『ファイナルファンタジーVII リバース』ディレクターが“PC版移植の裏側”を明かす。「最後は執念の手作業」など
『ファイナルファンタジーVII リバース』(以下、FFVIIリバース)PC版に向けた最適化について、本作ディレクターの浜口直樹氏がその考え方や工夫を明かした。VG247が伝えている。
『FFVIIリバース』は、『ファイナルファンタジーVII』のリメイクシリーズ三部作の二作目だ。前作『ファイナルファンタジーVII リメイク』(以下、FFVIIリメイク)の舞台となったミッドガルを脱出したクラウドたちは、宿敵であるセフィロスの影を追って広大な世界を旅する。『FFVIIリバース』はPS5向けに2024年2月に発売。移植開発を経て、PC(Steam/Epic Gamesストア)版が今年1月23日に発売を迎えた。
今回、本作ディレクターの浜口直樹氏が、本作PC版における技術面の取り組みについてVG247に向けて明かしている。まず浜口氏は、NVIDIA DLSSなどの超解像技術が重要と考えているようだ。同氏はPS5のPSSRのように、コンソールにおいてもPC同様に超解像技術がスタンダードになっていくとの見方を示した。そして、DLSSのフレーム生成技術であるDLSS FGに触れ、そうした技術の市場展開を注視しておきたいとした。なお、『FFVIIリバース』PC版ではDLSS対応が追加されている。
そしてPC版開発にあたっては、「Steam Deckに対応すること」がひとつの目標となっていたという。『FFVIIリバース』Steam版は、Steam Deckで快適に動作することが確認された「Steam Deck確認済み」ステータスを得ている。しかし、その認定に至るまでには大きな苦労があったようだ。
自動でダメなら最後は手作業
Steam Deckは携帯機ゆえに、デスクトップPCなどに比較して性能が限定される。そうした機器において良いグラフィッククオリティでの動作を実現するために、浜口氏らチームはグラフィック面における大幅な変更を施したという。
手が加えられたのは、LOD(Level of Detail)による背景グラフィックのポリゴンメッシュ削減だそうだ。LODとは3Dモデル描画の詳細度のこと。3Dグラフィック採用ゲームでは、プレイヤーカメラからの距離などに応じて、遠くでは簡素化したモデルを、近くでは精細なモデルを表示してLODをコントロールし、描画の最適化を狙う。『FFVIIリバース』PC版の背景グラフィックにおいては、浜口氏が「完全なリワーク」と表現するほどこのLODに調整が入れられたそうだ。
浜口氏によれば、通常のポリゴン数削減プロセスでは、Simplygonといったツールを利用して自動的に削減をおこなうという。しかしながら、本作PC版が目標とするパフォーマンスを実現するためには大幅なポリゴン数削減が必要となり、自動的な手法ではモデルの形状が崩れてしまうケースもあったという。
そうした問題に対処するために浜口氏ら開発チームが取った手法は「手作業で調整する」だったそうだ。自動ツールである程度のポリゴンを削減し、形状が崩れて一定のクオリティに達していない部分は開発者の目と手により、自然になるよう修正していったそうだ。
この手法は当然のことながら、莫大な量のアセットをチェックする必要がありかなりの時間もかかったとのこと。しかし、同氏は最終的に自動化と手作業のよいバランスを見つけられたと考えているそうだ。そうした執念と苦労の末に、本作はSteam Deck対応済みのお墨付きをValveから得られたわけだろう。
『FFVIIリメイク』の反省で柔軟に
そして『FFVIIリバース』PC版リリースに向けては、『FFVIIリメイク』についての反省も念頭に置かれていたそうだ。浜口氏によれば、『FFVIIリメイク』では「さまざまなPCスペックに対応できる描画オプションを提供できなかった」とのこと。そのため、『FFVIIリバース』では当初から、PC版における描画設定の柔軟性を考えて開発が進められていたそうだ。
たとえば、『FFVIIリバース』PC版では、LODについてもさまざまなパターンが用意され、システムが自動的にマシンスペックを判別。比較的低スペックなPCでも最適な描画が実現できるようになったという。また、超高スペックマシンでは、PS5を凌駕するほどのクオリティでの描画が可能だという。これも幅広いハードウェアへの対応を重視した成果だろう。
今後を見据えて
また浜口氏はゲーム開発にあたり、特定のコンソールへの最適化だけでなく、PCのような幅広い性能をもつ機器に対応する描画デザインも視野に入れるべきとの考えを示した。そして『FFVII リバース』の開発にて、開発チームはそうした柔軟な描画設定についてのノウハウもかなり蓄積したとのこと。そして次回作となる、リメイクシリーズ三部作の三作目についてもそうした経験は活かされていくだろうとした。
なお浜口氏は弊誌インタビューにて、『FFVIIリバース』ではDLC開発をせず移植作業を優先し、『FFVIIリメイク』よりもスピーディーな移植ができたと語っていた(インタビュー記事)。次作でも、PCをしっかりと眼差した開発・移植がおこなわれていることだろう。なお、弊誌では『FFVIIリバース』PC版の描画の柔軟性についても伝えている。興味がある方はご一読いただきたい(関連記事)。
『ファイナルファンタジーVII リバース』はPC(Steam/ Epic Gamesストア)およびPS5向けに販売中だ。