「『ファイナルファンタジー16』の開発費が安そう」と脚光を浴びる。スクエニの“物言う株主”が独自調査した開発費比較資料で
3Dインベストメント・パートナーズは12月8日、同社が株式を保有する以下、スクエニHDに向けたプレゼンテーション資料を公開。同資料は経営課題を指摘する

3Dインベストメント・パートナーズは12月8日、同社が株式を保有するスクウェア・エニックス・ホールディングス(以下、スクエニHD)に向け、経営課題を指摘するプレゼンテーション資料を公開。これはスクエニHDの企業価値向上を狙い株主の意見を募集するものだが、その資料の中で、『ファイナルファンタジーXVI』(以下、FF16)の開発費が特に注目されている。
3Dインベストメント・パートナーズは、シンガポールの投資ファンドであり、スクウェア・エニックス・グループを統括するスクエニHDの株主だ。今年の6月にスクエニHDの株式を9.79%保有し大量保有報告書を提出したことで買い増しが明らかになり(関連記事)、7月にはその保有比率が14.36%になったことが伝えられている(ロイター)。「物言う株主」としても知られており、過去にはサッポロホールディングスや富士ソフトに対して経営改善を提言した。
12月8日に3Dインベストメント・パートナーズはスクエニHDの経営課題を指摘するプレゼンテーション資料を公開したと発表。同資料内にて3Dインベストメント・パートナーズは、スクエニHDが有名IPを抱えつつも“稼ぐ力”が低下していると分析。開発費用の廃棄損や開発費が高騰気味であることなどを指摘しつつ、中期経営計画の抜本的な再検証を要望している。

そうして提言/要望としてまとめられた資料に記載された、『FF16』の開発費の相対的低さが今回話題となっている。『FF16』は、『ファイナルファンタジー』シリーズの現行ナンバリング最新作。本作は、『FF14』のプロデューサー兼ディレクターである吉Pこと吉田直樹氏がプロデューサーを務め、スクウェア・エニックスの第三開発事業本部が開発を手がけている。
本作の舞台となるヴァリスゼアでは、各国が保有するクリスタルの巨塊「マザークリスタル」によって供給されるエーテルを頼りに人々が暮らしていた。しかし、世界が「黒の一帯」に蝕まれることで、そのバランスが崩れつつあった。ロザリア公国の第一王子であるクライヴ・ロズフィールドは、王位を継ぐ弟を守るナイトとして鍛錬を続けていたが、とある悲劇へと巻き込まれていく。

資料によれば、「開発費用の増大」として、第三者調査機関などのデータを基に、スクウェア・エニックスが手がけたAAA級タイトルの開発費が記されている。資料では、カプコンよりリリースされた『ドラゴンズドグマ 2』『モンスターハンターライズ』がそれぞれ開発費105億円、28億円として紹介されている。
一方でスクウェア・エニックスのタイトルとして『FFVIIリメイク』『FFVIIリバース』『Forspoken』、そして『FF16』が挙げられている。『FFVIIリメイク』は209億円、『FFVIIリバース』は185億円、『Forspoken』については137億円となっている。そして『FF16』については91億円とのこと。

『ファイナルファンタジー』シリーズはスクウェア・エニックスの主力タイトルでもあり、これまで開発費用の詳細は明かされていなかったものの、シリーズ作品の開発費は高額であることも伝えられていた。今回はあくまで第三者調査機関などの情報ではあるものの、『FF16』について91億円という推定開発費用が記載されているかたち。決して少額とはいえないが、FFVIIリメイクシリーズと比較すると費用が半額ほどに抑えられていることがわかる。
ちなみに資料においては、同じく第三者調査機関のデータに基づくとみられるカプコンの一部タイトルの開発費との比較も実施。これによれば、『ドラゴンズドグマ2』は105億円、『モンスターハンターライズ』は28億円とのこと。2020年から2024年までの“RPGコアIP”の平均開発費の比較もおこなわれており、AAAタイトルではスクウェア・エニックスは上述した4タイトルの平均で156億円、カプコンは上述した2タイトルのみからの平均で66億円となっている。“RPGコアIP”かどうか、AAAタイトルかどうかといった分類は3Dインベストメント・パートナーズが独自に決めているようで、ざっくりとした比較でスクウェア・エニックスのAAAタイトルの開発費が競合他社と比べて過大であると指摘する内容になっている。
とはいえカプコンからは長期開発かつPS5/Xbox Series X|S/PC専用のタイトルとして『モンスターハンターワイルズ』が今年2月に発売されたばかり。同作も含めた開発費比較では上述したグラフとは異なる数値になっていたかもしれない。またカプコンでは主力タイトルとして『バイオハザード』シリーズなどもあり、あくまで3Dインベストメント・パートナーズが定める基準を満たすタイトル間で開発費が比較されている点には留意したい。
いずれにせよ、それぞれ第三者調査機関のデータとされる点には注意したいものの、今回の資料からは『FF16』はAAAタイトルとしては控えめな開発費で制作された可能性がうかがえる。グラフィック面でも評価を受けていたタイトルであり、開発費がFFVIIリメイクシリーズの各タイトルの“半分以下”であったという試算は意外なところかもしれない。スクウェア・エニックスタイトルの開発費増大を指摘する資料ではあるものの、ユーザーからは『FF16』における開発費節約手腕に称賛も寄せられているようだ。
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