やチームの再編などまちまちで、なかには具体的には明かされていない例もみられる。とはいえ多くは背景として昨今のゲーム市場の厳しさが示されており、苦渋の決断として人員削減に踏み切られたようだ。11月に引き続き実績あるスタジオでもレイオフがおこなわれており、ホリデーシーズン直前に業界では多数の失職者が発生しているとみられる。


昨年より悪化との見方も

ちなみにゲーム業界向けのグローバルなマーケティング・流通サービスを支援するゲームコマース企業XsollaのChris Hewish氏は今年、業界人向けに月次調査「Video Game Confidence Survey」を実施してきた。同氏はXsollaにてCSO(最高戦略責任者)などを務める、業界の動向に精通した人物だ。

Chris氏が11月に実施した調査によると、ゲーム業界の景気が過去1年間で改善したと考える回答者は、わずか17%であったという。また、44%が悪化したとの回答を寄せていたとのこと。今年は昨年よりも多くのレイオフがおこなわれているとされ、背景として景気がさらに悪化した状況はあるのだろう。

Image Credit: November 2024 Video Game Confidence Survey


Chris氏いわく、今年のゲーム業界の状況を悪く見る回答者の割合は10月に実施された調査よりもわずかに減っていたそうだ。それでも多くの回答者が、今年の業界の状況をネガティブにとらえている傾向も垣間見える。さらに、半年前と比べて資金調達が難しくなったとする意見も、回答者のうち60%から集まったとのこと。このほか業界が直面している懸念としては、開発コストの増大、市場競争の激化、技術進歩の課題などが挙げられている。

一方でChris氏の調査では、来年には状況が改善するという見方をする業界人が36%見られたそうだ。今年の業界では特に厳しい状況もみられただけに、来年は今年よりは改善するといった予想も一定の割合を占めているのかもしれない。


コロナ収束もあってか

昨年にも増して、欧米を中心に多数のスタジオの閉鎖やレイオフがおこなわれてきた2024年。1月からさっそく業界各社で大規模なレイオフがおこなわれ、開発中止となるタイトルも複数見られた。

この背景としては、新型コロナウイルスの流行による巣ごもり需要での成長を見越したビジネス方針が人件費の増大を招き、コロナ禍の収束と共にレイオフの多発に繋がっているといった見解も見られた。またコンソール市場では新規ユーザー獲得の鈍化による成長の頭打ちも、開発費の肥大化による収益獲得へのプレッシャーを高めているとの見方もある。そうした中では、開発規模が控えめでも独創的な作品でラインナップを増やし、リスクを軽減するといった方針もとられているようだ。(関連記事1関連記事2関連記事3)。

とはいえ会社規模を問わず業界でのレイオフは続いており、2025年に改善に向かうかどうかは注目される。今年多数発生した失職者が復帰できるような動きの活発化も望まれるところだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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