人気ホラー『Dead Space』元開発者、「当時EAにマーケティング予算をごっそり削られた」とこぼす。“とあるゲーム”に社内評価で負けたため

サバイバルホラーゲーム『Dead Space』をかつて手がけたクリエイターらが、同作の当時のマーケティング予算に関する秘話を紹介。本作の予算は、EA社内の評価が高い『ミラーズエッジ』のマーケティングに回されたという。

サバイバルホラーゲーム『Dead Space』をかつて手がけたクリエイターらが、同作の当時のマーケティング予算に関する秘話を紹介。本作のマーケティング予算は削られ、社内評価の高い『ミラーズエッジ(Mirror’s Edge)』のマーケティングに回されたという。

『Dead Space』シリーズは、SFサバイバルホラーゲームだ。第1作はPC/PS3/Xbox 360向けに2008年10月に発売された。本作の舞台となるのは、宇宙船USGイシムラ。主人公となるのは、救難信号を受けて修理と調査のためにこの船を訪れたエンジニアのアイザック・クラークだ。彼が到着した船内には乗組員の死体と異形の怪物ネクロモーフで溢れかえっており、さらに乗ってきた宇宙船はネクロモーフにより破壊。アイザックは生き残りをかけてUSGイシムラを探索することとなる。

『Dead Space』(2008)


アイザックはエンジニアらしく、銃火器だけでなくさまざまなツールを武器にして戦う。カッターなどを用いる戦いでは四肢の切断が重要となる戦闘システムも特徴となっている。物資を節約しつつ進めるハードコアさや、グロテスクな表現も持ち味。高い評価を獲得し、ナンバリング作品として2011年に『Dead Space 2』が、2013年に『Dead Space 3』がリリースされた。2023年には第1作『Dead Space』のフルリメイク版が発売され、こちらも好評を得ている。

今回、本作オリジナル版の開発を率いたGlen Schofield氏が、同じくオリジナル版の開発に携わったBret Robbins氏とChristopher Stone氏と共に、YouTubeチャンネルDan Allen Gamingの番組に出演。このなかではオリジナル版開発当時のマーケティング予算に関する裏話も飛び出した。


Glen氏らによると、当時EAは本作オリジナル版のマーケティング予算は削減し、そのすべてを『ミラーズエッジ』のマーケティングに用いたという。この背景には、社内テストに基づく模擬レビューでのスコアが『ミラーズエッジ』の方が高かったことがあったそうだ。

『ミラーズエッジ』は、EA傘下のDICEが手がけ2008年11月(国内向けには2008年12月)に発売された一人称視点のパルクールアクションゲームだ。未来の世界を舞台に、プレイヤーは「ランナー」と呼ばれる運び屋のフェイスとしてステージを駆け巡る。白を基調としたステージに鮮やかな色使いのオブジェクトなどが配置された、プレイヤーを誘導する独特なアートデザインが特徴のひとつ。戦闘よりもパルクールに重点を置いたゲームプレイになっており、目まぐるしく疾走するなかでも進むべき方向がスムーズに分かりやすい作りなどから高い評価を得ている。


そんな『ミラーズエッジ』は、EAの模擬レビュースコアで90点台を獲得したという。一方『Dead Space』は80点台。先述のとおり両作の発売時期は被っていたこともあり、『Dead Space』のマーケティング予算の一部を『ミラーズエッジ』に回すという判断がとられたそうだ。

とはいえ、Glen氏らは結果的に『Dead Space』が高い評価と人気を得られたことを振り返っている。マーケティングでは魅力を伝えきれなかったものの、口コミで評価が広まり当時“カルト的”な人気を得られたという。レビュー集積サイトMetacriticでも『ミラーズエッジ』がメタスコア約80点なのに対し、『Dead Space』は約90点を記録。EAの模擬レビューでの差を覆す評判といえる。そうした好評もあってか本作はじわじわと売上を伸ばし、2008年時点で100万本を突破していた。

先述のとおり『Dead Space』は2013年発売の『Dead Space 3』までシリーズ展開がおこなわれた。『ミラーズエッジ』についても、続編『ミラーズエッジ カタリスト』が2016年に発売。一方でその後は両シリーズとも長らく完全新作がない状況だ。

『Dead Space』リメイク版


なお『Dead Space』についてはリメイク版が2023年に発売。海外メディアBloombergのJason Schreier氏によれば、リメイク版を手がけたEA傘下のMotiveは“リメイク版『Dead Space 2』ではないシリーズ新作”に向けて取り組んでいたものの、計画は頓挫したという。その後、スタッフの大半は別のプロジェクトに配置されたとも報じられている(関連記事)。

また今回のDan Allen Gamingの番組では、Glen氏らがEAに向けて“『Dead Space 4』”の開発を提案したものの「現時点で興味はない」として却下されたことが語られている(関連記事)。リメイク版を含め、『Dead Space』シリーズの今後の展開は不透明な状況が続いているわけだ。今回そんなシリーズの第1作がマーケティング予算を削られながらも好評を博したことが明かされたのは興味深い。根強い人気のあるシリーズであり、今後も動向は注目される。

Dead Space』リメイク版は、国内ではPC(Steam/Epic Gamesストア/EA app)向けに発売中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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